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宇宙は日本の第二の基幹産業になる!趣味だった「宇宙」を生涯の仕事に

野口 智可(のぐち ともか)さん
PDエアロスペース株式会社 宇宙機運用Gr.

【プロフィール】
PDエアロスペース株式会社で宇宙機運用、企画渉外を担当。
PDエアロスペース株式会社は2007年5月設立の宇宙ベンチャーで、民間主導で宇宙飛行機(スペースプレーン)の開発を行い、宇宙旅行や宇宙建造物など、民需としての宇宙輸送、宇宙利用の拡大を目指している。2022年4月5日には、 世界で初めて成功させた回転デトネーションによるジェット/ロケット切替エンジン実証をメディア公開し、まさに今話題の宇宙機メーカー企業である。

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ー今の職業や、主な仕事内容をご紹介いただければと思います。

私は今、愛知県の碧南市というところで、翼のついた宇宙機の開発をしているPDエアロスペース株式会社(以下、PDAS)で働いています。
宇宙に行く乗り物といえばロケットをイメージされると思いますが、弊社が開発している宇宙機は、飛行機に乗ったまま宇宙空間に行くイメージです。

PDASには、宇宙機開発に関わる2つの部署、

  1. R&D (研究開発)Gr.(機体開発チーム、エンジン開発チーム)

  2. ES Gr. (エンジニアリングを支援する)

    そして事務系の3部署、

  3. 宇宙機運用Gr.

  4. 企画渉外Gr.

  5. 総務Gr.

    計5部署があり、私は宇宙機運用Gr.と企画渉外Gr.の2部署に所属しています。
    参考:会社概要

宇宙機運用Gr.は、開発した機体を実運用するために必要な準備を行う部署であり、販売や運航、法検討、宇宙港など全10テーマに渡る宇宙旅行を実現するための課題に取り組んでいます。

企画渉外Gr.では、SNSの投稿など、会社の広報を担当しています。イベントにおいては、カメラマンもやります。

野口 智可(のぐち ともか)さん

ー1日のスケジュールについて教えてください。

【ある1日のスケジュール】
09:00 出社, メールチェック
10:00 打ち合わせ
11:00 企画渉外Gr.:企画書作成
12:00 ランチ/基本的には自分で作った弁当持参
★たまに皆でラーメンに!
13:00 宇宙機運用Gr. :メディカル検討
15:00 企画渉外Gr.:会社公式SNSアップ 
★差し入れのお土産でブレイクタイム
16:00 宇宙機運用Gr.:企業様とのWebミーティング
17:00 宇宙機運用Gr.:海外展開用資料作成と調査
18:00 宇宙機運用Gr:週次ミーティング
19:00 退社


ー宇宙業界でお仕事をされるようになった経緯を教えてください。

宇宙に興味を持ったのは偶然の出来事で、中学生の時に家から流星群を見ていたら、たまたま火球を目撃して、すごくびっくりしたんです。

流星群というくらいだから、ひっきりなしに流れ星が見れるようなシーンを期待していて、でも実際はそんなに多くなくて。
現実とのギャップにガッカリしていたタイミングだったので、インパクトのある火球には余計に驚き、そして感動しました。

そもそも火球を知らなかったので「隕石が落ちてきた!」と興奮してしまって。

(実際には隕石じゃないから)いくらニュースを調べても出てこない。隕石についてパソコンで調べ始めたところから宇宙系のサイエンス記事を読むようになって、どんどんハマっていきました。

調べたことを友達に話しまわっているうちに、宇宙大好き女子と認識されるようになりました。

大学で宇宙系を専攻していたわけではないのですが、就職活動の時に、これから定年まで約40年間働くことを考えたら、その貴重な40年間を宇宙のために使いたいと思って、宇宙系の仕事を探すようになりました。


ー中学生時代に「宇宙好きキャラ」になるくらい宇宙好きだったのに、大学で宇宙系を選ばなかったんですね。

宇宙が儲かる仕事だとは思っていなかったので(笑)

宇宙はあくまで趣味で、仕事はお金を稼ぐためのものと認識していたので、就職活動でも年収ランキングばかり注目して、小学生の頃でさえも医療系など年収の高そうな仕事ばかり見ていました。

大学進学時もお金について学ぶなら経済、と考えて進学しましたし、大学時代は宇宙とはかけ離れた生活をしていました。


ー宇宙業界にお金を稼ぐイメージがなかったのにどうやって今の会社のことをお知りになられたんでしょうか?

就職活動で業界研究をしていたら、いまは日本では自動車産業が一番大きいけど、これから第二の基幹産業を担うのは宇宙産業だと国が発信していると知って、「あ、これはイケるぞ!」と。

「国から将来を期待されている成長産業の中で、何も関与しないなんてあり得ない!」

「私も現場で働いて貢献してやる!」

と燃えました(笑)

元々宇宙は好きでしたし、「こう!」と決めたら周りが見えなくなるまで集中する性格なので、宇宙業界の会社を調べまくって、PDASに辿り着きました。


ーベンチャー企業に就職することに対して不安はなかったのですか?

不安はなかったです。

就職説明会などでも、「大手企業だと成長しにくいし、ベンチャーの方が自分で裁量を持って業務担当し、成長出来る」との話がありました。

自分の周りでも大企業とベンチャー志望は半々くらいの割合で、ベンチャー志望が珍しい感じではなかったです。
自分のやりたいことを第一優先に考えた結果です。最後には、ベンチャーを大企業に成長させていきたい!という気持ちになっていました。


世の中に無いものを生み出していくことにやりがいを感じている。業界の当たり前を創っていく仕事

ーマルチタスクで日々仕事をされているとうかがいましたが、仕事について苦労したことはありますか。

宇宙機運用Gr.では、有人機の運用・運航に関する業務をしています。

宇宙港に関わる様々な分野の企業さんの連絡窓口として活動させていただいていますが、私はあまり英語が得意ではないので、英語での問い合わせが来たときにはもの凄く焦ります(苦笑)。

ー英語のやりとりが頻繁に行われるんですね。

R&Dセンターにいる30人の会社メンバーのうち、おおよそ1/3が外国人スタッフです。中には日本語があまり得意ではない方もいます。例えば、コピー機の使い方で困っている外国人スタッフに質問されることもあるので、上手く伝えられなかったりすると、もどかしい気持ちになります。

取引先に海外企業もあり、ネイティブ英語でのやりとりなどは本当に今でも苦労しています。
ただ、昔から英語は苦手でしたが、それを克服したい気持ちが強かったので、自ら手を上げてやらせていただいています。

自分のふがいなさを感じつつも、負けず嫌いが疼き、どうにかして出来るようになってやろう!と思って頑張っています。


ー宇宙業界を選んでよかったなとか、やりがいを感じることをおうかがいしたいです。

世の中に無いものを創り、展開していくことを体感する時にすごくやりがいを感じます。

例えば、サブオービタル宇宙旅行を一般化させるには、宇宙飛行士のような高度で長期の訓練を必要とすべきではありません。そこで、PDASでは、一般の方が気軽に安心して宇宙に行くためのプログラムを独自に開発しています。考え方も基準も何もないところから、必要なものを自分たちで考えて、作り上げていきます。

「今までに無いもの」を自らの手で生み出し、世の中に展開していく時に、すごくやりがいを感じます。


会社のメンバーはプライベートも一緒に過ごすほど仲良し。コロナ期間のオフは超難易度パズルに挑戦


ーないものを作っていくとなると、前例がないところからみなさんで取り組まれていると思いますが、その中で大切にされていることはありますか?

スタートアップなので、みんな距離感が近く、仲がいいですね。

週一回みんなでラーメンを食べに行く日があったり、休日に遊びに行ったりもします。部署が違う人とも一緒になるので、仕事以外のコミュニケーションが仕事を円滑にしているかもしれないです。

旅行や帰省後は必ずみんなにお土産を買ってきたり、誕生日はLINEでおめでとうと連絡したりします。私自身初めての会社なので他の会社と比較できないのですが、年齢関係なくみんなフランクで、仲良くさせてもらっています。

人間関係を意識して作っているというよりは、自然に仲良くなってチームワークができている印象です。

おかげで仕事でも自分の意見を言いやすいですし、それに対してフィードバックをいただけますし、言葉を交わせば交わすほど、相手の考え方もわかってきます。

休日に社員、インターン、ボランティアメンバーでサーキットへ

ーお仕事の中で、宇宙業界ということで、色々な経験をされているのではと思いますが、この体験は面白かったなというのはありますか?また、これはレアな体験だということは?

弊社はアメリカのコロラド宇宙港とMOUを結んでいて、定期的にオンラインミーティングを開催しています。そのミーティングに私が入社2,3ヶ月目で参加させてもらい、貴重な体験をさせていただきました。

入社時に「いつか海外で仕事をできるようになりたい」と発言したのを汲み取って頂き、こういった機会を頂けたのだと思います。
ネイティブ英語が聞き取れるかという不安はありましたが、せっかくいただいた機会だったので「わからなくてもやってみる!」の精神で参加させて頂きました。

今でも、そのミーティングには定期的に参加し、コロナ明けには現地視察に行く予定です。

ーお休みの過ごし方について教えてください。

まだ碧南市及び愛知県に来て1年経っていないので、町をぶらついてみたり、カフェを巡ったりしています。
完全オフと決めたら、家でアニメ観たり、パズルやスクラッチアートを楽しみます。

コロナ禍なので、家で楽しめることをやろうと思った結果、スクラッチアートやパズルにハマりました。夜の星空を写しだした、ウユニ塩湖のパズルはすごく大変でした。

星空が反射した水面含め、全体が星空になっていて、全ピースが一緒に見えるんです(笑)

マイクロピースという小さいピース、1000ピースで、何回も諦めそうになりましたが、毎日仕事から帰って夜中までやり続けた結果3日くらいで完成させました(笑)達成感凄かったです(笑)

次は星空のモン・サン・ミシェル3000ピースを予定しています。


能力・過去関係なく好きなことにチャレンジすることが大事。日本初の有人宇宙飛行を実現させる!

ー今後こういうことにチャレンジしたい、挑戦したいということはありますか?

私が生きているうちに、日本初の有人宇宙飛行を必ず成功させたいです。

エンジニアではないので、有人宇宙機を作ることはできませんが、日本発の宇宙旅行に向けて、環境整備にどんどん取り組んでいきたいですね。将来的には、宇宙旅行の販売及び快適な宇宙への旅に向けたアテンドを行っていきたいです。

一つのゴールは「宇宙旅行を日本で販売出来るようにする」
これが出来たら本当に嬉しいですね。

ー宇宙業界で働きたいとか、今の学生の方でも宇宙業界を目指す人が増えていると思いますが、そういう方にメッセージをいただけたらなと思います。

私は宇宙について趣味レベルの知識しか持っていなくて、本当にただ好きという気持ちだけでしたが、それでも自分のやりたいと思う気持ちを大事に挑戦し続けた結果、いまの状態にあります。

やりたいことと自身の能力・適性が合ってないんじゃないか、と悩まれる方、特に宇宙業界を希望される方には多いのではないでしょうか。
過去の経験に左右されずに自分がやりたいと思う事があったら、不安があっても自分の気持ちに正直になってどんどん挑戦していいと思います。

Nothing is hard to a willing mind.

愛知県蒲郡市竹島ファンタジー館に展示されているPDAS-X02

ーありがとうございました!


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〇宇宙のお仕事図鑑とは?

このプロジェクトのきっかけは、「宇宙関係の仕事につきたかったけど、宇宙飛行士や天文学者しか知らなかった。」という声がコスモ女子のメンバーからたくさんあがったことでした。
宇宙のお仕事図鑑では、宇宙関連のお仕事をされている方々に取材をした記事を発信していきます。
文系の職種も理系の職種も(文理で区分する必要もないかもしれません)、大きな組織の中でのお仕事から、宇宙ベンチャーや個人でのお仕事まで、「宇宙のお仕事」をこのnoteで発信していきます。

〇コスモ女子とは?

「コスモ女子」は、宇宙業界で活躍したい女性中心のコミュニティです。

宇宙に関する知識を身につける「宇宙の基礎講座」や、宇宙に詳しくなくても楽しめる交流会などのイベントを毎月開催!

コスモ女子から発足した、コスモ女子アマチュア無線クラブが人工衛星を2024年に打ち上げる予定です。

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