イギリスの変異型VUI 202012/01について
このところ話題になっているイギリスの変異型VUI 202012/01について記しておきます。GISAIDを見たのですがNextstrainの系統樹には公開されてないようです。登録メンバーやハウス(ラボ内)で使っている方のみ解析できるのでしょう。公表されている変異と完全に同一でありませんが部分的に合致しているものを図示しておきます。
イギリス当局がVUI 202012/01と名付けた変異型はスパイクタンパク質に"deletion 69-70, deletion 144-145, N501Y, A570D, D614G, P681H, T716I, S982A, D1118H"の変異を持ちます。そのうち欠失(deletetion)を除く置換部位で調べてみると完全一致するものが3つだけ登録(公開)されています。上の3つの配列その欠失も調べてみましたが69の欠失しているものの、70、143、144はXとなっています。Xは任意のアミノ酸なのでしょうがこの場合ちょっと意味がわからずにおります。
欧州疾病予防管理センター(ECDC)から12/20に公開されているレポート(リンク先は要約でページにPDFがあります)に詳細に分析されていますが、ここでの系統樹は変異型を分析するためのデータセットなので解釈には注意しないといけません(実際イギリスでは急激に増えているのでしょうが世界全体でウィルスの拡がりでみれば間違った印象を与えやすい)。また"イギリスの新型コロナ変異ウイルスは何が問題なのか"と題してYahooニュースで忽那賢志さんて方が書いてますがそこの系統樹も同じです(ひょっとするとどこかのラボが公開しているのかもしれません)。
以前日本から登録されている配列を調べてみようとしてわかったのですNextstrainの系統樹すべての登録されている配列が表示に使われてるわけではなく一部のもの(代表するもの)を使用しているようです(まぁものすごい数が、12/24現在290Kと出てます、登録されてますしSeqのQualityのこともあるでしょうしね)。左のパネルでDatasetを変えると、例えばglobalからeuropeに変えると、描画に使われている配列のうちイギリスから登録されている数が変わることからもわかります。
変異に関する考察は上の忽那賢志さんて方の記事を読めば現状は必要十分かと思います。はっきりとしたことはまだわかりませんが感染力が強い(致死性があがる、強毒化するのとはまた別!ですので)可能性が考えられるので水際対策を強化すべきです。新型コロナが蔓延するのはワクチン次第ではなんとかなるのかもしれませんけどまず防げないと現状考えるべきです。大事なのはピークをなだらかにして低くすることです。もし感染力が言われてるように強いのなら、冬場に流入すれば医療現場がさらに大変なことになるのは確実です。#変異速度に関して追記するかもしれません。
追記
どうもGISAIDのポータルからNextstrainを見るのでなくNextstrainのサイト"Nextstrain SARS-CoV-2 resources"から見ると違うデータセット(下の方にあるAll SARS-CoV-2 Buildsの一覧)の系統樹から見れるようです。Japanはないですね。なお感染研も"2020年11月17日現在で151,910ゲノム配列"のデータを持っているそうです(GISAID登録準備中だそう)。イギリスもCOG-UKのサイトをみると157,439シーケンスしたとあります(20/12/24アクセス現在)。日本も実は遜色ないのです(意外にも大都市は保健所でなく民間検査が進み配列解析に流れてくるサンプルが少ないそうで課題になっているようです)。十分生かされてるとは言えなさそうですけどね。
感染研はたぶんこの手のインフォマティクスや外国の研究者との交流が弱い上に、自前でNextrainの動かして解析できる人材なり指揮をとれる人がいないのでしょう(大部分は英語の問題かもしれない)。データは論文化の目処が立つまで持っておきたいってものわかるのですけどなかなか難しい問題ですね。なお日本でもデータさへあればこういった解析をすぐできるラボはあると思います。実際喜んでするでしょう、目立つ成果になりますし。でも手柄(ここ重要)や縄張りの関係で調整できないんだと思います。ここに突っ込んで進めれる知識や能力のある役人も政治家もいないでしょうね。
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