Science誌「Three-quarters attack rate of SARS-CoV-2 in the Brazilian Amazon during a largely unmitigated epidemic 」の論文の紹介3

 論文紹介の続き3回目になります。
Three-quarters attack rate of SARS-CoV-2 in the Brazilian Amazon during a largely unmitigated epidemic
2021 Jan 15;371(6526):288-292.
https://doi.org/10.1126/science.abe9728
の論文紹介です。この記事はCC BY 4.0のもとに作成しています。

今回もSupplementary Materialsのデータからはじめます。

画像1

こちらはマナウス(朱色)とサンパウロ(エメラルド色)の実行再生算数や死者数をグラフにしたものです。AとDが実行再生算数。AとDはRの求める元データが異なり感染者数(左)と死者数(右)から求めたもののようです。レジェンドには"Rt was calculated using all severe acute respiratory syndrome (SARI) cases (A) and SARI deaths (D)."とあります。どうも横軸の説明が変ですね。計算式は確かめていませんが死者の発生は感染から遅れるのでAは横軸が"Date of death lagged by mean onset to death delay"と書かれており、確かにDと比べてAは遅れているように見えます。だらだらとまぁ書きましたけど集団免疫に達するであろうかほどマナウスでは感染が拡大しましたが8月9月もRt>1でRt<1以下になっていません。10万人あたりの死者数や感染者数に補正したグラフCとFで見やすいですがマナウスでは若干ですけど増加傾向にありますね。では現在はどうなっているのでしょうか。ブラジルのサイトで確認してみました。

ちょっと脱線と愚痴になりますけど、ブラジルですら国や州レベルでかなりグラフィカルなCOVID-19の感染状況の情報を提供しています。どうして日本でできないのでしょうか。ブラジルではインフルエンザのために開発した疫学情報システムをCOVID-19に流用(それだけではないようですけど)して全国規模で情報を収集できているようです。なぜ日本ではできないのでしょうか。デジタル庁とか騒いでいますけどそれ以前にもっとすべきことがあるでしょう。2009年の新型インフル騒動以降国は何をしていたのでしょうか?

ブラジルで確認したサイトは次の2つです。
ブラジル政府: https://covid.saude.gov.br/
マナウスcity hall?: https://covid19.manaus.am.gov.br/monitoramento/

マナウスのものは公的なものなのですが正直どういったサイトなのはわからずにおります(city hallみたい)。さらにマイクロソフトのPowerBIマイクロソフトのPowerBIってのが使われていますが正直使いにくいです。グラフの字をコピペして翻訳できないのでポルトガル語が読めないので大変です。また週ごとの数値が少し変なところがあります。なのでマナウスの都市のあるアマゾナス州のデータ、ブラジル政府のサイトから入手した "HIST_PAINEL_COVIDBR_07fev2021.csv"というファイルから作図しました。数値は週ごとの値になります。サーバーが負荷に弱いのかDLに昨日は失敗し9MBほどの壊れたファイルしかDLできませんでしたが今日は無事にDLでき150Mほどのデータでした。

図2

このうちマナウスがどの程度なのかわかりませんが(ちょこっと検索してみたところアマゾナス州の集計データの半数はマナウスのものとの記載をブラジルのニュースサイトhttps://manausalerta.com.br/amazonas-registra-1-400-mil-novos-casos-de-covid-19-e-99-obitos-pela-doenca/の機械翻訳で読みましたが精読しておらず確証はありません)。するとこれを見る限り収束しているようには見えませんね。あとマナウスcity hall?のサイトでは年齢性別の感染者数のグラフがあります。

画像3

驚くぐらいに20歳以下の感染者が圧倒的に少ないです。検査漏れなのかそもそもこういったものなのか気になります。機会があれば紹介したい別の論文、
"Immunological characteristics govern the transition of COVID-19 to endemicity"
Science 12 Jan 2021: eabe6522 DOI: 10.1126/science.abe6522
があります。この論文で新型コロナがパンデミックからエンデミック(いわゆるふつうの風邪)になるには子供が感染の主体になったときだと推測しています。たんなる感染者率でなくその中身が集団免疫には必要なのかもしれません。ただ子供が感染の主体になる状況ってのが果たして集団免疫といえるのかとも感じます。うまく言えませんけど(少なくとも風邪に対して)集団免疫って考え方がそもそも間違っているのかもしれませんね。

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