白杖使用者の荷物

あるかたと、少し話にのぼったので。

私は、外出時、大抵、前と後ろに荷物を持っています。
なるべく荷物は少なくしたいのですが、どうしてもこれには理由がある。

私が大抵、どんなに短い距離の外出であっても持ち歩くことになるのが、胸につけている鞄。要するに少し昔に流行ったウェストバッグのようなもの。これを、胸の前に固定しています。
そういう意味では、ウェストバッグ時代は私にとっては便利だったかもしれない。

この胸のバッグには、財布や鍵、ICカード、携帯電話と言った、外出時に大抵即座に取り出すことのできる必要のあるものを入れています。

そして、人と会うとか少し離れた(電車に乗るなど)場所に長時間、他、あまり慣れていない場所に行く、などという場合は、もうひとつ、鞄を背負います。
実は基本的に何も入っていないのですが、このかばんのポケットに、重要なものが入っています。
白杖使用者は、外出先で何が起こるかわかりません。まあ、そういう言い方をすれば誰でもそうなのですが、白杖使用者は、その時に自分に一体何が起こったのかを判断したり、その場で対処することが非常に難しい。特に、白杖の単独歩行の場合は、杖や足や手であちこち探ったり、思わぬものを触ったり踏んだりすることがあるので、汚れの始末に困ることがあります。
他、ゴミが出たとき、街中のゴミ箱を探すようなことはまず困難です。
そのため、ポーチに、ウェットティッシュ、ビニール袋、アルコール、絆創膏など、入れてあります。
あとは……まあ、一応何が起こるかわからないので、常備しているものがありますが…。
あとは、もしもう少し長時間、離れた場所に行くなどという場合は、予備の折り畳み白杖を入れていくことも。白杖というのは、耐久性もある程度は保持しながらも「路面情報を繊細に取得」しなければならないため、構造としては衝撃に弱く、折れやすいようなのです。止めてある自転車の車輪にひっかかったり、白杖の前を気付かず横切ろうとして足をつっかけられてしまった、程度で白杖が折れた、というような話も良く聞きます。ちなみに白杖があるからよく傘で体重を支える人がいるように杖で身体を支えられると思っておられるかたも多いようですが、白杖に体重をかけることは上述の理由によってできません(体幹・平衡障害などで体重を支えるための特製白杖というものはありますが、路面情報の取得の面で難しくなるようです)。
そして、我々、白杖が折れると、その場で足を折られたか目を奪われると全く同じ、その場でもう周囲の情報がわからず前にも後ろにも進めなくなってしまいます。白杖が使えなくなるのは死活問題なのです。
そのため、慣れない場所を多く歩くなどの場合は、白杖の修復道具や予備の折り畳み白杖は持っていきます。ついでに大抵皆さんも持っておられるであろう、折り畳み傘なども入れたら、やはり結局、胸のバッグの他にもうひとつ背負うことになるわけです。

更に、白杖使用者は、思わず荷物が増えたとき、それだけで歩行が困難になります。
そもそも白杖で片手がとられていますし、私などは実はもう片方の手も、身を守るために腕を少し前に構えていたり、何かの時にすぐに手探りしたり身体を支えることができるよう、空けておかねば危険です。なので、少し空きのある鞄を背負っておけば、思わぬ荷物が増えたとき、そちらに入れて背負うことができるわけです。

そして同じ理由で、私は鞄をふたつに分け、前と後ろに背負う(固定する)形にしているわけです。
つまり、今の日本の流行りではだいたい肩から斜め掛けのバッグにまとめてしまう、などが多いようですが、そもそも斜め掛けバッグは、重心が左右どちらかに偏ってしまいますから、白杖単独歩行時、まっすぐ歩くことが(ただでさえ困難なのに更に)困難になります。その上、財布やらICカードやらその中に入れていると、いちいち手探りで探さねばならない。取り出しにくい。

そして、これは特に私の場合かもしれませんが、私などは特に体幹・平衡機能も弱いため、特に肩掛けや手持ち鞄は身動きがとれなくなる。すると、身体の前や後ろに、重心がなるべく偏らないように固定するしかないわけなのです。

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