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京都精華大学・新世代マンガコースの講義で漫画家志望の学生に伝えた2つのメッセージ

今年も京都精華大学の講義を行ってきた

7月6日。今年もまたこの季節がやってきた。そう、京都精華大学新世代マンガコースの3年生に向けた講義だ。

京都精華大学といえば、学長が非常にユニークなのでこの記事も是非読んでほしい。

光栄にも「漫画業界、特に電子書籍を中心とした最新の情報と、できれば電子書籍の作り方教えてあげてほしい」というオファーを受け、昨年から教鞭を執らせていただいたもので、今年で二回目である。

今年は10人中8人が留学生(中国・韓国がメイン)という中で90分×3コマのトークをしてきた(と言っても今年はコロナの影響でZOOMを使っての講義だったが)。

最初は昨年使った資料をそのまま使えるかなーと軽い気持ちでいたが、結果的にちょこちょこカスタムしながら当日を迎えることに。一年経って、漫画の市場も弊社の状況も結構変わったなぁ。と言っても、僕が漫画家を志す未来ある学生さんたちに伝えたい本質的なメッセージは今年も変わらない。

今年は、1-2コマは漫画業界の市場のお話と漫画家さんたちの多様化について。3コマ目では、『ギャルと恐竜』の作画を担当し、個人的にも10年来の付き合いになる漫画家・トミムラコタさんに登場いただき、漫画家になった背景やヤンマガデビューのきっかけとなった講談社のDAYS NEOのお話を伺った。

1コマ目: 漫画の市場(どれくらいのお金が動いているのか)を知る

1コマ目は、「漫画業界ってどれくらいのお金が動いているのか」を知る時間。我ながら、漫画家を志す学生に対してゴリゴリビジネスの話を展開するハイブローな講義だと思う。

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学生がこの数字だけを見てもいまいちピンとこないので、今年はこの「市場規模マップ」のサイトを見ながら、「出版業界の市場規模は市場全体のどれくらいなのか」を可視化してみた。

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これで見ると細かすぎて分かりづらいので、気になる人はサイトで直接見てもらいたい。それぞれの業種にカーソルを合わせると市場規模が出てくるので、それはそれで楽しいサイトである。

話を戻そう。大学3年生に向けて市場規模について話すというのは講義としていささかハイブローな気もするが、自分が挑もうとしている業界を知ることは大切で、「短期的に/中長期的に」「調子いいのか/悪いのか」「これからどうなっていくのか」を考える機会はこういう場でないと得られないという心持ちで毎回やることを心に誓った。

2コマ目: 多様化する漫画家の生態系

漫画家さんにとって大事なことは、自分の漫画の連載が決まって、ヒットすることであることである。では、その「ヒットの定義」をどれだけの人がちゃんと言えるだろうか。

初版10万部?10巻まで続けばいい?いやいや『鬼滅の刃』よろしく単巻100万部超え?

これが、従来のように漫画家としてのメインストリームが商業連載だった場合は、この議論を続けていればよかった。しかし、いまは必ずしも雑誌や媒体で連載をすることだけが漫画家として生きる道ではなくなってきていると。では、どんな選択肢があるのか。まだ完全に整理はできていないのだが、こんな風にまとめてみた。

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※「ハイブリッド(アーリーアダプタ)型」が②となっているが、正しくは④

連載や単行本化の先にあるメディア化やグッズ化など、作品の多角的かつ総合的な展開を考えた時に(大手)出版社優位であることは現時点で疑う余地はない。

ただ、そこを気にせず、自分で描きたい漫画を描き続け、自分や家族を養う分の収入を稼ぎたいというニーズも確かにあり、ここ数年でそういう方たちが独力で収益化できる仕組みやサービスも整備されつつある。個人の活動のみで1000万円以上を年間で稼ぐことは、このご時世もはや夢物語でもなんでもなくなってきているのだ。

それを踏まえた上で、学生たちに「あなたが志している漫画業界が今どんな状況なのか」「あなたは漫画家としてどう生きたいのか」と問うのがこの講義の趣旨である。

2年連続で講義を受け持って感じたのは、基本的に漫画家を志す学生さんにとって、ごく一部を覗いて出版社で漫画連載を目指すことが第一の選択肢であり、それが唯一の選択肢でもあるような印象を受けた。

若いうちはそれでいいと思っている。商業誌で連載ができるのは今も昔も一握りの漫画家だし、漫画雑誌を読んで育った僕たちにとってその土俵を目指すことは自然なことだ。

ただ、その道しか見ずに一直線で進んだ結果志半ばで漫画家への道を諦めるくらいなら、ちゃんと期限を決めて、期限までに連載を獲得できなかったら自分で漫画を描いて販売する方向に向かえばいいというのが、より正確な意見である。商業作家と同人作家(あるいはネット漫画家)、それぞれメリットとデメリットがあるので、そこを天秤にかけ、自分に向いている道を探せるといいだろう。

そのあたりを踏まえて、内容はまだない(企画中)が10月ごろにナンバーナインではデジタル配信サービスの2周年を記念した「漫画家の未来を考えるイベント」を開催する予定だ。また頃合いを見て告知したいと思うので、興味がある方はぜひ僕のTwitterアカウントをフォローしてもらいたい。

【有料部分】 結局のところ、これからの漫画家さんにとって最も重要なことはなにか

ここからは、個人的な意見も大いに含まれており、漫画の土俵の外にいる人たちの目にさらされて無益な批判を避けるためにも、有料noteとさせていただく。反対に、今後のキャリアに悩む漫画家さんや、ポジショントークでなくフラットに漫画業界の未来について考えている方、出版業界にいる方には読んでいただき意見を聞きたいところでもある。

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