白杖使用者の非常に嬉しかったこと

#視覚障害者が嬉しいと感じた配慮
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#眼球使用困難症
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#障害理解
#物産展

本日(記事の公開日と出来事の日は違うのだけれども)、非常に、ものすごく、ありがたく嬉しいことがあったので、共有させていただきたい。

私は、上野駅(東京)を良く利用する。
上野駅の一番大きな改札(中央改札)に入る前(出たところ)には、広場のような形になっており、いろいろな季節ものの巨大オブジェを飾っていたり出店(出し物)をしたり、できるようになっている。
そこで、よく、各地域の産直市・物産展を良くやっている。

私は、まるで旅をしているような気分で各地を知ることができるこの物産展というものが案外気に入っている傾向がある…のだが、何せひとりであると、白杖を持ちながら、人が寄り集まる、しかもどこに何があるかほとんど判別することができない物産展のエリア内に飛び込むということがなかなかできず、度胸もなく、…というよりもそもそも何をやっているのか、物産展なのか何かを売っている集まりなのかすらわからずに、知らずに通り過ぎてしまうこともほとんどだ。
ほんのたまに、何かをやっていることを知っていて、わざと寄ってみることもあるが、視覚情報をほとんど使うことができない上、無理に使おうとするとこの身体にとっては大変な負担となるため、すぐにとんでもなく疲れてしまう。その上、現状としては更に、「白杖」というと=「全盲」イメージが強いため(とはいえ私の外出事情はほぼ全盲状態なのだが)、あからさまに太刀打ちできるわけのない、しかも何をやっているかすらわからないはずの物産展に白杖使用者が飛び込む、ということ自体、かなり異質なこと、という暗黙の認識のような雰囲気が追い打ちである。「この人、わかるわけがないのにどうしてこんなところにいるのだろうか、どうしてひとりでこんなところに来るのだろう、来てどうするんだ、というより、見えているんじゃないか、見えているのかいないのかどっちなんだ」という認識を起こすひとが多い(と少なくとも私は感じてしまっている)現日本の段階だ。

本日、久しぶりに遠出の帰途、上野駅の中央改札から出た時、すぐにもう絶対何かやっている、とわかるような、驚くほど通りの良い威勢の良い男性の声で「いらっしゃい、いらっしゃい!いちごですよー!!」とひたすらPRしているのが聞こえて来た。

少々気分転換したいタイミングでもあり、何となくゆっくり近づいてみた。
すると、まず女性の声が「何かお手伝いしましょうか」と。
お声がけありがたい!が、どうしようかなと少しだけ迷い、「ありがとうございます。いや、実はここから都営バス乗り場まで行きたかったんですが、何かやっているなあと少し気になって…なので大丈夫です」と(実は初めて)率直な現状の意図・意志を表現してみると、「ああ、見ていきます?うんうん!」「ここ、今何をやっているんですか?」「ここね、今〇〇県の物産展やってますよ、あとね数メートルで着きます。」と教えてくださった。

ゆっくりゆっくり近づきながら、気になる・近づきたい雰囲気で少しだけうろっとしてみると、なんと、「いらっしゃい」呼び声のお兄さんがなんと人だかりの中、ふと私の様子に気付いてくれ、声をかけにきてくださった!

「ここで良くやっている物産展、気になっていて、ちょっと見ていこうかなと…」と言うと、「ああどうぞぜひぜひ!良かったらご案内しましょうか!」と元気で爽やかな声で言ってくれたのだ。

「え、いいんですか?!」「もちろんです!一緒にまわりますよ!よかったら腕どうぞ!」と、腕を掴ませてくださり、そのまま「ここは~のコーナーです。この次、今ここは~が並んでいて~」などとゆっくり回りながら何があるか紹介してくれ、しかも全く営業トークではなく、私の興味反応を見ながら止まってくれたり、そこのコーナーの店員さんに更に詳しいことを聞いてくれたり、購入意志を示したものを持って次に回ってくれたり、「実際お手にとってみますか」と持たせてくれたり、何と至れり尽くせりのガイドさんをしてくださった。その上、たまに「あ、ここには道の駅のアスパラガスですね。そうそう、僕、実はついこの前初めてやっと、アスパラの美味しさに気付きました」だとか、「僕、もう後は全部先輩がやってくれちゃってるんで、いらっしゃいいらっしゃい言ってるだけで実は暇だったんで!」だとか挟んで、何とも気を遣わせない物言いで…。
こういうイベント物販業務、しかもこの人、ただの呼び子ではなく持ち場があった(いちご売り場のスタッフさんだった)のに、暇などあるわけがないことは、私自身が過去にマネキンやPR物販でたった数回で音をあげた体験もあるからわかる。しかも上野駅のような大混雑の場で。


何とも感動体験だった。
いつも、通常の店での買い物ですら、「何を探すか」目的の物を明確にして行かなければ探すことはできない。もし店員さんが付き添ってくれたときも、そんなに「幅を広げた形」では、興味だけでは、なかなか回ることができない。
ましてや、その時々の出店など、どちらかと言えば「楽しむ」もの、あまり目的を定めずに「まんべんなく見て回る」ような系統は、まったく太刀打ちしようがなく、通り過ぎるようになっていた。
よほど、同じく興味を持つ友人などとわざわざ行くという形でなければ、実現不可能なのだ。

おかげで、遠出の帰りだったのでひとりで挑戦するには恐らくほとんど何もわからないまま数分で大変な疲労となってしまったであろうところを、ほとんど視覚に無理をせず、一通り”見て”回り体験することができた。
「見て楽しむ」「見て回る」という貴重な体験を満喫させてくださり、そして会計まで一緒に来てくださり、その後、私と出会った最初の位置(丁度点字ブロックの端を離れたところだったのだが)に「あ、ではさっきの点字ブロックのところまで、行きますね!」と、連れて行ってくださった(広範囲に叫んでいる呼び子の仕事の最中に、点字ブロックの端が近くにあったことに気付いてしかも覚えておられたことに驚いた!)。
しかも最後に、私がいくつか購入したにもかかわらず、「なんか僕、手荷物増やしちゃったような気がしますね(笑)」などと。

「ひとりだったらそもそも近付けない、近づいてもほとんど何もわからないので、本当に助かりました、おかげで本当にとても楽しかったです!」
「いつも何か人だかりができているくらいはわかっても、何をやっているのかわからないんですよ。それが今日は、多分お兄さんだと思うのですけど『いらっしゃいいらっしゃい!』という声が元気に聴こえたので、あ、物産展か何かかなとわかって、すごくわかりやすかったです」

と、でき得る限りをこめて感謝と、どれだけどのようにありがたいか、伝えてきた。

すると「ああ良かった、僕も、楽しかったです!」とまで。

私にとっては、滅多に体験できない、祭り、大イベント、アトラクションを体験させていただいたようなものだ。

本当に、ありがとうございました。

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