「相談しても何も解決しない」とよく言われる僕に、なぜ変わらず相談が来るのか考えてみた
「ころくさんと話しても、結局何も解決しないんですよね」
はじめてそう言われた時は、脳天に稲妻が駆け抜けたような衝撃がありました。
僕のところに悩みを吐露しにきてくれる人はいるし、僕としてもある程度いい方向に向かうように考えて対話していたという気持ちでいたので、最初その話を聞いた時は軽くショックでした。
でも、時間が経つにつれて、「たしかに、あんま何も解決してへんな」と思うようになってきました。何なら、解決したい気持ちはあるんだけど、具体的な解決の提案を諦めてるフシすらあります。そんな戸惑いとは裏腹に、意外と僕のところに相談に来てくれる人は少なくない。はたしてなぜなんだろう……。
そこで、今回は「なぜ僕は相談に対して解決しようとしてないのか」ということと、相談に来てくれる人に対して僕は何をやっているのかについて考えてみたいと思います。
「人間関係構築力のころく」という個性
ナンバーナインでは、社員全員がストレングスファインダーという177の設問を回答することで自分の強みを診断するサービスを利用しています。2020年頃に実施して、35個の中から選ばれた僕の5つの個性(才能と呼ばれてます)は以下の5つ。
ちなみに2018年にやった時は、以下の5つでした。
強みのほとんどが「人間関係構築力」なんですよね。スタートアップで2年経営することで「最上志向」という人間関係構築力以外の何かが僕の中で芽生えたというのは、非常に生々しく、人知れず起業家マインドに侵されつつあるのかなと思います。
こうした結果から、以前のnoteでも書いたようにナンバーナインでは「人間関係構築力のころく」として人を見る部分を任されることが多いです。
先日「悩み相談があったらころくさんにして」とうちの役員が会議中に言ってたりするので、そこは信頼されているのでしょう。
しかし、です。
冒頭にも述べたように「ころくさんに相談しても何も解決しない」らしいのです。これを言ったのも、上で登場した役員でした。
それでも、ありがたいことに相談はポツポツいただけている状況があります。僕に相談するニーズは、多分とにかく話をちゃんと聞いてくれると思ってもらえることなのかなと思っています。
実は奥が深い「話を聞く」という行為
「ちゃんと話を聞く」ということに関しては、わりと自信があります。というか、多分、僕の価値はそれだけです。
ただ、「話を聞く」と一口に言っても、聞く時の姿勢や相づちの打ち方、質問の仕方次第で相談に来た人を気持ちよくさせることも不快にさせることもできちゃう程度には奥が深いと思っています。
じゃあ、どうやって話を聞くといいのか。普段僕が話を聞く時に気をつけているのは、だいたい4つから5つくらいのステップに分解できます。
STEP 1: まずは話を聞く
僕の場合は、悩んでいる人がいたら、まず「何で悩んでいるのか」を聞きます。その人自身の言葉で、悩んでいるであろう部分を言語化してもらう作業ですね。ここでは、どれだけ突っ込みたくなってもとにかく聞くことに徹します。
これも意外と難しいらしく、相談している人の話を遮って自分語りを始めたり、話している途中で解決策を提示してしまったりする人がいると聞きます。
面白いことに、人によってはこのフェーズで解決というか、もう問題がクリアになったりします。誰だって経験があると思いますが、頭の中でモヤモヤと思考を巡らせているよりも誰かに話すことで言語化できる。それだけで解決しちゃう、あの体験です。悔しいですが、本noteに登場する役員は大体これです。
なので、「ころくさんは何も解決してない」となるのです。事実そうなのです。とはいっても、彼はそれを分かった上で僕を壁打ち相手として使い続けてくれるわけで、一定の信頼と尊厳は保たれているはずです。そう思いたいです。
STEP 2: 仮説を当ててみる
話を聞いた上で、もし本質的な課題が見えてこない(ように感じる)場合は、話してくれた情報を頼りに僕が考えうる仮説を色々ぶつけてみます。
「今の話は、例えば○○さんのこういう態度がダメなのかね」
「要は△△ってこと?」
「□□がしんどいと言ったけど、実は××の方が辛いのでは?」
といった具合に、相談してくれた人が本当に悩んでいることが何かを見つけるお手伝いとしての仮説提起は、その人自身が持っていない視点からの意見だった場合に問題発見のいい材料になります。
ここで大事なのは、決してドヤらないこと。そして、その仮説を押し付けないこと。
相談する人は、本当に困っているから相談しに来るわけで、誰も己の意見に従いたいわけではありません。
そしてこれも大切なのですが、押し付けているつもりがなくても押し付けられているように感じることはあるし、ドヤってると思ってなくても「ドヤられてる」と思われることもあります。
自分の感性と相手の感性は別物なので、とても注意しなければいけないなといつも思っています。
STEP 3: その人の悩みを追体験してみる
STEP 2まで通れば、大体の人の悩みの根っこは多少つかめます。そうすると、次のステップとして追体験があります。
こんなふうに話を聞いていくうちに、相談する人の情景が脳裏に浮かんできます。マリオカートのゴーストのように、その人がたどってきた軌跡をたどると、どんどん相談事が個別化していくのが分かります。
「○○さんに振られたのが辛い」
「仕事でうまくいってなくて泣きそう」
「ダイエットしたい」
「転職したい」
例えば最初にこうした悩み相談だったのが、過去を追体験することでその人の置かれている状況の解像度が上がり、はっきりと輪郭が見えてきます。
そうなると、
といった解決策が安直なものであり、時として的外れになってしまう事案が発生します。
振られた理由も、仕事がうまくいってない理由も、ダイエットしたい理由も、転職したい理由も、大味で見たら一緒でも、掘り下げていった先に見える景色は千差万別。僕はわりとそこを知るのが楽しいんですよね。
STEP 4: 理解に務める
ここまで来たら、後は理解するだけです。お疲れさまです。
いや結論出さへんのかーい!と思われるかもしれませんが、ここまできたら、意外とほとんどの方が自分で勝手に解決しちゃいます。解決するというか、憑き物が落ちるくらいには至りますね。なので、ここから先は僕がいらないことが多いです。
大切なことは、共感するのではなく、理解するという点です。「共感と理解は違う」とはよく言われますが、理解は努力すればできるんですけど、共感は努力してもできないことがあるのが大きな違いでしょうか。すべて共感する人は嘘ついてんちゃうかなって思います。
こうして細かく話を聞くだけでも、結構疲れますね。
STEP 5(おまけ): 解決策を考える
相談にのる時に解決策を考えるのは、おまけです。その理由は、ここまでに何度か書いた通り、すでに相談が終了しているケースが多いからです。
とはいえ僕もプライドがあるので、解決策を提示してみます。それを実行するかどうかは、相手次第。深追いはしないで、お相手の方に委ねるだけですね。
話を聞くという行為は、悩める心の交通整備をすること
ここまでの話をまとめると、僕はその人の悩みを解決するために話をしているのではないのが分かりました。
僕がやってるのは、相談してくれた人の心が晴れるように、まずは整理し、自分ごと化し、理解に務めるという行為です。「問題を解決する」というのは僕のタスクではなく、相手のタスクとして見てるんですね。むしろ、仮に問題が解決しなかったとしても、相手の心が少しでも晴れればOK。
「話を聞く」ことが得意な人の弱点
ある程度の人の話を聞くことはできると自負していますが、苦手な人もいます。それは、話をしたがらない人との会話です。
結構色々突っ込んで質問しても、相手の口から言葉が出てこない場合は僕のスタイルでは手詰まりになってしまうので、その場合は無能の人と成り下がってしまうケースがあります。加えて、僕自身が自分のことを話すのが得意でないので何もできないのです。
今でもこうした失敗がたまにあるし、もっと頑張らないとなと思います。
意外と侮れない「ガス抜き」
世の中には「俺の・私の話を聞いてくれ」という人が多いです。SNSも浸透し、一人ひとりがあらゆるところで発言ができるようになったことで、自己主張する機会も増えましたし、聞くより話すことが楽なのかもしれません。
加えて、やっぱり誰かに自分の想いを話すことって非常に大事だなとも思います。「話を聞いてくれる人がいる」というだけで孤独感から逃れられるような人もいるだろうし、話すだけで心がスッキリするような人も少なくありません。
食事をして排泄するのと同様に、情報も摂取したら外へ吐き出さないといけません。適切な循環は大事。だからこそ、僕のような「話を聞いてくれる人」というのが意外と求められているのでしょうね。僕は僕で話を聞くのが楽しいので、それはそれでありがたいことです。
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