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2023年度 #2 「その季節しか味わえないことがあること」を、現代の人は本当にどこまでわかっているのだろうか

🌸2023年4月9日〜16日の振り返り

・Fashion Studiesのオンライントークセッションでハタフェス企画者のお一人、藤枝大裕さんとテキスタイル産地ネットワーク主催者の大田先生の話に感銘を受ける
・色んな人たちにDESIGN WEEK KYOTOとDESIGN KYOTOの今後の構想を話したことによって、今後の方向性が固まってくる
・木金の2日間突貫で急遽集まった初対面のチームメンバーで急遽資料を作るも、すごいチーム力でなんとか提出に間に合うという奇跡が起きる
・3年目を迎える同志社大学の京都学のクラスがスタートする
・所属している祇園祭綾傘鉾保存会の活動の一環で、粽用のお札をみんなで貼りまくる活動を通じて、チーム力が高まっていくのを実感する
・淡路島に行った帰りに京都に立ち寄ってくれた中川玄洋さんと飲む
・昨年度のクロスカルチャーコーディネーター育成講座受講生の初企画プログラムに参加し、京都・大原野周辺の素晴らしさと竹の奥深さに感動する

藤枝大裕さんのほとばしるテキスタイル愛に感銘を受ける

富士吉田は織物の産地なのだが、2日間で約2万人を集める「ハタフェス」を始め、織物を軸とした活性化がここ数年盛り上がってきている。その仕掛け人の一人が藤枝さんで、今回、オンラインで話を聞く機会に恵まれた。何年か前に「布博」という織物のマルシェのようなイベントが京都の木屋町にある立誠小学校(今はホテルになっている)で開催されたが、それに参加してテキスタイルの楽しさを感じたことを覚えている。その布博を企画・運営していたのが実は手紙社に所属されていたときの藤枝さんだったということにまず驚いた。富士吉田のテキスタイルウィークに昨年参加し、それも感動したけど、なんか藤枝さんにある意味テキスタイルにはめられている気がしなくもないw
どうやってそれだけのイベントを成功させているのか、とても気になっていた。もちろんイベントの企画・運営やマネジメント、プロモーションなどのノウハウがあり、それは手紙社で学ばれたということだったが、僕が印象に残っているのが「あぁ、この人は本当にテキスタイルのことを深く愛している人なんだ」ということ。言葉の端々や話し方にそれがにじみ出ている。その強い愛情、ある意味人類をテキスタイルで語っているような雰囲気などが人の心を動かしているのかもしれないと感じた。
CMのセリフじゃないが「そこに愛はあるんか?」とあらゆる仕事に対して問われているようだった。

大原野・西山の素晴らしさと筍の奥深さに感動する

京都の社寺や観光というと、どうしても洛中や東山などに集中しがちだ。交通の便のこともあるだろうが、今回行った「西山」と言われる大原野の地域は素晴らしかった。
実は妻の母方のご実家が大原野で、何度も行っていて、京都市内にも関わらず里山の景色と暮らしが息づいている様子がとても大好きな地域だ。
しかし、今回クロスカルチャーコーディネーター育成講座を修了した俣野さんが企画・コーディネートして訪問した大原野はまたさらにその感動を深めてくれた。俣野さん自身、大原野に惚れ込んで移住された人で、大原野を紹介するウェブサイト(日英)まで作っている。 
善峯寺はそのシンボル的なお寺で、西山の斜面に広大な敷地が広がっていて、様々な種類の花や樹木が美しく彩っていた。お寺に入ってすぐ、九つ目結紋が提灯や灯籠などに描かれていることに気がついた。ここで僕は俣野さんに「ここは桂昌院さんが絡んでいるんですか?」と聞いたところ、やはりそうだった。

九つ目結紋

善峯寺は応仁の乱で焼け落ちた(こんなところまで乱が及んでいたとは…)後、桂昌院つまりはお玉さんによって再興された。今宮神社と同じだ。なんと神仏や地域に対する愛が深い人なんだ、と改めて桂昌院さんに対する尊敬というかもはや畏敬の念があるが、その思いがますます高まった。すごいよ桂昌院さん、いや桂昌院さま、お玉さま。見習え世の中の成り金たち人々よ。と自分にも言い聞かせる。

境内にある桂昌院像。綱吉の母らしく子犬が脇に。

それはさておき、傾斜がなかなかすごい坂道ではあるが、山中各所、建物も素晴らしいし庭も樹木も美しい。これは絶対にまたあじさいの季節に来ねば。この素晴らしい景色が拝めて空気も水も清純なお寺のことを、僕は全く知らなかったことを恥じたい。素晴らしいお寺でした。

西山から眺める京都の風景

筍農家の上田農園さんは、俣野さんのご友人でもある。僕は人生で初めて筍農家のスゴさを知ることになった。
僕は今まで、筍って、放っておいても竹ってどんどん生えてくるし、もちろん土地を整備したり、密にならないよう間引いたりしないといけないだろうけども、野菜のように種から育てたり、畑を耕したりしなくてもよいはずなのに、なんで高いんだ、と思っていた。
その浅はかさを上田さんのところで恥じ入ることになった。
冬の間に土入れといって、竹林の中で土を削って藁とミルフィーユ状に積み上げていく作業を行い、筍が柔らかく生えてくるようにしておく作業があり、それがとてつもなく重労働だし、どこにどうやって土を入れるかを相当考え抜いておかないと運ぶのも大変。
竹は一度筍が生えると、翌年は筍は生えない。葉を生い茂らせて栄養を吸収する年に充てるためだという。つまり筍が一つの竹から取れるのは2年に一度となる。そのサイクルを3回つまり6年経つと筍が育ちにくくなるため、次の世代の竹を残して、親の竹を伐採する。その繰り返しだそうだ。

筍堀りの道具を説明してくれる上田さん

そして筍を掘るにも、とてつもない経験と技術、そして体力が要る。まず筍がどこに生えてきているかを見極めないといけない。筍は土から顔を出すとすぐに光合成を初めて色も変色し、エグみが増す。そのため土の中にいる間に掘り出さないといけない。土がこんもりと素人でもわかるくらい盛り上がってきているような状態では、もう遅いらしい。だから素人が筍畑に入ると知らずに踏んづけてしまうので、基本は入れない。

筍堀りを見せてくれる上田さん。めちゃ体力が要るので冬の間に体を作っておく。筍のシーズンで10kgは痩せるそうだ。

さらに、竹は成育がめちゃめちゃ早い。1日で数十cmは伸びる。だからこそどんどん掘り出さないと商品にならない。上田さんは1日に200本も掘るそうだ。3月から5月は休みなしでひたすら掘る。竹の成長は待ってくれない。
実際に1時間上田農園さんでは滞在したが、数センチ伸びていた。

1時間で数センチ伸びていた

また、掘り出すときにも長尺の独特の鍬を用いる。土を除け、長い鍬を突き刺し、筍がどのような角度でどの向きに生えているのかを鍬からの感触だけで見極め、美しい形で掘り出せるような角度で鍬を差し込み、テコの原理で一気に掘り出す。上田さんがやっている作業は流れるように美しかったが、見えない土の中を鍬からの感触だけでまさに脳内VRで筍のビジュアルを描きながら掘り出していた。
これだけの作業を筍農家の方がされているからこその筍の値段なのだ。この上田さんが掘り出した筍を使って、まさに筍づくしの料理を今だけ出しているのが「うお嘉」さん。ここのご主人の話も素晴らしく、竹への愛がほとばしっている。味ももはや感動レベルだった…

筍づくし。特に名物の竹ステーキ(真ん中の左側)は絶品。

竹の旬だから「筍」。この感動は今しか味わえないし、筍をどうやってどんな人が作っているかをわかって味わうと感動は倍加どころの話ではない。

まさにこの季節しか味わえない、一期一会の感動だった。ありがとう。

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