マガジンのカバー画像

風の記憶、時の雫

1,255
note をはじめてみようと思う。 秋晴れの空を眺めていたら、風がやってきて、 そのときにふと思ったわけです。
運営しているクリエイター

2018年4月の記事一覧

うらら感

ゆったり風がふいてくる いつもより3割増の日差しのなか のんびり風がやってくる 軒下の物干しにゆれる 洗濯物が影を落として ゆらりゆらり眠気をさそう 高い空のどこかでさえずる雲雀 だけど姿が見えない 混ざった音が散けて消えて 風にゆれる葉音とさえずり 一つひとつの音が光っている ただそれだけの時間 日陰の縁台で仰向けに寝ると それらすべてが 何もない一時の贅沢に思えてくる 昼下がりは眠気を誘うだけ 何も要らない ただ在る時間だけの居心地 かすんだ空には雲はいなくて 眩

未来は笑うか

済んでしまった過去に表情はない 今は進行形だ ころころ表情が変わる 笑っていれば 泣いてもいる 苦虫つぶしてもいれば ふさぎ込んでもいる 一つに決まってはいないのは生きているから 生きて 生き続けていれば 未来はどんな顔をしているのだろう 刻々と変わる表情のどの先に 未来は存在しているのだろう 茫漠とした時間だけがそこにあるのではない 終わってしまった過去と同じ道を歩いても 道行く先は 同じ顔をしてはくれない どんなに願っても 同じ時は待っていない 今の向こう側は 今の延

「好き」の準備

「好き」は1枚のシャツ。 「愛」は重ね着。 だから「好き」は集めやすい。 だから「好き」は着やすい。 「愛」は組み合わせをあれこれと 考えるけれど なかなか決まらない。 だから「愛」をやたら振りかざす大人は嫌いだ。 だから「愛」をむやみに口にする大人は苦手だ。 お気に入りの「好き」も 季節にあわせて着替えることもある。 心にかなう「愛」は 身軽な季節に合わせられずにしまい込む。 不器用なぼくでも「好き」は集められる。 抱えきれないくらいに集めよう。 ワードローブ

手のひら

手のひらを あなたの胸にあて ふくらみの奥にある鼓動を感じれば あなたの気持ちが伝わる このときを あなたが待ち望んだか ぼくが待ち望んだか この鼓動が ぼくのものか あなたのものか もはやそれは 些細な問題で 指先にすこし力を入れると かすかな息の乱れが ぼくを虜にする わずかな時間だが 遥かな時間のように あなたとぼくの間には  特別な時間が じんわり沁みてくる ぼくが宇宙とつながるとしたら 今をおいて他にはない 女という宇宙を前にして 自覚する存在 触覚による

裸のオルゴール

春になると小さな頃から放浪癖がむくっと起き上がる。 なぜかはわからないのだけれど、宛てもなくふらっと どこかに行きたくなるのだ。 歩いて行くときもあれば自転車で出かけるときもある。 記憶に残っている最初は、小学4〜5年生の頃だ。 今日のような晴れの昼下がりに自転車散歩に出かけた。 日曜日だったと思う。 穏やかな日差しと心地よい風が誘ってくれて、 今まで走ったことのない道を走り出した。 気に入った場所を見つけては自転車を停めて一休み。 ただそれだけのことがとても重要なことに思え

はるは はるか ちかく

あるいていると かなしみが うずくまっていた ぼくは くれよんを とりだして はるいろの はなを かいてあげた また あるいていると とんがった いかりが にらんでいた あまりに いたそうなので まるい きゃっぷを かいて かぶせてあげた またまた あるいていると さみしさが ぽつんと たっていた ぼくは てをつないで ともだちと かいてみた それから ふたりで あるいていると せつなさが むねを おさえていた しめつけられそうなので ふたりで はぐしてあげた どんど

此処にいるべきとき

わたしはどうしても此処を離れられない 星がいつ落ちてくるかもわからないからだ わたしはどうしても耳をそばだてなければならない 月がなにかを語るかもしれないからだ わたしはじっと目を凝らしていなければいけない ふきの葉の下に小人が見えるかもしれないからだ そこまで根をつめたら糸はすぐ切れると あなたはいうだろう でも今日はそんな一日だとわたしは感じているのだ 理屈はわからない 理由もうかばない ただそう感じるとしか言えないから仕方がない こんなときはそうあるものではな

カミナリおちた

カミナリがおちた ぼくのあたまにおちた ガミガミなって  さいごはのうてんにおちた おちたわけはなっとくできない たいていはりゆうなんかない おちたいからおちた こんなりふじんなことあるかい かあさんカミナリは ガミガミなるだけだけど とうさんカミナリは いきなりげんこつドスンだ そんなのってあるかい ブツブツもんくをいうと またカミナリがおちるから がまんしてたらなみだがでてきた うちのカミナリは きょうりょくだ ふたりしておとすんだから こっちはこどもひとりなんだ

子宮の空

この世に生まれたときに人間は 子宮とおさらばした とても居心地のよい場所で 40億年もの進化を 十月十日で成し遂げた 子宮は恐るべき力を秘めている 考えてみればわかることだが 男には半端にしかわからない 女は子宮から生まれ 生まれながらに子宮を持っている 宇宙のなかで小宇宙を育てる やがてその小宇宙が あらたに生命という宇宙を生む 生命の連鎖は 子宮のなかでつくられる 子宮を持たない男は 子宮に還るしかない 宇宙に対する憧れは果てしないが 到達は途方もないくらいに儚い