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地場産業がグローバルに展開する上での4つのタイプ

地場産業の作り手(職人個人単位、会社形態問わず)が時代の変化に合わせたアップデートとグローバル化をしていく上で、どのような成長の上でのゴールイメージがあるかを考えているうちに、おおよそ4つに集約されてきたので、忘れないうちに整理しておきたい。(最近整理する感じのnoteが多い理由はそのうち明らかに…と引っ張ってみる)
なお、多くの地場産業に見られる分業の各プロセスの担い手の方々を主として想定しているので、全てに当てはまるわけではないことを最初に断っておきたい。

1.総合メーカー型
最終消費者に対して露出する自社ブランドおよび商品を持ち、それを製造販売していく機能を全て備えているタイプ。これまで培ってきた技術や素材、文化的なストーリーをコアとしながら、既存市場とは異なる市場や用途などに最終製品を作って挑戦していく。
経営戦略、製品開発・製造、マーケティング、営業・販売などを一貫して自前で行なう。(アウトソーシングするときにも自社で判断できる能力を持つ)
(例)
・テキスタイル生地メーカーが自社ブランドのアパレル商品を展開する
・金属部品加工職人が自社ブランドのアクセサリー商品を展開する

2.OEMパートナー型
ある製品の製造プロセスの部分あるいは大部分を担う。既存のものだけでなく、時代に合った製品にも展開する。そして、そのメーカーにとって欠かせない製造部分を請け負うOEMパートナーとしてのポジションを構築する。市場の特徴やノウハウの習得と市場に合わせた調整、そしてネットワーク構築が必要になる。そして、重要なのがOEMとは言え、極力自社の存在を露出することだ。iPhoneのOEMを請け負っている台湾の大手エレクトロニクスメーカー、Foxconn(鴻海精密工業)のように、業界やユーザーにしっかりと知られるようになってこそ広がりが生まれるため、「○○製作:○○株式会社」といった表記がされるように契約するなど、ブランド政策が極めて重要になる。
(例)
・数寄屋大工や木工・竹工芸の職人がホテル等の高級内装を施工する

3.素材サプライヤー型
OEMパートナー型の変型パターンになるが、製造を請け負うのではなく素材をメーカーに供給する。これも同様にその素材自体のブランド露出が重要な要素である。ブランドを構築すること、そしてその素材が使われた商品にもその素材のブランドが表記されるように契約するようにすることが重要である。
(例)
・織物素材の職人がインテリア用の素材として生地を供給する

4.アライアンス型
ブランドを構築して製品を最終市場に出していくという意味では1と同様であるが、自社のみで行なうのではなく、必要な機能・能力を多種多様な企業・職人等とチームを組んで行なっていく。プロジェクトごとに柔軟な組み合わせと変化が可能となるというメリットがある。一方で、自前で行なう場合と比べてコストが高くなること、そしてチームメンバーのコーディネートとディレクションを行なっていくことが困難というデメリットがある。
(例)
・デザイナーと職人、小売店が共同で生活雑貨を展開する

様々な「地場産業の活性化プロジェクト」をしばしば見てきたが、多くの場合1を目指そう、という動きが多い傾向がある。しかしながら、2〜4のタイプは選択肢としてはビジネスとしては成功の確率が高い。特に4は変化の激しい・早い時代においてはとても有効である。
どうしてもメディア等で取り上げられる事例は、1のように分かりやすく目立つケースが多いが、ビジネスとしての成功の定義は自社で決めれば良い。そしてそこに至る方法も1つではない。自社に合ったやり方、ステップで進んでいけば良いのである。
また現実的に2・3を経由して1か4に進んでくというルートが資源や経験が限られている中小零細企業にとっては堅実でもある。

ただ、4つとも共通していることがある。ビジネス全般の複雑化についての知識の習得とアップデートは必須であるということである。全て高度なレベルで習得するという必要はない。ただ、いろんなプレーヤーと関わっていく上での基本的な知識がないと、そもそもコミュニケーションが成り立たない。旧態依然とした仕組みや市場から脱却して伸びていくためには、気合いと体力だけではなく、新たな仕組みや市場についていくためのしっかりとした知識が求められる。

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