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天才の父を持つと...④



今日は解説の仕事もない、ただの休日



蓮加:蓮希~、ユニフォーム持った?

蓮希:うんっ!

蓮加:ベルトここにあるんだけど~

蓮希:うそっ!マジで?

蓮加:うん

蓮希:ママ、持ってきて~

蓮加:はいはい、ほかに忘れ物してないでしょうね?

蓮希:えぇっと....
グローブある、バットもある、帽子、ソックス、靴...うんっ!大丈夫!

蓮加:やっぱ忘れてる...
あんた、おにぎりは?

蓮希:...あっ!やべっ!


蓮加:ほら、これ

蓮希:ママ、ありがと!

蓮加:うん、頑張ってくるんだよ?

蓮希:うんっ!今日はいつもより元気あるもん!
だって...


"パパがコーチでいてくれるからっ!"



蓮加:ふふっ、そうね
(それでテンション上がって、忘れ物したのか...笑)



少子高齢化や子供たちの運動離れもあり、少年野球のチームも少なくなっている昨今
コーチも親コーチが主体となっていることが多いため、子供の人数が少ないと自然とコーチも少ない

蓮希が所属しているチームも、その影響を受けており...
今日解説のお仕事がなかった○○に声がかかったのだ



ガチャ
柚乃:ママぁ、にぃに、おはょ...


自分の寝室(蓮希と一緒なんだけどね)から起きてきた末っ子

いつも抱き合って寝てる2人だけど...
蓮希は早起きだから、起きるといつもクッションに代えてくる
それで柚乃はびっくりして、いつも自分で起きてくるんだ笑



柚乃:にぃに...行っちゃうの?

蓮希:うんっ!今日は試合だから!

柚乃:...にぃにとあそびたかったなぁ...

蓮希:ごめんね~

柚乃:むぅ...



ガチャ
○○:蓮希、準備できたか?

蓮希:うんっ!ばっちり!

蓮加:忘れ物しそうだったけどね~

蓮希:あぁ~ママ、しぃー!

○○:ふふっ
おっ、柚乃起きたか、おはよう


柚乃:むぅ...

○○:...なんでむくれてるの?

蓮加:お兄ちゃんと遊びたかったのに、パパが野球に連れてっちゃうから...
かな?笑

○○:あぁ...なるほど笑

蓮加:柚乃、後でママと一緒ににぃにの試合見に行こ?

柚乃:...フリフリ

蓮加:柚乃!

柚乃:にぃにと...いっしょに...あそびたいもん...
いつも...いつも...やきゅう...やきゅうって...グスッ

蓮加:柚乃...


ポンポン

蓮希:俺、今日ホームラン打つからさ!
柚乃に見ててほしいな!

柚乃:にぃに...

蓮希:柚乃が見ててくれると、打てる気がするんだ
だからさ、にぃにを助けてくれる?

柚乃:...コクッ

蓮希:ありがと!にぃに頑張るね!



蓮希は○○に似ている
性格も他人を思える気持ちも...

長男っていうのもあるけど、少しだけわがままな妹に対してあの振る舞いができるのは流石

蓮希にとっての憧れは、いつだって○○なのだろう
野球においても、普段の生活にとってもね


柚乃:...うんっ!がんばって!



今まで泣きそうな顔していた柚乃が、晴れやかに「頑張って」と言えるようになっている
我が息子、かっこいいぞ!




○○:ふふっ、じゃあ蓮希行こっか

蓮希:うんっ!じゃあいってきます!

柚乃:いってらっしゃい!

蓮加:頑張るんだよ?

蓮希:うんっ!




近くの市民球場


『おはようございます!』

○○:おはようございます

『今日は○○選手が見てくださるんですか?』

○○:僕はもう選手じゃないですけど...笑
そうですね、今日はコーチから依頼を受けていたので

『そうですか!よかったな!』

『うんっ!』

『実はうちの息子、○○選手に憧れて野球を始めたんです!』

○○:あぁ、そうなんですか!
嬉しいですね


駐車場で出会った、蓮希のチームメイトの親子にそう声をかけてもらった
嬉しかったね…笑



『あっ、蓮希!おはよ』

蓮希:あっ!おはよ!

『今日○○選手来るって俺知らなかったんだけど!』

蓮希:だって言ってないもん笑

『言っといてくれよなっ!』

蓮希:わりぃわりぃ笑


同級生かな?
微笑ましい場面を見ていると...



『蓮希くん、うちのチームの中心なんです』


別のお子さんのお母さんたちがそう切り出す


○○:えっ!?


『今3,4年生のチームに一人だけ2年生から飛び級で来てるんですよ』


『ね!その中でも堂々としていて、試合に入っても声かけはいつもポジティブで!』

『蓮希くんがいるだけでチームがまとまっているんです!』


○○:そうでしたか...
あいつ...そんなこと一言も...


『お父さんには恥ずかしかったのかな?』

『はははっ!』


○○:...かもしれないですね....


知らなかった...
家では蓮希とチームの話をすることはほとんどない
話すことはいつも自分の反省点

だから、蓮希が飛び級でここにいるなんて知らなかった
蓮希、お前頑張ってるんだな....




○○:集合!

『集合!』

○○:こんにちは

『ちわっす!』

○○:うん、元気があっていいね
今日一日コーチを務めます、久保○○です
よろしくね

『よろしくお願いします!』

○○:じゃあ今日は楽しく野球をしましょう
いいですか?

『はいっ!』

○○:うん、いい返事
じゃあ準備して~



そこからのアップ、準備はみんなに任せる

やれって言われたことより、あれやらなきゃって思ってくれた方が成長するからね
大人にこれやれあれやれ、って言われてやる子は将来あまり成長しないからなぁ~

まぁそんな狙いは置いておいて...

今日はみんなが野球を楽しんでやること
それができるように動くのが俺の今日のタスク

さて、どういう野球にするかね?




『あっ、蓮加さん!こんにちは』

蓮加:あっ、こんにちは!
いつも蓮希がお世話になってます

『いえいえ、こちらこそ!柚乃ちゃんもこんにちは』

柚乃:こんにちはっ!

『元気ね~』

蓮加:いえ...この子、蓮希にいってらっしゃいっていう時に泣いちゃって...

『あらあら、お兄ちゃん大好きなのね』

柚乃:うんっ!にぃにだいすき!

蓮加:それで少し...笑

『兄妹で仲が良いのは羨ましいよ~
うちなんて男しかいないから毎日喧嘩で...笑』

蓮加:それはそれで大変ですね...笑

『そうなのよ!...あっ、始まるみたいね』



○○が監督?として初めて采配を振るうこの試合
なんかみんな笑顔な気がする...

ポジションも打順もいつも通り
だけど、雰囲気がいいだけでなんか別のチームを見てるみたい



柚乃:あっ、にぃにだ!!

蓮希:お願いしますっ!


蓮希の打席への向かい方
バッターボックスに立つ前に、必ず挨拶して入る


蓮加:○○がバッターになる時にやってたことだ...



蓮希は蓮希、○○は○○なんだけど...
どうしても重ねてしまう

だって...そっくりなんだもん




○○:ふふっ、ほんとに俺の事ちゃんと見ててくれたんだな




カキーーン



『いっけー!』

トーン、トントン


"ホームラン"



小学生だから、スタンドに届かずとも、決められた白線を超えるとホームランとなる
わかりにくいけど、アンパイアがホームランのジェスチャーをしてる



○○:あいつ、ほんとに打ちやがった...


『ナイバッチ!』

『すごいじゃんっ!』

蓮希:えへへ//

チームメイトとハイタッチしながらベンチへ戻ってくる蓮希



○○:ナイスバッティング

蓮希:うんっ!!


"パーーン"🙌




蓮加:ほんとに打った...

柚乃:にぃにすごいっ!



有言実行...
なんなんだい、君はほんとに...
かっこよすぎだよ…



柚乃:にぃに、ほーむらんうったっ!

蓮加:うん、打ったね!
柚乃が応援してあげたからだよ

柚乃:柚乃、にぃにのちからになれた?

蓮加:うん、ちゃんとね!

柚乃:柚乃のおかげ?

蓮加:うん、そうだよ?

柚乃:えへへ///



試合は結局13-0で勝ち
結果はできすぎなくらい


そして...


『えぇーもうおわりかぁ...』

『きょうなんか試合終わるの早くなかった?』

『はやかった!』


○○:(よしよし...今日言ってほしい感想を言ってくれた!)


楽しい時間ほどすぐに終わってしまう
でもそれはみんなが野球にのめりこんでくれたから...

みんな、いい顔してたよ
このまま野球を楽しんでうまくなっていってね!

そう思いながら、今日という1日が終わっていった





プルルル


史緒里:○○!!

○○:うわっ...びっくりした...
なによ、姉ちゃん

史緒里:なんで今日蓮希の試合あること教えてくれなかったの!

○○:なんでって...
あんた今日仕事でしょうよ

史緒里:蓮希の試合見るためだったら、仕事なんか休みにするわよ!

○○:そんなこと言うなって...笑
ってかなんで今日の試合の事、知ってんの?

史緒里:なんでって...
今日のカメラマンさんの息子さんが蓮希の対戦相手にいたらしいの!

○○:へぇ...それで

史緒里:そう!!
それで○○選手いたって、自慢気に連絡してきたみたいでね

○○:なるほど...

史緒里:...それで...
あんたの指導を受けたいから、あのチームに移籍したいって

○○:...

史緒里:...まだ指導者の道に進まない?

○○:...迷ってる



今日蓮希たちの試合を率いて見て思った
監督はいろんなことを考えないといけないけど、それが楽しいって...

いままで"自分だけ"だったから、教えるなんてって敬遠してたけど...
あの子たちの目を見て思った

いっしょに楽しく野球をやるってこんなに楽しかったんだって



史緒里:私はずっと待ってるんだけどなぁ~

○○:もうちょっと悩ませて

史緒里:わかった!じゃあ待ってる!
次の蓮希の試合、絶対見に行くから!!

○○:わかったわかった...



蓮加:誰からの電話?史緒里?

○○:そうそう



蓮加:史緒里~


史緒里:あっ!蓮加!

蓮加:今度のさ、乃木のライブ行く?

史緒里:あぁ...どうする?

蓮加:もし行くならさ、一緒に行かない?
柚乃を連れてってみようって思って

史緒里:ほんと!?じゃあ行く行く!

蓮加:わかった、じゃあまた詳細は連絡するね

史緒里:うん、わかった

蓮加:じゃあまたね

史緒里:...もう切っちゃうn...


プープープープー



蓮加:あっ、切っちゃった笑

○○:まぁ姉ちゃんなら大丈夫笑
それよりなんで柚乃を?

蓮加:蓮希が○○に憧れているように、柚乃もさ...

○○:なるほど、蓮加に憧れて「アイドル」に興味を持ったと

蓮加:うん...
いつもTVに乃木の子が出るたびに、TVの真ん前まで行って観てるの

○○:さすが、俺らの血を引いてるだけあるね...笑

蓮加:そうね...笑



親が歩いた道を、子供まで歩くことはないと思う
俺らが知ってる以上に、厳しい道のりになることも大変さも知ってる
だからこそ、とは思うけど...

それでも本人の目に映る興味があることに、俺らのやってきたことが映るなら...
そこにとことん付き合ってあげたいと、そう思う


親バカが発揮しすぎないように気をつけないとだけどね...笑






...fin

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