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彼方



緩やかに流れてゆく雲は
私をどこへも連れて行かない

体に絡みつく据
煙と湿度に覆われて夜が過ぎて行く


忘れているだけ
ただ一時
忘れているだけ


感覚をしまい込んでしまうことへの恐怖
苦しみを覚えていなければ
また同じ景色を見る
解き放たれてはいけない

緩やかな地獄が良く似合う
不幸な方が美しい
いつか誰かが放った言葉



羽化することなく死んだ蝉を眺める
固く折りたたまれた脚でただ空を眺めている


煩わしい
その煩わしさを形にできたら
どんなものになるだろう
どんな心地でいられるだろう



美しく死にゆくために生きる


皆等しく 許されている



こんな心地でいられるのはいつまでだろう


置かれた花の美しさに心がざわついていく


残されたものが貴方には見えますか



空気に溺れて死んでしまった
綺麗な色した魚の目

なにひとつ
覚えていない

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