93. 近視の小児は,非近視の小児よりも調節によって引き起こされる眼軸伸長が大きい

Axial Elongation During Short-Term Accommodation in Myopic and Nonmyopic Children

Hughes RPJ, Read SA, Collins MJ, Vincent SJ. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2022 Mar 2;63(3):12. doi: 10.1167/iovs.63.3.12. PMID: 35275173; PMCID: PMC8934556.


目的:成人および小児において,眼軸長は調節時に増加するが,屈折異常における差は相反するものであり,小児集団では検討されていない。本研究では,近視の小児と非近視の小児の間で,調節による眼軸伸長の違いを評価することを目的とした。

方法: 非接触型光学バイオメーター(Zeiss IOLMaster 700)に取り付けたBadalオプトメーターを用いて,短時間の調節タスク(0,3,6,9D)中にさまざまな眼球生体計測を行った。近視の小児15名と,年齢,性別が一致した非近視の小児15人について,信頼性の高い測定が行われた。平均中心角膜厚(central corneal thickness,CCT),前房深度(anterior chamber depth:ACD),水晶体厚(lens thickness:LT),前部セグメント長(anterior segment length:ASL),硝子体腔深度(vitreous chamber depth:VCD),眼軸長(axial length:AL)は,各調節刺激について測定された。ALとVCDの生の測定値は,調節時のLTの増加に伴う推定誤差を補正した。

結果: CCTを除くすべての生体パラメータは,調節中に有意に変化した(すべてP < 0.001)。近視の小児は,3,6,9Dの調節刺激において,非近視の小児よりも有意に大きな調節による眼軸伸長を示し(P = 0.002),平均差はそれぞれ7,10,16μmだった(すべての一対比較(pairwise comparisons),P ≦ 0.03)。他のすべての生体パラメータの変化は,屈折異常群間で差はなかった(P≧0.23)。

結論:近視の小児は,非近視の小児よりも調節による眼軸伸長が大きかった。この結果は,近業,眼軸伸長,近視の発症を関連付ける潜在的なメカニズムを支持するか,近視が確立している小児は,調節による眼軸伸長の感受性が高いことを反映している可能性がある。

※コメント
近視度数(非調節麻痺下SE):−2.08±0.92D (range, −0.75~−3.50)
平均年齢:10.1±1.4歳 (range, 7.3~12.7)
調節中,前眼部のパラメータは近視でも非近視でも変化はなく,AL変化のみ差があったとのこと。近視眼が調節中により眼軸伸長する理由として,脈絡膜の菲薄化がより大きい可能性があること,強膜が薄いことによる後極の変形を受けやすい可能性があることなどがdiscussionで挙げられていました(生体力学的観点)。

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