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風の記憶、時の雫

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note をはじめてみようと思う。 秋晴れの空を眺めていたら、風がやってきて、 そのときにふと思ったわけです。
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2015年4月の記事一覧

かすかな風が くるりと 人差し指にまきつく と ほら 南からの予感が 静かに伝わってくる その指で 道端の 風にゆれる花に そっとふれてみる うなずく花の 囁くような やさしさに ぼくは身ぶるいした

桜霞

かすかに 頬を染めた粉雪が 風に踊るように 無数の花びらが散っていく 空を指した 幾本もの枝から 誘い風に乗ってとんでいく ベビーピンクの粉雪が 花がすみの町を舞っていく 初恋の遠い想いのように 若いバレリーナのように

曇り空の向こう

曇り空に ぼくの迷いが現れる しっとり水を含んだ風が ぼくの悲しみを感じとる あの空の向こうに 蒼い希望が澄み渡っているだろう 厳しい空に ぼくの力が試される 崩れる空の時の間に 必ず訪れる晴れの時を待つ 時間が経てば 蓄えた力が豊かに育つだろう 迷いの空は めぐる思いの鏡かもしれない

初夏

少年のような葉の翠が 空を隠すほどに重なりあい 日射しの中で伸びをしている 碧く高い空の上には 白い上弦の月が軌道に横たわり 日が暮れて輝きだすのを待っている 清滝川の涼しいざわめきは ハイキングのこどもたちと戯れあい 正直な笑い声を響かせている 歩きながら呼吸することを つい忘れていたかのように 新鮮な刺激に伸びをしてみる いつも光に満ちた中でさえ 見つけることのできなかった時間と想いが 萌えるように見えてくる この季の中で 風景を抱擁することを とめるものはいな

問題

問いかける 問いかける 問いかける 答えはどこにもない それでも 問いかける 問いかける 問いかける 簡単にでる答えは うそっぽい 問い続ける 問い続ける 問い続ける それが一つの答えだから

日射し

もの言わぬ大地に立ちながら 遥かな想いを呼びさます おまえの旅はこれからなんだと 地平線まで広がる日射しが 点のようなぼくにも降ってくる  何を考えようとしていたのか  こんなにも日射しはここちよい もの言わぬ大海に向かいながら 遠い心に呼びかける おまえの旅は始まったばかりだと 水平線まで翔る海風が 砂粒のようなぼくにも吹いてくる  何を探そうとしていたのか  こんなにも風はここちよい ともすれば 崩れそうな反抗精神に ささえられて歩いてきた 少しばかり 無駄

ちいさな窓から

なぜ こんなにむねがいたむんだろう なぜ わらっていられるのに こころは石をだいたままなんだろう なにもわかりはしないのに いかにもあいそうがいいように みんな機械仕掛じゃないか どうして だれもきづかないんだろう どうして くるしんでいるのに おんなじ眼をしていられるんだろう なにもわかりはしないのに いかにもきげんがいいように みんな機械仕掛じゃないか どうして いたみのわからない人間ばかり ふえていくんだろう どうして こんなにちかくにいるのに こころはとおいま

接点

僕には語れる過去がある 僕には話せる未来がある 決してひとりでなく 決してフィクションでなく 実体ある時間であり 生きている時間であり 変化する運命である 僕には語れる友がいる 僕には話せる仲間がいる 決してひとりでなく 決してフィクションでなく 感じあえる空間であり 触れあう空間であり 生まれる関係である ときに熱く ときに冷たく ときに楽しく ときに苦しく それでも自分の生きている証が そこにある気がする 決してひとりでなく 決してフィクションではな

サイン

いつの間にか 飛ばなくなった鳥のように 高い空を見つめて 憧ればかり いつの間にか 泳がなくなった魚のように 深い海を見つめて 思慮にふける 見上げる空にも 見渡す海にも 確かさはどこにあるのだろう いつの間にか 考えなくなった哲人のように 厚い書物を重ねて ため息ばかり いつの間にか 話せなくなった語り部のように 薄い台本を広げては閉じる 重ねた書物にも 広げた台本にも 真実はどこにあるのだろう あいまいな時の上で 不確かな関係性の中で 真実は薄められて行く