42. 開散不全(divergence insufficiency:DI)型内斜視の発生率は増加傾向にあり,DI発症の危険因子として高齢化と累進屈折力レンズの使用が関連している

Increasing incidence and risk factors for divergence insufficiency esotropia

Chen X, Marsh JD, Zafar S, Gerber EE, Guyton DL. J AAPOS. 2021 Oct;25(5):278.e1-278.e6. doi: 10.1016/j.jaapos.2021.05.013. Epub 2021 Sep 25. PMID: 34582959.


目的:開散不全型(divergence insufficiency:DI)内斜視の発生率の増加について記録し,DIの危険因子を特定すること。

方法:41年以上にわたり1人の医師によって内斜視の診断を受けたすべての患者をカルテから特定した。10歳以前に斜視を発症した患者,または斜視手術の既往のある患者は除外した。甲状腺眼症,強膜バックル,外傷,神経疾患,非典型的なミスアライメントは含まれたが,遠見と近見のずれに関係なくDIとは分類されなかった。残りの患者については,最初の診断が何であったかにかかわらず,一律の基準:遠見内斜視が近見内斜視より5Δ以上大きいという基準を用いて,レトロスペクティブに分類した。

結果:後天性内斜視患者におけるDI患者の割合は,41年間の前半と後半で11.8%から29.4%と有意に増加した(P < 0.001)。多変量ロジスティック回帰により,DI発症の危険因子として高齢化と累進屈折力レンズの使用が同定された。

結論:DI の発生率は増加傾向にある。DIと年齢および累進屈折力レンズとの関連は,その病因を理解し,将来的にこの疾患の有病率を減少させるのに役立つと思われる。

※コメント
この報告ではsagging eye syndrome)は除外され,最も可能性の高い原因は近見での調節/輻湊のストレスによる二次的な輻湊のトーヌスの増加とされています。著者らは,これはコンピュータやパーソナルデバイスの使用が年々増加し,累進屈折力レンズを使用しているため,患者が作業要求に対して近見で十分なプラスパワーを使っていない可能性が高いと指摘しています。問題の解決方法として,より適切な近用眼鏡;上部が中間度数で下部が読書度数など,近用で適切な加入度数を工面するよう助言しています。
また論文内では,視覚ストレスが内直筋の緊張に影響を与えにくくなる年齢層(65歳)を過ぎるとDIの発生率が再び減少し始めることが指摘されています。

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