見出し画像

『ホモ・ルーデンス』(ホイジンガ)‐第2章「遊び概念の発想とその言語表現」、第3章「文化創造の機能としての遊びと競技」

『ホモ・ルーデンス』の2回目。第2章は、様々な言語における「あそび」という概念の由来や背景などを考察し、第3章は「あそび」と「文化」の関係性について述べ、これ以降の本の内容を総覧する内容となっている。

■概要
・第2章
まずホイジンガは「あそび」を次のように定義している。

遊びとは、あるはっきり定められた時間、空間の範囲内で行われる自発的な行為もしくは行動である。それは自発的に受け入れた規則に従っている。その規則はいったん受け入れられた以上は絶対的拘束力をもっている。遊びの目的は行為そのもののなかにある。それは緊張と喜びの感情を伴い、またこれは「日常生活」とは、「別のもの」という意識に裏付けられている。

81ページ

ここでは「あそび」を表す様々な言語の分析を通じて「あそび」概念を整理している。
多くは、子供の遊び、動き、闘技、競争、勝負、賭け事、からかう、いじる、緊張の緩み、娯楽、表現、音楽を奏でる、などがある。
ただ、日本語の「あそぶ」には、急速な動き、輝き、冗談を言うといった意味は持たず、上品・厳粛さ・真面目さがあるところが特徴的である。

このように多くの言語で、あそびは競争・闘争、武器による真剣勝負も意味している。上記の定義に当てはまるのであれば、まさに剣闘士試合なども含めて命を奪い合うこともあそびになる。

・第3章
ホイジンガは古来からの様々な地域における競争、競い合いの例を挙げながら、そういった競い合いからあそびがうまれていったと述べている。
競い合いには必ず「勝つ」「負ける」が存在し、勝者は名誉や尊敬を得て、それらは勝者の所属グループに及ぶ。そしてこれらの競争は、祝祭などでも豊穣を願ったりするための競技として行われ、敗者は生贄にされることもあった。部族同士での競技の勝ち負けが階層も形作っていった。競い合いには賭け事なども行われた。
競争にも多様なものが存在した。エジプトの「自慢競争」、古代アラビアの「悪口比べ」などもある。どれも根源には、共同体のあそびが初めにあり、それが高い段階へと押し上げていき、真面目・運命的・神聖な遊びとなっていった。

美徳・名誉・高貴・栄光があると示し、敬意を払われたいため、人は競技・闘争つまりあそびをする。
ギリシャにおいて「徳」の上に貴族は成り立つという概念も、ここに含まれていたが、文化が進歩するに従って変化し、倫理的・宗教的なものなどへ昇華されたため、単に勇敢に振る舞って名誉を示せばよかったものではなくなっていったため、生き方を変えていくしかなかった。倫理的な気高い実質を取り入れるか、きらびやか・華やかな虚飾や儀礼によって外見を装うか、どちらかだ。(後者は失敗した)

■わかったこと
「あそび」の根源的なものとして、祭儀をはじめとした他者との非日常でのルール・規則がある中での闘争的なものの中で競い合いから生まれていったという考察、つまりはホイジンガが述べるところの「文化はあそびの中に始まる」であり、「あそびは文化の中に始まる」ではない、というところがなるほどと感じた。遊び的競争・闘争の中に文化が生まれていく、というプロセスは個人的にとても納得感があり、例えばそれこそ自分がやっている茶道などでも個人的精神修養部分ももちろんあるが、客と亭主、客同士、あるいは作り手と使い手などの様々な関係性での闘争があったからこそ、文化としてどんどん昇華されていったのだろうし、真面目に形式を守ることの方が優先されていくと廃れがちになっていくのも、とても理解ができる。
(ホイジンガが述べるほど、日本は生真面目一本やりではなく、文化になっていったものは、やはり楽しいものでもあると思う)

古代ギリシャにおいて、「徳」が倫理的・宗教的な高次なものへ移行する中で、貴族が勇敢な振る舞いや名誉を示すことだけでOKだったことが不十分になっていったというところは、現代における今後のビジネスを考えていく上でも同じことが言えるのではないか。「大きく売上を伸ばす」「会社を大きくする」という手段的数字を追うだけでOKではなく、そこにどういう徳(今風に言えばパーパスか?)があるのか、そしてそれも生真面目一本やりではなく、「あそび」的なワクワクする要素があるのか、ということが大事なのではと思う。

最近、オフィスの前に和束茶を使ったクラフトビールのブリュワリーができた。来客の度に「一杯軽く飲みながらアイデアを語り合いましょうか」と言って、怪訝な顔をされる人の割合がまだまだ多い。ブリュワリーのオーナーはまさに「そういう文化を作っていきたいのだ、だから11時から開けている」と仰っているのを聞いて、明治維新以来、真面目一本やりでやってきた日本でも「あそび」が生真面目の上位に再び戻って来る日も近いのかもしれないと思い始めている。

よろしければサポートお願いします。日本各地のリサーチ、世界への発信活動に活用して参ります。