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逢魔時の散歩

長男と公園に行ったり散歩に行ったりするのは、午前中のことが多いのですが、たまに夕方に外に出たいと言ってくることもあり、先日も薄暗い道を散歩することにしました。

とくに、保育園に行く途中のアパートの入り口付近にある、低い円筒の先に球体が乗っかっているような形のライトが気になっていたようで、その球体を手で撫でたりペチペチと叩いたりしていたので、点灯している状態のライトを見に行きました。

球体から発する薄橙色の光が、アパートの住人を迎えるか如くに優しくあたりを照らし、長男もその光に見入っていました。他の家やアパートのライトも、壁に張り付いたレンズ型のものや、草に埋もれている直方体のもの等、色々なものを見つけて喜んでいました。

夕方から夜の境となるくらいの時間のことを、逢魔時(おうまがとき)と言い、古くから不吉な時間帯と言われていますが、私はこれくらいの時間に散歩するのが好きだったりします。

特に、薄橙色の光を発するライトが好きで、それが玄関口や庭などに具合良く配された家だと、昼間に何気なく通り過ぎていったのに、夜になるとこんなに素敵な家が近所にあったのかと改めて思い直すことも結構あります。

宵闇が段々と深くなってきました。すると、長男が突然家に帰ると言い出しました。もっとライト見ないの? と聞いても、もういいと言います。どうも、段々とあたりが暗くなっていって心細くなっているようで、足の歩みがどんどん速くなり、焦りを感じさせます。

ここで、また私のスパルタン・ソウルが湧き上がってきて、敢えて家の方向を教えないようにしました。「お父さん、帰り道わかんなくなっちゃった。」と、とぼけました。長男が遠回りになる道を行こうとしても、止めません。焦りが最高潮に達し、抱っこしてと言ってきましたが、当然聞き入れません。

もちろん車が通りそうな道に駆け出して行こうとした時は制止しましたが、長男の方向感覚を信じて、自由に歩かせました。そして、いつも保育園に通っている道に達したことがわかると、今までの焦りが嘘のように、そこからは自信を持って歩みを進め、見事家に辿り着きました。

逢魔時というのは、やはり人を不安にさせる時間帯のようです。

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