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都市伝説のルーツとなった小説「イルミナトゥス!」

 「イルミナトゥス! Illuminatus」"は、1970年代に発表されたロバート・シーとロバート・アントン・ウィルソンの共著による三部作小説。陰謀論の祖というべき小説です・ダン・ブラウン著「ダ・ヴィンチコード」や、陰謀論で話題になる「イルミナティ・カード」に影響を与えたことで知られています。しかし日本では翻訳されていないため、無名の本です。

 この三部作は、超古代文明から現代に至るまで、あらゆる歴史的陰謀を盛り込んでいます。やりすぎ都市伝説ファンにはたまらない一冊のはず。この記事では、あらすじと興味深い都市伝説をいくつか紹介します。
 ※この記事は5月15日以降は、有料(100円)になります。

「イルミナトゥス」三部作の表紙

第1巻:ピラミッドの目

プロビデンスの目

 3部作の第1作目「ピラミッドの目」は、秘密結社、オカルト伝承が複雑に絡み合う世界観を読者に教えます。物語では、ハグバード・セリーヌとジョー・マリクという2人の主人公が、全世界に広がる巨大な陰謀の闇を暴くために奔走します。

 本書で興味をひかれるのは、18世紀後半にバイエルンで設立された実在の秘密結社「イルミナティ」の話で、世界の出来事を裏から操り、莫大な富と影響力を駆使して、歴史の流れを変える強力な集団と噂されています。日本で「イルミナティ」に言及した本がはじめて世に出たのは、ダン・ブラウン著「天使と悪魔」(2003年)ではないかと思いますが、その30年前にアメリカでは知られていたのです。

 第23章「嵐の孤児たち」では、失われた都市アトランティスを掘り下げています。アトランティスは単なる神話ではなく、かつて地球上に実在した場所であり、大洪水によって滅ぼされたというモチーフでストーリーが進行します。

第2巻:黄金の林檎

知恵のリンゴ

 3部作の2作目「黄金の林檎」では、陰謀論はさらに複雑さを増していきます。物語は数世紀にわたって展開され、さまざまな人物が世界の権力構造を支配するための戦いに巻き込まれていきます。

 本編で紹介されている都市伝説の中で最も興味深いのは、テンプル騎士団の話です。テンプル騎士団は中世の騎士団で、錬金術の秘密や聖杯の場所など、膨大な知識を隠し持っているとされています。

 第17章「5つの法則」では、「23」の数秘について考察しています。この章では、23が宇宙で特別な意味を持ち、一見無関係に見える多くの出来事が、数秘術を使うことで結び付けられることを示唆しています。

第3巻:リヴァイアサン

アトランティス(空想画)

 3部作の最終作である「リヴァイアサン」は、陰謀の伏線をドラマティックなフィナーレへつなげます。本を読んだ後、この世界は陰謀に満ちた闇深い世界だと懐疑的になり、真実を追究したくなることでしょう。

 本書で取り上げられた最も興味深い都市伝説のひとつが、失われた大陸「ムー」です。ムー大陸とは、数千年前に太平洋上に存在した広大な大陸で、驚異的な技術と知識を持つ高度な文明が存在したとされています。

 第7章「黄金の林檎は海へ」は、バミューダ・トライアングルの都市伝説を掘り下げます。この章では、この地域で起こる船や飛行機の謎の失踪をめぐるさまざまな説を推測し、三角形が異次元や平行宇宙への入り口であるという考え方を提示します。

信じるか信じないかは、あなた次第

 「イルミナトゥス!」に描写されたことで、後に真実だと判明した都市伝説の一例は、「コインテルプロ COINTELPRO」と呼ばれる政府の秘密監視プログラムの存在です。小説の登場人物たちは、社会の支配を維持するために、さまざまな活動家グループを監視し、操作している政府のエージェントが関与する巨大な陰謀を発見することになります。この本が書かれた当時は、このような考えは突飛なものでしたが、後に、FBIが実際にコインテルプロの一環としてこのような作戦を実行していたことが明らかになりました。

 ※2014年公開のドキュメンタリー映画「1971」は、FBI秘密監視プログラム「コインテルプロ COINTELPRO」をテーマにしています。

 『イルミナトゥス!』は、歴史と神話の膨大な要素を織り交ぜ、複雑で魅力的な物語に仕上げた魅力的な三部作です。都市伝説として語られたことに真実があるということが明らかになりつつある現代、もう一度読んでみることに意義があるかもしれません。

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