89. 屋外時間の増加は,近視の発症を防ぐだけでなく,その後の近視性シフトを遅らせるのにも有効である。しかし,すでに近視になっている眼の進行を遅らせる効果はない

Time spent in outdoor activities in relation to myopia prevention and control: a meta-analysis and systematic review

Xiong S, Sankaridurg P, Naduvilath T, Zang J, Zou H, Zhu J, Lv M, He X, Xu X. Acta Ophthalmol. 2017 Sep;95(6):551-566. doi: 10.1111/aos.13403. Epub 2017 Mar 2. PMID: 28251836; PMCID: PMC5599950.


屋外での時間は,近視発症リスクを低減すると考えられている。目的は,屋外での時間と,(1)近視の発症リスク(incident/prevalent myopia),(2)屈折異常の近視シフトリスク,(3)近視のみにおける進行リスクとの関連性に関するエビデンスを評価することである。システマティックレビューに続き,メタアナリシスと文献から関連するエビデンスの用量反応分析を実施した。PubMed,EMBASE,Cochrane Libraryで,関連する論文を検索した。関連するデータを持つ51の論文のうち,25の論文がメタ解析と用量反応解析に含まれた。25件の論文のうち23件が小児を対象としたものであった。二値変数のリスク比(RR),連続変数の加重平均差(WMD)を実施した。メタ解析のためのデータのプールには,Mantel-Haenszelランダム効果モデルを使用した。統計的異質性はI2テストを用いて評価し,I2≧50%は高い異質性を示すとみなした。さらに,サブグループ分析(参加者の年齢,近視の有病率,研究タイプに基づく)および感度分析を行った。
屋外時間の有意な近視発症(臨床試験:リスク比(RR)=0.536,95%信頼区間(CI)=0.338~0.850,縦断コホート研究: RR=0.574,95%CI=0.395~0.834)と,蔓延的な近視(横断研究:OR=0.964,95%CI=0.945~0.982)の予防効果が認められた。用量反応分析では,屋外で過ごす時間が長くなると近視の発症リスクが低下する逆非線形関係が見られた。また,臨床試験の結果では,屋外での時間を介入として用いた場合,3年間の追跡調査後に,対照群(WMD = -0.30, 95% CI = -0.18 〜 -0.41)と比較して,-0.30 Dの近視シフト(近視・非近視ともに)の減少が認められた。しかし,近視のみを考慮した場合,用量反応分析では,屋外に出る時間と近視進行の間に関係はなかった。(R2 = 0.00064)。屋外時間の増加は近視の発症を防ぐだけでなく,その後の近視性シフトを遅らせるのにも有効である。しかし逆説的なことに,屋外時間は,すでに近視になっている眼の進行を遅らせる効果はなかった。様々な量の屋外の効果を評価し,屋外での時間を客観的に測定する研究をさらに進めることで,近視の発症と管理において屋外が果たす役割について理解を深めることができるだろう。

※コメント
屋外時間と近視の関連についての報告です。
屋外活動は近視発症を防ぎ,その後の屈折の近視化を遅らせることに効果があります。しかしながら,近視の症例に対する近視進行予防効果はなかったとのことです。
興味深いですね。

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