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全てが本物の宇宙科学博物館!「コスモアイル羽咋」の仕掛け人高野誠鮮氏に聞く博物館設立の想いと宇宙教育

コスモ女子は定期的に講師の方にお越しいただき、宇宙に関する勉強会という形でご講義いただいています。
2022年最初の勉強会は、石川県にある宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」の仕掛け人である高野誠鮮(じょうせん)氏をお迎えし、コスモアイル設立の想いや日本の宇宙教育についてお話しいただきました。


「コスモアイル羽咋」設立のお話

高野氏がコスモアイル羽咋を設立したきっかけは、アメリカのスミソニアン博物館の管理責任者の方から投げかけられた1つの質問でした。
その質問とは、「どうして日本の国立博物館には鉄でできたロケットが玄関に立っているんだ?」というものでした。
続けて「スミソニアン博物館に鉄製のロケットはありますか?ありませんよね?なぜ日本では鉄製のものを展示しているのですか?」と問われました。
よく見てみると、その博物館で展示されているものは全て実物で、鉄製のロケットは1つもなかったそうです。

当時の日本の博物館は、置いてあるのは模型ばかり、場合によってはプラモデルやジオラマを置いていました。そう問われた高野氏は大きなショックを受け、小さくても本物の博物館をつくりたいと思い立ちました。

米国や旧ソ連などから宇宙にまつわる品のレンタルや購入を行い、本物にこだわった展示物の収集を行いました。
中にはNASAがアポロ計画で持ち帰った本物の月の石なども含まれています。
本物には、リアリティから引き出されるオーラのようなものがあるそうで、模型とは迫力が違うといいます。

しかし、新しく博物館を創りあげるのは一筋縄ではいきませんでした。
予算という問題があったのです。

コスモアイル羽咋は複合施設で、図書館や大ホールなどに予算の大部分がまわり、博物館にかけられたお金は総予算のわずか5%未満でした。
そのような状況でも、熱い想いを武器に個人で交渉をおこなっていき、予算をやりくりしながら1つ1つ展示物を集めていくことで今のコスモアイル羽咋はつくりあげていったそうです。

衝撃的なひとことをきっかけに、博物館をつくりあげてしまう高野氏の情熱に胸が熱くなりました!

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アポロ計画のキャプテンからのお墨付き!

色々な方との繋がりをもとに、本物の展示物を収集していった高野氏。
さまざまな収集エピソードをお話しいただきましたが、その中でも私が聞いて1番ワクワクしたエピソードを共有します!

アポロパイロットとの出会い
展示品を収集するため、人脈を広げるうえで高野氏がこだわったのは宇宙飛行士と繋がりを持つことでした。
特に、アポロ計画という特別なプロジェクトの宇宙飛行士との繋がりを強く求めました。
誰か会いたい人がいるか、と聞かれた際には決まって「アポロ計画に関わった飛行士に会いたい」というリクエストを出し続けたそうです。

結果、ジーン・サーナン船長を紹介いただくことになりました。
サーナン船長はアポロ計画最後の月面飛行であるアポロ17号で船長を務め、「月最後の男」とも呼ばれているそうです。

高野氏はサーナン船長とすぐに仲良くなることができたと語ります。
みな、ふつうは船長のことをフルネームで呼ぶそうですが、高野氏は初対面から「ジーン」という愛称で呼び、向こうも「ジョーセン」と呼んでくれる仲になりました。

近くに行くたびに「また来たよ」と顔を出していると、「日本ではアポロ計画に関心があるのか?」と聞かれたそうです。

「船長、あるどころじゃないですよ!物凄く関心ありますよ!」と返し、本物を集めた博物館をつくりたい、と熱く語ったところ、船長の自宅に遊びに来るよう誘いがありました。
すぐさま向かい、いろいろな話をしたところ、「そんな想いがあるならいくらでも協力しよう。」という強いお墨付きを貰うことができました。

私はこのエピソードを聞いた時、話の節々から高野氏の人柄の良さや親しみやすさが溢れていて、思わず笑顔になってしまいました。
高野氏だからコスモアイル羽咋をつくることができたんだな、と感じたお話でした。

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日本と世界の宇宙に対するビジネスや教育の差
また、宇宙教育の浸透に関するお話をしていただきました。
ある日、高野氏が子どもたちへの航空宇宙の教育を見学するために、アラバマ州のスペースキャンプに参加した際、日本との宇宙教育の大きな差を実感したそうです。
そのキャンプでは低学年向けと高学年向けのプログラムがあったそうなのですが、低学年向けの内容でも高野氏が参加したくなるような内容をしていたそうです。

宇宙服を想定した潜水服を身に付け、大人のダイバーがそばについた状態で男の子が深いプールの中に潜り、司令室にいる女の子がその男の子にネジを締めるなどの簡単なミッションを出し、クリアしていくという本格的な内容です。

その他にも、子どもたちを教える教員のためのプログラムでは、NASAの職員が直接「宇宙とは何か」を教えたり、宇宙教育に対する力の入り方とやり方に大きなギャップを感じたと言います。
日本では宇宙に関する敷居を高くしてしまい、一般人がかかわるものではないという認識ができてしまったと高野氏はいいます。

大衆に開かれた宇宙開発をし、国民の理解が得られないと予算が下りないという問題があります。
小さな子供が経験し、それを親が見て「これは素晴らしい」と実感することで、世に宇宙へ対する関心や理解が浸透すると感じたそうです。

戦後の日本は事故を恐れ、有人宇宙飛行を一切行っていませんでしたが、高野氏はこれに警鐘を鳴らしています。
アメリカの宇宙開発は失敗の連続で、その失敗から学び、前進してきました。日本は失敗したら誰が責任を取るかを考え、前に進まなかったそうです。

このマイナス思考に陥ってしまったことが、日本で宇宙教育が浸透しなかった理由のひとつであると高野氏は考えています。

「成功するまで失敗すれば良い」というお話は宇宙開発は勿論、大小問わずあらゆることに当てはまるな、と感じました。
わたし自身もさまざまなことに挑戦し、失敗して学んでいこうと決めた時間になりました!


さいごに

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今回、高野氏のお話を聞かせていただき、熱意と行動の大切さを改めて実感する時間となりました。

「悔しい」という気持ち1つのところから展示物収集の交渉に臨み、限られた予算の中で博物館をつくりあげていく、というのは高野氏の並々ならぬ熱量を感じました。勉強会後にはコスモ女子限定で交流会のお時間もいただきました。

高野氏からは、宇宙や学問に対するワクワク感をつくっていくことの大切さ、本物を見て「なぜこうなっているのか」と疑問を持つことや直接関わった関係者にお話を聞くことがワクワク感をつくるきっかけになると、体験を交えてお話しをいただきました。
生きている間にしか会うことができないのだから、疑問に思った際にはどうすれば相手が喜んでくれるのかを考えたうえで、直接お話を伺えば良いと激励のお言葉もいただきました。

わたしたちコスモ女子は、2022年度中に、女性だけのコミュニティで人工衛星の打ち上げを予定しています。

人工衛星の打ち上げにはさまざまな失敗や障害が出てくると予想されますが、その度に今回お話しいただいたことを思い出し、前に進んでいきたく思います。
宇宙や人工衛星に興味がある方や、少しでもコスモ女子に興味を持たれた方は、ぜひ公式LINEまでお問い合わせください。
一緒に活動できることを楽しみにしています!


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