ムラとは何か─今日の読みたい本(2024/03/30)#5

まえがき

今月はポリタスTV【YouTubeチャンネルのリンク】をまたよく観るようになった。気になりつつもしばらく遠ざかっていたのだが、観はじめると家事の合間やスキマ時間に観る、と云うよりは聴くというかんじで、一度習慣になってしまうとけっこう観られるもので概ね毎日ついていくことができている。

この日のテーマは関心がないな、とおもっても、いざ聴きはじめるとそういう回のほうが返って深く印象に残ったりもするから、不思議だ。雑誌を読む感覚に近く、興味の幅が広がっていくのも愉しい。MCは日替わりで、テーマも各々が自由に選んでいるようだが、ずっと聴いていると、あ、これはこの前あのひとの回にも出てきたな、とか、これとこれは繋がっているな、と云ったことがたびたびあって、似かよったところへ行き着く。この国の問題の根幹がおなじところにあって、その周縁をウロウロする。けっきょくのところ根を絶たなければならないのだ、とおもったりもする。

3月は3.11があったり、国際女性デーがあったり、自民党の裏金問題が依然として捗らなかったり、と云ったあたりが主に語られたが、いずれの話題にも「村=ムラ」というキーワードが中心にあったように僕にはおもわれた。

災厄に見舞われ、そこから復興しようとしている村、再生の足掛かりとなるコミュニティとしての村。女性の前に立ちはだかる共同体としてのムラ、自民党の派閥というムラ。

ムラ(=村)って何だろう? その起源はどこにあって、それを打倒する乃至善きものへ恢復していくためには、どうしたらいいのだろうか。

東京生れ東京育ちの都市生活者である僕は、村と云えば金田一耕助を読み培ったイメージしかなくて(祟りじゃ〜)、実態、特に村(=ムラ)の現状についてはあまりに何も知らない、と云うことに気づかされる。

ムラについて知りたいな。そう思い立って何か良い本はないか(何かを知りたいとき僕を導いてくれるのはいつだって本だ)と漁ってみたところ、幾つか読みたい本があったので、以下自分への備忘録としてまとめておくことにした。全6冊。

ムラの歴史

何か新しいことを知りたいときは歴史から学ぶのが遠回りのようでいちばん手っ取り早い、と常々おもっている。僕は何事も歴史(=経過)を辿らないと現在地がなぜそうなっているのか、イマイチ理解できない性質で、これは余談だが本も部分的につまみ読んで参照する、と云うのがすごく苦手で、頭から読まないと納得できなかったりする。不器用なのだ。

『村の日本近代史』荒木田岳(ちくま新書1529)

日本の村の近代化の起源は、秀吉による村の再編にあった。戦国末期、江戸時代、明治時代を通じての村の近代化の過程を、従来の歴史学とは全く異なる視点で描く。

筑摩書房 村の日本近代史 / 荒木田 岳 著

村の近代化!その起源と過程と云うのに、ものすごく惹かれる。読めばムラ概念の変遷がわかるかもしれない。2020年11月刊。

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『村 百姓たちの近世〈シリーズ 日本近世史2〉』水本邦彦(岩波新書ー新赤版1523)

古くさい因習の共同体とイメージされがちな近世の村社会.だがこの時代,百姓たちは主な生産力の担い手であり,互いに支え合いながら田畑を切り拓いて耕し,掟を定めて秩序を保ち,時には国家権力にさえ物申す存在だった──.活力あふれる村の生活を丹念に追うことから近世日本に新たな光を当てる,画期的な一書.

村 - 岩波書店

近世の村を見ることで、村の持つ力を再発見できるかもしれない。いまに活かせるヒントを見出せるかも。2015年2月刊。

てかこの〈シリーズ日本近世史〉、どれも面白そう。全5冊。こう云うのもホントは1巻から読んでいきたい性質だが、そんなことやってるとなかなか村に辿り着けないな。

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ムラのいま

歴史を学んだら次はいまだ。現在の村はどうなっているのか。

『村の社会学』鳥越皓之(ちくま新書1711)

日本の農村に息づくさまざまな知恵は、現代社会に多くのヒントを与えてくれる。社会学の視点からそのありようを分析し、村の伝統を未来に活かす途を提示する。

筑摩書房 村の社会学 ─日本の伝統的な人づきあいに学ぶ / 鳥越 皓之 著

2023年2月刊。一年前だから、わりと最近の本である。概要からは、村を肯定的に捉える姿勢がうかがえるが果たして。

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『日本の農村』細谷昴(ちくま新書1573)

二十世紀初頭以来の農村社会学者の記録から、日本各地域の農村のあり方、家と村の歴史を再構成する。日本人が忘れ去ってしまいそうな列島の農村の原風景を探る。

筑摩書房 日本の農村 ─農村社会学に見る東西南北 / 細谷 昂 著

内容を読むかぎり、この本は歴史や弊害もふくめた比較的ニュートラルな視点から見た村、と云う印象を受けるが、どうか。2021年5月刊。

ところで、これもちくま新書だ(あともう一冊出てくる)。改めてこうやってまとめてみると、ちくま新書には(特に社会問題に関する)良書の多いことがわかる。このnoteでは岩波新書を読んでいく!と宣言したのだけれど、ちくま新書も加えて読んでいくと愉しめるかもしれない。

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ムラが消える?

『農山村は消滅しない』小田切徳美(岩波新書ー新赤版1519)

増田レポートによるショックが地方を覆っている.地方はこのままいけば,消滅するのか? 否.どこよりも先に過疎化,超高齢化と切実に向き合ってきた農山村.311以降,社会のあり方を問い田園に向かう若者の動きとも合流し,この難問を突破しつつある.多くの事例を,現場をとことん歩いて回る研究者が丁寧に報告,レポートが意図した狙いを喝破する.

農山村は消滅しない - 岩波書店

少子化による人口減少と都市部への一極集中が進むと、多くの村が早晩消滅する、と云う「増田レポート」の公表されたのが2014年。この衝撃的な報告を境にして、村の消滅に関する新書の刊行が相次いだ。本書も2014年12月刊。

それから十年が経つが、現状はどうなっているのだろうか。どれほどの村が本当に消滅したのか、或いはしなかったのか。少くも少子化は加速しているようにおもわれるのだが。

この本を足掛かりに、村消滅に関する本を何冊か、いま読み比べてみると何かわかることがあるかもしれない。

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ムラからイエへ

『「家庭」の誕生』本多真隆(ちくま新書1760)

イエ、家族、夫婦、Home・・・・・・。様々な呼び方をされるそれらをめぐる錯綜する議論を追うことで、これまで語られなかった近代日本の一面に光をあてる。

筑摩書房 「家庭」の誕生 ─理想と現実の歴史を追う / 本多真隆 著

ムラを一個の分子として見れば、原子に相当するものはイエなのかもしれない。

分子の構造を知るためには原子について知らなければならないように、イエについて知ることでムラの存在も明らかになる、なんてことがあるかもしれない。

ムラからイエへ。さらにはヒトへ。

ムラが分子でイエが原子なら、さながらヒトは素粒子で、また多数の分子=ムラの集まって形成されるクニは、分子生物学的にみたら一人の人間、と見立てられないこともなく、結局のところ国は一人ひとりのひとがあってこそ成り立つ、と云うことになって、キレイに話の環が閉じる。

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