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今こそ改めて考える、「20分コミュニティ」の重要性

知識としては知っていたがアメリカ・オレゴン州のポートランドに2013年に初めて行ったとき、実際に目の当たりにした「20分コミュニティ」*。要は暮らしの全て=「住む・食べる・働く・学ぶ・買う・楽しむ・交わる」などが身近にあるというコミュニティだ。

ポートランドでこのコミュニティの考え方を知ってから、日本はもともとそういう街だったのではないか、そしてそういう街のあり方に戻ることが今こそ必要なのではないかと確信した。
そして20分圏内にできるだけ多種多様な人たちが存在し、その人たちが日常的に交流する状態を作れば、街は創造的になれると考え、「DESIGN WEEK KYOTO」を始めた。

そして今年は新たな活動をスタートしようとしている。それは地元に生まれ育った人が、そのローカルのコミュニティを愛し、その中で住み続け、働き続ける環境をつくっていくことだ。以前からこのようなまちづくりが持続可能な地域を作っていく上で大事だと思っていたが、今こそ求められているのではないかと思う。

多数の人が乗った電車で密着状態で長い時間をかけて通勤するという環境が都市の当たり前になっていた。産業革命以降に都市が経済・文化の中心になるという状態が加速する一方だった。しかし、現在、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が社会を蝕んでおり、リモートワークが進みつつある。多くの人たちが都市に通わずとも暮らしができるということに気づきはじめているのではないか。あるいは都市を前提とした経済の仕組みの限界や脆弱さに気づき始めたのではないか。

20分圏内という身近にいる人たちが作った農産物や物品を買い、そして同じ圏内で住まい、働くというコミュニティで暮らすこと。そうすると基本、徒歩や自転車をベースとして移動することになる。通勤時間に充てていた時間は、家族や友人と過ごす時間や学びの時間などにできる。
今までは、経済的に豊かになろうとすると都市に行かないといけなかった。DWKの取り組みも含めて、地域経済を一定程度活性化すること、そして地域の人たちがその地域の会社の存在や取り組みを知り、都市に行かなくても暮らせるという選択肢を具現化すること。そして自分の生まれ育った街のことを誇りに思い、暮らし続けること。それがあってグローバルにも通用する軸が育っていくのではないだろうか。

コロナショック後に来たるべき、そんな社会の仕組みの構築に取り組んでいきたい。

*参照(2017, 岩淵泰・イーサン・セルツァー・氏原岳人)「オレゴン州ポートランドにおけるエコリバブルシティの形成―都市計画と参加民主主義の視点から―」
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ポートランド市は独自の基準として「コンプリート・ネイバーフッド(complete neighborhood)」を利用している。質の高い住宅,雑貨店,学校,公園,広場,新鮮な食べ物,レクリエーションなどのサービスが,徒歩や自転車などの交通手段で手の届く範囲で得られることである。分かりやすく言えば,手の届く範囲で必要なサービスを受けられる近さのまちづくりだ。具体的な政策として,都市内の拠点同士をネットワーク化させることが挙げられる。
(略)特徴として挙げられるのは,
①都市全体の結節点である大きな拠点としての中心市街地と,ビジネス・公共サービスの拠点としての住区の存在
②徒歩や自転車による緑の回廊
③市民の回廊
など,拠点と拠点を結ぶ公共交通のアクセス強化である。グリーンループと呼ばれる緑の街道は,学校や公園に向かう道でもあり,現在,市民生活のシンボルともなっている。公正性の実現には,都市内部の公共交通のアクセスとコネクションがとりわけ重要な要素として位置づけられている。
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