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風の記憶、時の雫

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note をはじめてみようと思う。 秋晴れの空を眺めていたら、風がやってきて、 そのときにふと思ったわけです。
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#時間

時の刻

あの空の向こうに だれかが刻んだ時間が浮かんでいる 悲しんできた刻や 幸せが溶け込む刻も この海の空にまで写し込んでる だれもが季節に刻んでいる 今 この時の刻 浮かぶ ぼくの大切な時の刻

空の凪

空が凪っていると だれかが耳打ちしていた 海の凪とは違う こころのつかみ方をする 時間に吸い込まれるように こころを凪にしてくれる だれにもしらせずに 凪は季節がつくりだした状態 空の凪をただ感じていると こころは次第に落ち着いていく 幾時代が経とうが この気持ちは変わらない きっときみもそうだろう そうに違いない

異世界の扉

タンスの扉を開けば その中は見たことも行ったこともない 異世界に続いている タンスの中に隠れて 気配を消そうしたけれど 異世界に引き込まれそうにな戦慄を感じた 扉は異世界との結界だった こちらとあちらを守っている 互いに身動きできない世界が音を潜めている これに気づく時間は短い 好奇心が五感を勝るこどもの時間だけ 恐れの誘惑が手招きする 闇夜のような光のない世界で 息をひそめて目を慣らし 覗き見しようにもいつも開くわけではない 異世界の結界は こどもとオトナを隔てて

色あせた時間

色あせた時間を読んでいた 何がそうさせたのだろう 自分の中で何が変わったのだろう あのときの輝きや鮮やかさは どこに行ったのだろう 青春という言葉だけでは 語れない時間のねじれが生じて 軽いめまいを起こしている 細い糸のような時間軸が 絡まって解けない 節々に滲む色の影を さみしく悲しく見つめている 色のグラデーションが 無彩色に続く今の時間が 味気ないのは誰のせいだろう 人を愛したことも 自分を戒めたことも 誰かの夢を支えるために 変わってゆくためにあった それが生き

隙間あればこそ

虫の鳴き声が変わる夜 風もやさしくなる 季節が変わるのだと思えば 心に隙間ができる もの寂しさが その隙間に生まれて広がる 些細なことも深く考える 時間が生まれる しらけきった世の中に 吹く風はどこに行くのか 何を変えようとしているのか 胸のさざ波を無視できない 元いた場所に時間は戻らない いくつ季節を迎えても 今いる場所で感じる変化こそ 真実の季節にちがいない

星ほたる

星ほたる 空気と水の 澄みわたる 遠き思い出 不意に息づく 星ほたる  宇宙の深いところ 地上の近いところ 共振する ふたりの自分 思い出にできない時間 消せない時間 心に届く 星ほたるの灯り 今は灯りひとつほどの思いでも いつか広げた手にあまる星空 ※写真:米田 誠(東京カメラ部)

走る先に

一生懸命に走っていた 時間を追い越そうとするように 汗が目に入ろうと 息が上がりそうになろうと 走っていた日々はどこかにある 自分が思うより言葉は届かない もどかしさを残したまま 一生懸命に君を思うとしていた 走る先に 願いが叶えられそうな時間がある 届かない言葉に 変わる言葉を探して ぼくは走っていた 胸が締めつけられるように苦しくても それしか思いつかなかった 君が見ていてくれるか 走っているときには関係なかった ただぼくの思いを遂げたい それだけのために懸命に走っ

一つの地球、何度目かの人類

星は降らない ただそこにある 人類が生まれるずっと前から 長い歳月のそのまた遥か遠く 恒星の宿命を負い 輝き続けて その一部が地球に 何光年もの旅の果てに 届いているにすぎない 人類が知性を獲得したのち その事実に意味づけをした そして神話が生まれ 時間の概念が生まれ 暦ができた 暦を司る者は 大きな力を得て 一族の支配者になっていった やがて人類は進化をし 文明が花ひらき 固有の文化が生まれた 何万年もの間に 自然から畏敬を持って学び 人間の暮らしに役立ててきた知恵

メビウス

静かに閉じた宇宙が拡がる遠ざかる 閉じているのか開いているのか 気の遠くなる時間の幅で メビウスの宇宙は続いていく 裏も表もない世界に 小さな嘘を落とした 大きすぎる世界には見えない嘘が 惑星の上では大きな傷となって残った 一つ傷が癒えればまた一つ生まれる 解けない謎が瀕死の惑星に刻まれる 閉じてはいるが開かれてもいる メビウスの宇宙 誰かの意思で創り上げた嘘が やがて世界を破壊する

まえにすすむわけ

なにをそんなにいそいで きみははしっていくのだろう よくぼうなのか あせりなのか じかんとかけっこをしているようだ なにをそんなにのんびりと ぼくはみちばたにすわっているのだろう むよくなのか あきらめなのか ながれるじかんをみているようだ じかんのみちをただすすんでいても こころにはなにもうかばない みあげたそらにさえ くもはうかんでいる かぜもながれて ひもおちる たまにはたちどまり いそぐわけも のんびりするわけも さぐってみてはどうだろう わずかなじかん

空の匂い

幸せは遠いふるさとの空にあると わたり風が申すもので ぼくは空を見上げた いつもと変わらない空が広がっていた この空のどこかにふるさとの匂いがする その匂いの中に幸せが隠れている この空はかの空 この匂いはかの匂い かすかに届く匂いの向こうに 昔 過ごした時間にさかのぼる場所がある 戻れない時間が生きている 連なる時間の端に今のぼくがいる 一方の端はまだ見えない空の下 たどり着く時間は測れない ふるさとの空が続くとしたら そこには幸せの匂いを感じる時間がある 幸せは遠

散りゆく花よ、生きていく者たちよ

さくらが散りはじめた。 もう半分くらい葉桜に置き換わっている。 今年は入学式の頃には葉桜ですね。 どうも最近の季節は四季が偏ってきている。 長い夏と冬、それに挟まれた春と秋。 四季はあっても折々に楽しむことができない。 春が加速している。 最高気温を見ているともう五月上旬の陽気。 1ヶ月は早く感じられる。 花粉だの黄砂だのと言っているうちに さくらは満開になって、早々に散りはじめる。 ちょうど年度替りの時分は気持ちも落ち着かず、 あれよあれよと暦をめくる。 もっとゆった

とまり陽

しずくが降るほどに 日差しは ここそこに たまり揺らいでいる この青空の下で 誰にも会わず  口もきかず 日が暮れようとするまで ここにいる 縦になったり 横になったり 水を口に含んだり 目を閉じたり 開いたり まぶたの裏に 日差しの軌跡が 意味のわからない 残像を描いた 山の中腹に かすみのような雲を 抱いている 桜が咲き始めた とまり陽を捕まえている とおい遠い おとぎ話のような 本当の話 ある春がそばにいた

さくらの空

不思議なもので、 桜が咲くとなぜかほっとする。 沈みがちだった気持ちも浮上する。 それだけ桜には力があるのだと感じる。 今日は朝から雨が降ったりやんだりの あいにくの曇り空。 ようやく開きはじめた蕾を濡らしていく。 でも明日は晴れ間も出るらしい。 年度替わりの3月は 空の気分もコロコロ変わる。 人の気とどちらが気まぐれなのか、 わからなくてもそれが不思議と楽しい。 ぼくがふさぎ込んでいた時間の間 桜はじっと咲く季節を見据えていた。 その時間の交わりがもうすぐ咲いて溶ける