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葬送第二部を読了して

第一部を始めて読んだ数年前から、途切れたり再読したりと年月をかけ、ようやく第二部の最後まで読み切ることができた。

あらためてこの小説の重みを読み終わった後から生々しく感じている。

ショパンのパリでのラスト・コンサートの日にまた戻りたい。

そう何度も思い返してしまいそうなほど、ロスになってしまう物語であった。

そして、登場人物がみな実在の人間であり、芸術家が幅広く取り上げられている。

ロマンティック・バレエの歴史の始まりに関係していたマイヤベーアとの絡みがあるのは、個人的にうれしかった。ロマン主義の時代にタイムスリップした感覚が味わえた。また、ドラクロワからみた他の芸術家に対する視線も美術史を辿るのに興味深い。ドラクロワは日記を多く書き残しているので、他の本にもあたってみたいと思えた。

また、ショパンがモーツァルトの音楽を愛していたことも印象に深く残った。モーツァルトとショパンの曲想は私から思うとかなり違うような気もするが、モーツァルトの時代だからこその表現を理解した上で、ショパンはショパンなりの色彩で世界に奏でたのだと思うと、歴史からインスパイアされる芸術家の在り方に心打たれた。これでいいのだ、と納得したものがあった。

創作活動のためにショパンを用いたいところだが(すでに創作してきた)、タイミング的に今ベートーヴェンを試みており、葬送ロスからの切り替えに難儀している。でも読後感はすぐに消えるものではなく、私の中に生き続けていることを感じるし、ショパンは毎日何らかの曲をかける。そういった意味では、葬送によって私の中に何かが生まれ、何かが変わり、生き続けていくのだと思えば、焦ってショパンに取り組もうとしなくてもじっくり熟成させていこうと思えている。

素晴らしい小説の魂に感謝を捧げたい。

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