反社会的勢力はなぜ日本に多く、増え続けるのか(5)
反社の定義を再考
これまで三つの例を見てきたが、ここからは、反社ではないかと思われる事例を取り上げていく。
ただし、反社の定義はあいまいなので、ここで改めて反社について見ておく。反社(反社会的勢力の略)は、暴力団対策法(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」の略)では、「集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体等」とされている。しかし、誰が反社か、という場合、この説明をどう解釈すれば良いのかがわからない。ここが日本社会に反社が多く、増え続ける理由ではないだろうか。
例えば、反社2の例で取り上げた反社の子供さんと結婚した人は、その人自身が反社のようになってしまったと聞く。ところが、その人の兄弟姉妹には飲食店経営者もいることがわかっており、そこにこの人も家族を伴って来ることがあるらしい。この飲食店は食材を購入するが、そこと関係すればこの食材提供者や企業も反社との関係を持つことになってしまうのだろうか。それはこの食材て強者のその後の態度による。が、威嚇で儲けを増やせるなら、楽な方に流されていくかも知れない。
反社は感染症のように、こうやってどんどん増えていくのかも知れない。気を付けなければならない。
次のような企業は反社に侵入された例になるのか
反社とされる「集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体等」は、最初から威嚇などを行なうわけではない。むしろ、甘い言葉で仲間を増やす。企業に対しては、出資などで静かに関係を深めていく。
コロナが流行った時、政府はコロナ対策助成金を出した。今、それを不正受給した人や組織が逮捕されたり、名前を公表されているが、全ての不正受給者が把握されたわけではないだろう、と考える人は少なくない筈だ。
この知恵を付けるのは誰なのか。
また、日本はスタートアップ企業の支援のためにJ-Kissと呼ばれる資金調達方法を法的に認めた。経済産業省のウェブサイトをみると、転換価額の算定式のみが設定された新株予約権等により資金供給を行い、将来企業価値評価の正確性が高まったタイミングで株式転換を行う「コンバーティブル投資手段」に注目が集まり始めています。特に、次の3点の特徴から、スタートアップ・エコシステムの強化に向けた活用余地が大きいと考えられます。と書いてある。
ここでは三つの特徴については触れないが、要すれば、企業価値を算定し難い理由がある企業が使う資金調達手段の一つで、これを使う企業は増えているのかも知れない。
こうした企業をウォッチしている法律事務所の弁護士から教えて貰った企業(未公開で三期までの簡単なBSをウェブの掲載している企業)のニュースリリース等を見ると、シリーズAをしてから一年後にこのJ-Kissで(シリーズAの40%の額を)資金調達している。間違いを怖れずに想像すれば、シリーズA調達の後に何かあって順調な成長が出来なくなったということかも知れない。しかし、だからと言って違法ではない。
当の弁護士によれば、J-Kissに出資するような先は、出資先の企業の経営状況や財務状況を厳しく見ない事が少なくないので、調達する企業からすれば願ってもない先なのだという。しかし、ここには良い投資家もいれば、悪い投資家もいるということで、悪い投資家が差し出す飴玉に食らいつく企業が(例えばスタートアップの中には)いるということだった。
さて、この企業は反社に浸食されてしまったのか、それともこの弁護士の思い過ごしで実は問題ないのか、またはそもそもが反社系の企業だから反社系のお金を受け入れたのか、考えればきりがないが、この弁護士によれば、企業が怪しいことをしている場合は離職者が増え始める(つまり、不正を嫌う人が事実を察知して黙って理由を作って辞めていく)とのことなので、これから様子を見ていきたい。
要注目点は、ニュースリリースで発表されている企業が引続き株主として登場するのか、それとも企業との話し合いでさらりと株主が変わっているのか、ということだった。この弁護士によれば、反社が企業に平和的に食い込む手口だという。経営が苦しくなっているスタートアップは取締役会もかなりルーズとなり、株主総会はそもそもが創始者たちだけだろうから、入り込むのは容易である。しかも、彼らには元当局や政治家という人達もついているらしい。政治家と言っても国政から地方まであるのだが。
ということで、動きがあったら、また報告する。
都会から地方へ動く反社?
企業や個人に暴力的行為をしたりそれを使うような威嚇をするのが反社だとすれば、反社は人口の多い、企業の多い、都会に集中している筈だ、と考えるのが普通だろう。
ところが、例えば、これも当の弁護士から聞いた例だと、Web3でお金を儲けた反社が資金を必要とする地方に行って根を張ろうとしている、という動きがあるらしい。地方では悪い過去を注目されることなく、支援をする良い人、とされるからのようだ。
この弁護士が注目している人や組織も、ある地方におり、地方の名手になることを目指しているようだ。この人達はその地方出身だからである。
この話で難しいのは、「地方」の定義。反社の定義と同じく曖昧だ。また東京とて地方の一つだ。しかし、当の弁護士によれば、この地方にあたる都道府県では、①金融機関関係者などが巨額の不正資金詐欺(客から巻き上げた事件)などが発生している、②その自治体の中で入札にかけた土地をまとめて同じ組織が落札している、③公的機関のOBが離職直後に突然その組織に移動している(お金目当て)、ということがあるらしい。
これも要注意だ。