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映画館は都会のオアシス

僕はG-SHOCKが好きだ。

24.97トンのトラックに踏まれても壊れず、世界一のタフさを誇るG-SHOCK。いつでもどこでもどんな時でも時間を刻むことだけは止めなさそうな、不器用な存在だ。

普通に生きてて25トン近いトラックに踏まれることなくない?とか、水深何十メートルまで潜る必要ある?とか、思うところは色々あるものの、Apple Watchなんか視界に入らないくらい、好きだ。Apple Watchを買うくらいなら、スマートウォッチタイプのG-SHOCKを買いたい。でも、スマートじゃなくていいんだな。

「単一機能な不器用なやつ」ってすごく可愛く思えてくるんだけど、僕は映画館に対してもこれと同じ感情を持っている。暗いし、携帯電話もいじれないし、動くこともできない。お金を払って、ただ目の前にあるでかいスクリーンに映された映像に釘付けにさせられる。音もでかいからイヤフォンで音楽を聴くことすら許されない。

強制的に物語に没入させられる映画館が、好きだ。

『HUNTER×HUNTER』よろしく「この物語が終わるまでこの席を立つことも、イヤフォンをつけて何かを聴くことも、スマホを見ることすらも許されない」と自らに制約を掛けることで、「この物語の魅力を余すことなく浴びることができる」という誓約を結んでいるかのような体験だ。自宅でも、風呂場でも、友達の家でも、漫画喫茶でも、得難い空間がそこにはある。

冷静に考えると非常にストイックな体験だなぁと思うけど、必ずスマホの電源を切ることで強制的に外界とのつながりを遮断し、電波の波から離れることができる時間というのは令和を生きる現代人にとってとても貴重なものになっている。

我が身を振り返っても、一つの物事に集中する時間は限りなくゼロに近くなったように感じる。音楽を聴きながら漫画を読むし、Netflixのドラマを流しながら仕事をするし、うんこしながら本を読む。通勤中はラジオが相棒だ。

ひどい時なんかはテレビでニュースを流しつつiPhoneでYouTubeを流しつつPCで仕事をしている時がある。マジコンテンツに失礼なやつだな。

最近映画館に足を運ぶ回数が増えたのも、もしかしたらそんな自分に嫌気が差しているからなのかもしれない。2023年は、気づけばもう10回劇場で映画を観ている。

「私のはなし 部落のはなし」「SHE SAID」「茶飲友達」「BLUE GIANT」「search2」「別れる決心」「湯道」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」「シン・仮面ライダー」「ベイビーわるきゅーれ2」。収容人数12名ほどのミニシアターから数百人収容のシネコンまで、いろんな劇場でいろんなジャンルの映画を観た。

とにかく映画館は最高だ。死ぬほど情報過多な世の中だから、リラックスしながら一つのことに集中するための時間はとても尊い。映画の世界は現実世界と違う景色を見せてくれるので、忙しい合間に見ると小旅行にでかけたような感覚になるのもいい。

多分僕は疲れてるんだろうな。時々寝落ちしてしまうことがあるけど、それもまたご愛嬌ということで。

最近はすぐに動画配信プラットフォームで良質なコンテンツを享受できる便利な世の中になってきたけど、どれだけ膨大な量のコンテンツが溢れようが、映画館というフォーマットはなくならないんじゃないかな。ここ一年くらいは、そんなことをよく考えている。

便利なものでは代替不可能な得難い体験ができることを、もっと自覚したほうがいい。今日書きたかったのは、そんな、都会に残された限りあるオアシスの話だ。

それではまた。

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