306. 弱視の遮閉治療中に近見視力を測定することに価値はあるか?

Is there value in measuring near visual acuity during occlusion therapy for amblyopia?

Daly MY, Codina CJ, Arblaster GE. Strabismus. 2023 Nov 3:1-7. doi: 10.1080/09273972.2023.2271088. Epub ahead of print. PMID: 37921023.


はじめに:この研究の目的は、弱視に対する遮閉治療前、治療中、治療終了時の近見視力と遠見視力を調査することである。
方法:未治療の斜視弱視、不同視弱視、混合弱視の4~7歳(平均4.9;±0.44)の患者54名を、必要に応じて屈折矯正を行った後、本研究に組み入れた。全例に従来の遮閉(patching)が行われた。遮閉法開始前、遮閉法中、遮閉法終了時に、年齢と能力に応じたCrowded LogMAR VA testを用いて、単眼の近見視力と遠見視力を検査した。
結果:弱視眼では、遮閉法前のLogMAR Crowded(p=0.66、3mでの平均遠見視力=0.6 LogMAR、40cmでの平均近見視力=0.58 LogMAR)、またはLogMAR Crowded Kay Picture test(p=0.78、3mでの平均遠見視力=0.44 LogMAR、33cmでの平均近見視力=0.46 LogMAR)では、近見視力と遠見視力の間に有意差はみられなかった。遮閉法中、または遮閉法終了時のいずれの診察においても、LogMAR Crowded(p=0.86、3mでの平均最終遠見視力=0.266 LogMAR;40cmでの平均最終近見視力=0.25 LogMAR)またはLogMAR Crowded Kay Pictures(p=0.74、3mでの平均最終遠見視力=0.16 LogMAR;33cmでの平均最終近見視力=0.16 LogMAR)による近見視力と遠見視力の間に有意差は認められなかった。遠見(3m)または近見(40cm)でLogMAR Crowdedを使用した場合(それぞれp = 0.05、p = 0.40)、または遠見(3m)または近見(33cm)でLogMAR Crowded Kay Picturesを使用した場合(それぞれp = 0.89、p = 0.35)、遮閉前と治療終了時の健眼の視力に有意差はなかった。
考察: 弱視眼の視力の改善は、弱視に対する遮閉治療のどの時点においても、近見と遠見検査の間に有意差は認められなかった。これらの知見は、臨床医が適切な検査を選択し、臨床的な時間的プレッシャーに対処するのに役立つと思われる。患者の集中力によって単眼の遠見視ができない場合、単眼近見視を弱視の診断に用いることができ、またその逆も可能である。これにより、弱視の治療の遅れを防ぐことができる。

※コメント
近見視力の方が現状の視力を反映する可能性があるという説に疑問を投げかけた内容と捉えていいかもしれません。
遠見でも近見でも弱視の判断をすることができるという結論でした。
弱視治療中の弱視眼において遠見視力と近見視力は確かに近似している印象はあります。検査時の注意点としては、近見視力を測定する時は検査距離が大切になってくるため、動きが大きい小児への検査時には特に気をつける必要があると思います。

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