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賃貸の審査に落ちて痛感する【信用力】の重み

引っ越そうと思ってたのに、賃貸の審査に落ちた。

「保証会社のほうが通らず…今回は順番待ちしている方が複数いらっしゃるので…すみません」

あー困ったー
ただでさえ、なかなか物件出ないのにー
新学期にはもう間に合わない-

落ち込んだ。

「もうすぐ引っ越す予定なんで」とか周囲に言いふらしていたのに、まさかの審査落ちで引っ越せないこの状況も、なんとも恥ずかしい。

とはいえ、今回の事態は、この1年私がなんとなく考えていたことの答え合わせのような展開だったので「やっぱりな」という気持ちもある。

社長になってみて、見えた世界

2021年3月に会社を作った。これまで個人事業主でやってきたものを法人成りした形だ。

「儲かって儲かってしかたがないので、会社にして節税しないといけない!」、みたいなノリにのった流れでも、「このプロダクトで世界を変えてやる!50億円調達!!」みたいな熱い勢いでもない。

なんとなく、作ってみたかっただけだ。

「社長になると、世の中の見方が変わる」―

そんな話を耳にして、社長フィルターで世界を覗いてみたくなったのだ。

確かに、社長になると、世の中の見方が変わった。従業員も雇っていない、自分の手が届く範囲のことしかやっていない小さな小さな会社でも、驚きや発見がたくさんあった。

年収のことも、経費のことも、保険のことも、税金のことも・・・サラリーマンとも個人事業主ともまた違う捉え方をするようになった(と思う)。

そんな中、この1年で最も大きな変化が【信用】に対する考え方だ。

信用力ゼロだと何もできない

「信用を落とすようなことをするな!」
「信用力こそ大事!」

そんな話は耳にタコができるほど聞いたことがあるだろう。私もそうだ。

なんとなく、信用が大事なんだと知っている人はたくさんいるが、その重みを心底理解している人はどれくらいいるんだろう。

私はそれまで、「信用とは、商売などを有利に進めるために必要なもの」だと思っていた。プラスアルファのオプション的なものだと捉えていた。

だが違った。私が、この1年で気づいたこと。それは、信用がないと何もできない、ということ。

***

会社を設立してすぐ、今住んでいる家に引っ越しをした。大家さんは知人。法人契約で社宅扱いにしたい、と相談をして無事入居できた。

このとき管理会社の人が言っていたことが少し引っかかっていた。

「大家さんはね、家賃保証会社は?と気にされてましたけど、設立直後で保証会社はちょっと酷だろう、という話をさせてもらって、保証人でOKにしてもらいました」

そこで初めて、(あ、設立したての法人だと、保証会社の審査通るの厳しいんだ)と気づいた。

言われてみれば確かに、売上なし、従業員なし、事務所なし、HPなし。銀行口座すら持っていない状態なわけだから、むしろ審査に通る要素がない。

***

会社を設立したら、次にやるべきは銀行口座づくりだ。ここでまた苦戦する。

これまで生きてきて、銀行口座が作れないことがあるなんて、考えたこともなかった。大学生のときバイト帰りにスウェットで立ち寄ったメガバンでも、その場でホイッと通帳を作ってくれた。

ところが、だ。

何やら山ほど書類を提出し、審査(1週間~1ヶ月)を待つ。4社に申込み、結果は2勝2敗。なんとかもらえた口座も出来上がるまでに1ヶ月以上経った。

現代日本において、銀行口座も持ってない人間なんてはっきり言って誰にも相手にされない。ところが、銀行は何も持っていないピヨピヨの生まれたての私を見て「信用に値する人間かどうか」を判断してくるわけだ。

どないせぇっちゅうねん。

***

そしてこの度、引っ越そうにも保証会社の審査に落ちるという事態が起こり、これまでの運の良さを自覚すると同時に、信用がないとなにもできないことを改めて認識させられた。

もちろんこっちも、払い続けられる家賃の物件を選んでるわけですし、踏み倒すつもりも毛頭ないけども、貸主にとっては、やっぱり不安だよね…

信用を借りているという自覚の芽生え

銀行口座については、プライベートで使っているメインのメガバンに運よく口座を持つことができたのだが、この一件を通して私は、「他者から信用を借りて、ギリギリ生きていられるんだ」ということを強く自覚した。

例えば、銀行の申込書には、「主要なお取引先」を書く欄があった。ここに東京で立派なオフィスを構えている取引先の名前を書き込むときは、心底(ありがたや~ありがたや~)と思ったものだ。

メガバンで口座を作った後は、「取引先銀行」の欄にメガバンの名前を書くだけで、少し胸が張れるような気分だった。

何も持っていない私は、彼らの社会的信用力に丸のっかりしたのだ。

はっきり言って私にはまだ何もない。でも取引先や銀行が持っている信用力をお借りすることで、つまり彼らのお墨付をもらえることで、初見の人が私を(好意的に)判断する材料ができた。

そのなんとも心強いこと。

「信用力を身につけろ」って本当にその通りなんだけど、その前段階として、周囲の信用力を借りて成長していくフェーズがある、ということを私はこの1年で強く学んだ。

というか、お客さんを紹介してもらうときだって、その紹介者の信用力を借りることで取引が成立しているわけだし、もしかするとこの先もずーっと信用力の貸し借りは続くのかもしれない。

目の前の人にいかに信じてもらえるか?

じゃあ、ちっぽけな私が信用力を上げていくにはどうするばいいんだろう。

・ホームページがある
・ロゴがある
・メールアドレスが自社ドメイン
・社会保険をちゃんと払ってる
・オフィスがある ・・・

1つ1つは細かいんだけど、とりあえず、目の前の人に「え、この人(この会社)大丈夫?」と思われる要素を潰していくしかないんだろうな。

そういうのがまだ準備できていないときは、

・字がきれい
・身なりが整っている
・納期を守る
・約束を守る
・ハキハキ喋る ・・・

とか、もう本当に初歩の初歩のようなことを1つずつ積み重ねていくしかないんだと思う。多分。

これを書いておきながら、じゃあ自分ができているかと言うと全然できてない…ホームページもロゴも作ってない…字も汚い…

先は長い。

とにかく、信用力は大事。

そんなことを考えながら、まちを歩いていると、世の中のすべての社長たちに対して猛烈な尊敬の念が湧いてくる。

多分みんな、最初は私のように、信用ゼロからスタートしたはずなんだ。

事務所を借りたり、社員を雇ったりするのだって、全然簡単じゃない。それなのに、さらに社員の信用力まで上げちゃうんだから、みんなすごい。

会社員だと賃貸の審査で落ちることもないし、住宅ローンも簡単に組めるのかもしれないけど、それは要は会社の信用を借りているということで、社長とか、過去の先輩社員とかが頑張ってきたおかげだよ。

ちなみに、元夫はサラリーマンだったので、個人としては彼の信用力に助けられていた部分も多くあったのだと今は痛感している。離婚してシングルとなった今、私は個人としても、信用ゼロのペラペラ人間である。

今回、保証会社の審査に落ちて、その現実を改めて突きつけられた。

設立一周年を迎えた今、改めて、皆々様から信用していただけるような人間(と法人)にならねばと気合を入れ直して、精進いたします。

信用がないと、住む家さえ確保できないのだから…


伹馬 薫


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