Peter Doshi: Pfizer and Moderna’s “95% effective” vaccines—we need more details and the raw dataの紹介

 BMJの編集員であるPeter Doshi氏のthebmjopinionのワクチン治験に関するオピニオンを訳したのですがてっきりこれもCOVID-19パンデミック下の特別ライセンスの記事と思っていたら違いました。なのでお蔵入りです。徒労に終わりました。せっかくなので簡単に紹介だけしておきます。

Peter Doshi: Pfizer and Moderna’s “95% effective” vaccines—we need more details and the raw data
January 4, 2021

Peter Doshi氏の経歴はこちらで確認できます。メリーランド大学システム(メリーランド州の州立大学各校の統括機関)の下部になるメリーランド大学ボルチモア校(UMB)薬学部の准教授で、 規制の観点から医薬品の安全性や有効性の評価、エビデンスに基づいた薬、データのアクセスに関する議論などの政策を研究されているようです。比べるのが失礼かもしれませんがマスコミによく出てる一部の識者と言われる人とは月とスッポンな方ですね。もちろん立派な専門家もおられますが。ああいう出演者って利益相反的にどうなんでしょうかね。こちらはもちろんCompeting interestsが明示されています。

 世界では一番イスラエルでワクチン接種が進んでいるようです。確かファイザー製だったかと思います。ニュース上はいい結果が出ているようですが詳細をみないとなんとも言えないのが実際のところではないでしょうか。ロックダウンもかなり厳しいようです。1回の接種では持ったほど効果が得られないとのデータもあるようです。それはおいておき今回取り上げるのはファイザー社とモデルナ社のアメリカの緊急使用許可に先立って公開された資料に関した話になります。
 まず95%の有効性に関して。ファイザーは治験で170名のPCRで確認されたCOVID-19感染者が出ました。内訳はワクチン接種群で8名、プラセボ接種群で162名です。両群の人数はほぼ同数と考えていいそうです。

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少し丁寧に有効率の計算式を書いてみます。ワクチン群の母数をW、プラセボ群をPとします。

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8/162は0.05なので1-0.05=0.95で95%の数字が出てくるわけです。ただCOVID-19とPCRで診断されなかったもののCOVID-19様の症状が出た方は3400人ほどいたそうです。7日以内の症状はワクチン摂取による反応原性によるものだとしその数字を取り除いで計算してみると、
1-(8+1594-409)/(170+1816-287)=29%
ほどの有効性になってしまいます。これは規則で定められている基準50%を大きく下回るものです。
 もちろんPCR陰性であるから考慮する必要はないとの考えもありますがPeter Doshi氏の考えではこれはまずいとのことです。他にもCOVID-19様の症状(咳や頭痛など)を呈する病原体は多くあることからこれらの全てが偽陰性ではないと氏も考えていますが、重症化するならCOVID-19と同じ様な経過を辿るだからこの集団も加味したエンドポイントの方がより臨床的に意義のあるものにならないのかとの主張です。なかなか厳しい意見ですが理想的にはその通りにも思います。
 また別の問題として分析に含めなかった治験参加者のインバランスを指摘しています。表で見てもらうと311人と、60人とかなり偏りがあります。モデルナではここまでの偏りはありません(12人、24人)。問題なのはこの理由が明らかにされてないことです。
 細かい彼の指摘を全て書くとかなりの分量になるのでここでやめます。今回のオピニオンでの内容ではありませんが、彼が以前BMJに書いたワクチンに関する記事を読んでみると一番の問題はこれら治験が重症化を防ぐのか、死者数を減らすのか、伝染を防ぐのかといった重要な問題が分析するようにデザインされていないことです。なぜ誰もが知りたいことを調べないのかですが、他時間的理由やコスト、運用上実現可能化などの問題があります。ただ一番大きな理由は人数の問題のようです。世界中(特に欧米や南米)で多くの方が亡くなっているように思います。意外にも思えるかもしれませんけど感染者に対する割合でいうと重症者も亡くなる方も少なく3万人規模の治験で検出できるようなものでないそうです。各国の死亡死者数を比較するさい10万人あたりの死者数を使ったりします。かなり多い部類であげると1/31のworldmetersのデータでイギリスで1,550/M popなので155/万人、でもこれはかなりの割合で高齢者です。まただいたい1年分の人数。短い期間の治験や参加者の年齢構成などを考慮すると確かに難しいのでしょうね。

 

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