「むらさきのスカートの女」今村夏子 芥川賞小説
「むらさきのスカートの女」という文字がなんとも気になってしまい、書店で手に取ってしまった。
なぜむらさきなんだろう。黒とか白とかピンクだとたぶん読まなかったかもしれない。
「むらさき」の存在感はなんだか本の平積み群からちょっと哀愁が漂っていた。
芥川賞受賞作の今村夏子さんの小説。
ページをめくってみると読みやすい。
でもむらさきのスカートは一体どんな色なのか、柄があるのか、よくわからない。
というより、スカートはどうでもいい。
その女を示すための代名詞でしかないからだ。
知りたいのはどんな女なのか。でもしばらくよくわからない。でも気になるから読み進んでしまう。近所の小さなアパートを想像しながら、ひっそりこういう街にもいるのかなとビジュアルが浮かんできてしまう。
むらさきのスカートの女は、初め不潔そうで、お洒落っ気もないし、近寄りがたい。ちょっと仕事しては無職になってを繰り返している。
だいぶ遠い存在に思えていたむらさきのスカートの女だが、読み進めていくと、急にグッと近くにやってくる。ちゃんと女の顔があるんだと。
そして、このむらさきのスカートの女を伝えてくる謎のわたしの方が気になってくる。
こんなに距離感がひっくり返ってくるとはとても驚いた。
読み終わって、ゆるいと思いきやぐっと生活感に沁み込んでくるメリハリにほろほろと後味を感じている。
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