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素敵な病院

人生で初めての入院をした。コトの発端はこの記事で軽く触れている靭帯損傷の件にある。

この記事ではあまり詳しく触れてなかったが、実はこの時点で「側副靭帯断裂」「前十字靭帯断裂」という診断が下されていた。前十字靭帯は断裂すると二度とくっつかないので、治療方針は筋肉で靭帯の働きを補いつつ生活するか、手術するかの二択だった。

縁のあった病院は古いけれどとてもいい病院だった。大きな病院なのにも関わらず、副院長先生が優しく声をかけてくれ、膝の担当医もサイコロみたいな形状をしているが真面目な男だった。ただ、来ている患者はほぼ高齢者で若い人は私くらいなものだった。検査のために院内をウロウロしたが、やはりほぼ高齢者だった。きっと高齢者から絶大なる信頼が厚い病院なのだろう。

「でもおぬきさん、ジャンプする生活してないでしょう?」

手術をするべきか、という質問に先生はこう答えた。確かに、私はジャンプをしない。心の中のどこかでジャンプはしていても、体をジャンプすることはもうここ数年やってない。最後にジャンプしたのは、背の高い彼氏が取り上げた私の小物を取り返そうとした時だろうか。

ひとまず、手術をするかしないかは考えるのを止めることにした。三ヶ月程で大体の動きが整うということだったので、その頃の膝の状態で手術をするかしないかを決めることにした。先生は手術には消極的だった。

三ヶ月経過した頃、歩くには支障なくジャンプは無理だがあと少しでギリの横断歩道を走って渡れるか、というところまで回復した。状態は良好。しかし、これが一生続くのかと言われると多少踏ん切りがつかない感情になる。膝は緩いっちゃあ緩いという具合で、先生が懸念していた「外れるような感覚」に陥ることはなかった。悩む。

そこで私はセカンドオピニオンを聞きに行くことにした。今通ってる病院よりももう少し大きな病院に資料を送ってもらい手続きした。

その病院は数年前に建て替えたばかりでとてもきれいだった。フロアにはダウンライトがたくさん明かりを灯していて、心なしか働く人がキラキラしているように見えた。(私が通院していた病院は患者は高齢者ばかりだが、技師や理学療法士はみんな超イケメンだった。キラキラはしていなかった)

担当の先生は声の大きなひょうきんそうな男性だった。肩をぐっと前に出し「どうしますか。手術、しますか」とぐいぐいくる。私はぐいぐいに弱い。ブルブルっと首を振り、冷静になる。先生に手術するメリット・デメリット、しない場合のメリット・デメリットを説明してもらった。手術をしない場合、確実に足は曲がりますよと言われた。しかししなければ入院をしなくて済むことと、生活はさしたる支障はないと聞かされた。後者のメリットは場当たり的だ。では、手術をした場合のデメリットは?と聞くと「場合によっては手術中に血栓ができて重篤な病状を引き起こしたり、術後に何かに感染して別の症状に苦しむとかですかね」と言われた。つまりそれは、私の運がなかった場合ってことだ。私は運だけはとてもいいので、そんなことが私に起こるわけがない。黒柳徹子が地雷の埋まった地面をサクサク歩いてなんともないのと同じくらい、私に不幸は起こらない。足が曲がるというデメリットの方がよっぽど回避したい。

ということで、サクッと転院が決まってしまった。最初の主治医にその旨を伝えると、若干しょんぼりしていた。仕方ないよ。あなた、手術したくなかったんでしょ…と脳内で先生の肩をポンと叩いた。

という経緯で私は入院することになり、昨日手術を終えた。人生初入院、初手術、初全身麻酔。ワクワクした。特に全身麻酔に対する好奇心が抑えられなかった。

全身麻酔にはいくつかの方法があるようだが、私の麻酔はガチのやつで、医療現場ドラマで見るあれと同じだった。広くて雑然とした(そう見えた)手術室で、麻酔の点滴が準備される。麻酔医の先生が私の顔を覗き込み「はい眠くなる~眠くなる~」と呪文を唱える。それと同時に見上げる天井がぐら~とした。私は思わず「おぉ…」と老人みたいな声を出した。その後、意識がなくなった。

私はハイパーな人間なので、目覚める時はパチッと目が覚めるかと思っていた。実際はどろーんと目が覚め、また眠りに落ちるという具合だった。眠くて眠くて仕方がなかった。手術を終えて2時間後くらいに目が覚めた。目が覚めた瞬間思ったことは「暇じゃん…」だった。何しろ、手術当日は一日絶食なので、目が覚めたところで食事も出てこない。やることは食べることぐらいなのに。目が覚めたところで、結局寝るしかないという一日。

片足が全く使えなくなったので、怪我をした当日と同じように誰かがいないと電気もつけられない、トイレにも行かれないという生活が始まった。ところが、かわいい看護師さんが入れ代わり立ち代わり甲斐甲斐しくいろいろやってくれるので本当に助かっている。看護師さんの中に「音」という漢字を使った名前の人がいたので、感動をそのまま言葉にすると、はにかむように笑ってくれた。

とにかくスタッフの多いこの病院。入院して三日目だが、同じ人と再会していない。病室も毎日のように患者が変わる。そこであることに気がついたが、それはまた別の記事に書こうと思う。

結局私は何が言いたいのかというと、ダウンライトがたくさん光る病院は先生もスタッフもキラキラしているよ、ということだ。

初体験は書き記しておきたかったので書いちゃったの。

#半月板も内外共にやっちゃってたんだって
#思ったよりも大怪我だって
#昨日知ったの
#手術決めてよかった

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