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自慢の弟は一番最後 8話


卒業式を終え...
和と二人で元の家に向かって歩く


和:もうこの通学路も通らなくなるのか...

○○:少し寂しくなるね...

和:うん...

○○:もうあの家を決めた時も懐かしいね...

和:ね...




~~~~~~~
○○母:○○~、高校から寮の案内来てるけど書類書いた~?

○○:まだ書いてなーい

○○母:早く書いちゃいなさーい

○○:はーい

和:ただいま!

○○母:お帰り

和:お母さん!私も○○と同じ高校に行く!

○○:えっ!?

○○母:あんた目指してた高校あるんじゃないの?

和:うん、でもいいの!

○○母:そう、和が納得して決めたなら私は何も言わないよ

和:お母さん、ありがと

○○:でも和...こっから通うの?

和:どうしようかな....

○○母:じゃああなたたち二人で家借りればいいじゃない

○○:そんなことできるの!?

○○母:私の名義で借りれば大丈夫でしょ

○○:まぁ...できるならそうするか

和:(よしっ!)

○○母:じゃあ家はこっちで何とかしとくから、○○走ってきな

○○:はーい




和:お母さん、ありがと

○○母:作戦通りいったね

和:うん!

○○母:○○は気づいてないっぽいけど....

和:いいの!○○と一緒にいれるなら!!

○○母:そう...
(ほんと仲いいよね...この二人が姉弟じゃなければ...ね)




~~~~~~~


和:懐かしいな...

○○:和....和!
着いたよ!

和:あっ...ごめんごめん

○○:ボーっとしてたけどどうしたの?

和:なんか入学の時を思い出してた...

○○:確かに...
あの時は和と二人で暮らすなんて思ってなかったしな...


和:○○は楽しかった?

○○:うん
寮に行くより和と暮らせたことで、いろいろやりたいこともできたし...
和なら勝手もわかってたから、精神的にも安定してやれたし...

和:そっか...

○○:和は?楽しかった?

和:うん!めちゃくちゃ楽しかった!
○○と二人で暮らせてよかったなぁ...

○○:そっか...
それならよかった...

和:でも...これからはそれぞれで暮らしていくんだもんね

○○:うん...

和:寂しいなぁ...

○○:でも近くにはいるじゃん

和:それでもなの!

○○:そっか...

ギュ


○○:甘えたさんになっちゃった笑

和:寂しいけど...○○が憧れの舞台に立てるように
これからなにがあっても○○を応援していくから!

○○:ありがと!

和:じゃあ二人で写真撮ろ!

○○:うん


家の前で写真を撮り、3年間過ごした思い出の家に『ありがとう』の感謝を残して僕たちは再び九州へと帰った



宮崎キャンプ第2クール
このクールから紅白戦が始まる...

○○はまだA組に残っていた

コーチ:今日から紅白戦やっていきます!
チームは毎日グランド入り口に貼っておくので各自確認してください!

全員:はい!


○○:俺は...

   紅組        白組
1 三森(二)    牧原大(中)
2 野村勇(遊)   川瀬(二)
3 栗原(三)    佐藤直(左)
4 中村晃(一)   柳田(DH)
5 谷川原(左)   リチャード(一)
6 柳町(DH)   渡邉陸(捕)
7 正木(右)    周東(三)
8 川村(中)    上林(右)
9 甲斐(捕)    今宮(遊)
P 藤井       大関


○○:...まぁそうだよな…

紅白戦のどちらのチームのスタメンにも入っていなかった
ルーキーでも入れるチャンスがあると思っていたが...そう甘くはない

それに悔しい思いもした
一つ上の代で育成の川村が紅組のスタメンに入っているのだ

でもここで凹んでいるだけではいけない
白組のベンチにいれてもらえた
自分ができる最高の準備をして自分の番が来た時に最高の動きができるように...


新シーズン初の紅白戦ということもあり、宮崎の球場は満員
柳田をはじめ、周東や今宮らスター軍団ということもありすごい盛り上がりとなっていた

テレビ中継やスタンドから見ていた時とは違い、熱気や雰囲気、そしてピッチャーの球速...
学生の時とは比べ物にならないくらいの緊張感がある紅白戦


試合は進み...
5回終了...紅 4ー5 白

小久保:井上の○○の方、行くぞ!

○○:はい!


5回の守備で今宮さんがケガをした
それで俺に出番が回って来た


小久保:緊張してるか?

○○:いえ!楽しみしかないです!

小久保:ふっ、自分の今の力を見せてくればいい
いいな!?

○○:はい!


周東:行くよ!

○○:はい

周東:ある程度サード側は任せて大丈夫だから

○○:わかりました!

周東:じゃあよろしく


この回先頭のバッターは、栗原さん...
打球は速い...

ピッチャーは泉さん...
打たせて取るピッチャーだし...


カキーン

来た...


トッ パッ

○○:ワンアウト!

『ワンアウト!』『いいよー!新人!』




小久保:よ~取ったなぁ...

コーチ:あのバウンドの処理難しいのに...

小久保:あれが特守の賜物だろうな...


その後も...

泉:ショート!

○○:オーケー!!



カキーン

○○:よっと!

”3アウト チェンジ!”


周東:全部ショートじゃん!笑
でもよく守った!

○○:あざす!

泉:ナイス!

○○:あざす!


小久保:守備安定してきたな

○○:ほんとっすか?

小久保:おう、さっきの栗原のやつとか入った時の状態では取れなかったろ?

○○:確かに...

小久保:まぁこのままがんばれ

○○:はい!


そして...

『いけー!』

プロ野球に育成として飛び込んで初の打席が回って来た...
でも不思議と緊張はしていない...


○○:...コクッ

3塁コーチのサインに頷いて...打席に立ちバットを構える...


ドクン...ドクン


自分の心臓の音しか聞こえない...
イイ感じで集中できてる...


ピッチャーは椎野さん...
150km近いまっすぐが武器...



ビュッ


○○:(来た!)


スカッ


"ストライク!"


○○:(フォークか...)


次は…いける
球もよく見えてる


ビュッ

○○:(まっすぐ!)

カキーン


『うぉーーー!』


小久保:左中間破ってツーベース...

コーチ:足もこちらの想像していたより早いですね...

小久保:あぁ...
(あいつ…毎日バット振っててよかったな...)

○○:よしっ!


ファンがいるスタンドからも...
『ナーイス!』『いいぞー!』
と嬉しい言葉が飛ぶ...


ただ打てた嬉しさだけではなく...


○○:手がしびれてる...

自分ではホームランを狙える得意なゾーンに来た球でタイミングもあっていた
でも、力のある速球に押し負け、結果的に左中間を抜けるヒットになった


○○:(まだまだ...力が足りない...)


その後の後続は打ち取られ得点はできなかった


小久保:どうだった?椎野の球は

○○:すごい伸びがあって押し込まれる感じがありました
自分ではホームラン打てると思った当たりが、ライナー性のヒットだったので...
単純なパワーが足りないなと思いました

小久保:ほぉ...打てた事より次に向けて、か…
(こいつ...どんだけ貪欲なんだよ...)

○○:もっと練習しなきゃ...


その後守備位置につくも打球が飛んでくることはなく、紅白戦も白組が勝った


○○:大道コーチ!今日も振っていっていいですか!?

大道:おう!やるか!
でもいいのか?試合の振り返りをしなくて

○○:守備はある程度できるようになって、明日特守やるんで...
今日はバッティングをやりたいんです!

大道:そうか...
今日この後球場空くから、ロングティーやるか

○○:はい!

その日の消化不良を一つ一つ溶かしていくように打っていった...


今宮さんのケガが長期にわたるものだと球団から発表された
チームとしては痛手だが、若手からすればチャンスでしかない
自分もここで頑張れば、支配下を掴めるかもしれない

そう思って練習していた

その後3回行われた紅白戦では、すべて代打で出場した
内容も悪くはなく、全5打席で2安打1犠打と求められた結果は出し続けた
守備もエラー無くやり遂げた


だけど…



突出した結果を出さない限り、支配下になれないのが育成...
チームは外国人選手で補強を行い、今宮さんの穴を埋めた


そして第2クール最終日...


コーチ:第3クールからは筑後へ行ってくれ

○○:...わかりました


俺はB組(筑後)へと行くことになった...



その晩...

○○:くそっ...くそっ!

俺は自分の荷物をまとめ終え、夜のグランドでバットを振っていた
悔しさからか、振るたびに流れる涙...

エラーをしたわけでもない
バッティングも悪かったわけでもない


それでも今のチームの力にはなれないと判断されたわけだ...

悔しかった…ただただ悔しかった
自分では手ごたえもあった
だからこそ余計に...


小久保:今日もやってるな

○○:...はい

小久保:悔しいか?

○○:はい

小久保:そうか...
これで終わったわけではない
お前の野球人生まだ長い
焦ってやらずに一つずつ着実に、な

○○:...はい

小久保:納得いかないか?

○○:...

小久保:まぁそうだろうな...
俺も上に推したんだがな...

○○:えっ...

小久保:それでも外国籍の選手を入れて戦おうというのが上の判断だ
それは理解してくれ

〇〇:...

小久保:俺たちも雇われの身だ
上に提案はできても抵抗はできん
それはわかってくれるな?

〇〇:...はい

小久保:でもこれでパワーアップできる時間ができたわけだ

つまりは...
井上○○、お前を育て上げるのが俺の仕事になったわけだ

○○:...

小久保:経験値が少ない...
これが一番、上が気にしていることらしい
俺はそれより勢いがあることの方が大事だと思ったんだがな...
とりあえずそれを払しょくさせるために2軍での試合を多く経験しよう

○○:...はい

小久保:俺はオープン戦開始まで宮崎にいる
お前がその悔しさを筑後に帰ってぶつけて、ここで見た時よりさらに成長した姿を楽しみにしてるよ

○○:...グスッ
はい!

小久保:泣くのは今日までな笑

○○:すみません...

小久保:ほら続きやってみ、見ててやるから

そこから1時間小久保2軍監督に練習を見てもらった...




一方...

和:○○がいないと寂しいな...

生まれてから18年間ずっと一緒にいた○○がいない空間は初めてだった...

和:宮崎に行きたいけど...
交通費かかるし、アルバイト先も見つけないといけないから...


ピロン


和:ん?

○○L:今度筑後に戻ることになったから

和:戻ってくるってことは...Bに落ちたのか...

和L:そっか...
でもやれることは全部やったんでしょ?

○○L:うん

和L:悔しいね

○○L:うん、悔しい
でも続けないと意味ないから...

和L:そっか...
応援しかできないけど、頑張ってね!

○○L:ありがと、和!


開幕は難しくても今季1軍で出るための支配下登録は7月31日まで…
次はそこに合わせてやり続けなきゃ…

そこで折れていたらそれまでの選手
やり続けないと….





To Be continued...

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