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リモートミーティングを円滑に行うためのちょっとばかりシュッとした方法

リモート会議で苦労すること

引き続き新型コロナウィルスの影響が続き、この3週間ほどは公共施設や学校などの教育機関が軒並みクローズ。大規模イベントの開催についても政府や自治体が自粛を呼びかける中、楽しみにしていたライブコンサートやイベントが中止・延期になり寂しい思いをされている方も多いことでしょう。
日々のビジネスにおいても同様で、多くの企業は感染予防や抑止のためにリモート勤務の推奨や社外の人たちとの接触を禁止するなど、わたしたちの働き方が本当の意味で変化を起こし始めている実感をひしひしと感じます。
人によって、企業や業界によってはこれまでもリモート形式でコミュニケーションを行うことは日常茶飯事だったかもしれませんが、それらのワークスタイルが日常的でなかったり、慣れてはいないひとにとっては昨今のリモート環境での仕事の進め方に戸惑っている方も少ないかもしれません。
そのような方々向けにリモートで円滑にミーティングを行ったり、中にはワークショップまでオンラインで行うためのテクニカルなノウハウはいろいろな熟達者有志の皆さんが紹介くださっています。
これとか、これとか、これとか。
便利なツールの使い方や操作方法、安定して使うための設定の妙など、とっても役に立つ情報を提供くださっている方がいて、ミーティングの大半がオンラインになりつつある中、ありがたい限りです。
これらの役に立つ情報の多くがツールや機材環境に関するテクニカルなTipsや、参加者の心理的安全性をどのように維持するか?といった情緒的な配慮についての大変有益なナレッジを広くシェアしてくださっているのですが、意外に取り扱われていないことがあるように感じました。
それは、ツールやテクニカルなことではなく『そもそも会議を円滑に進めるためのプロトコル』について、です。
ぼく自身、人並み以上に長い間リモートでのコミュニケーションを日常的に日々の仕事や生活に取り入れている経験がある中で(そうせざるを得ない状況もある)物理的に距離があり、場合によっては通信環境の不備などで参加者間におけるインタラクションのタイムラグなどで心理的な距離感も完全には拭えないリモート環境の中、少しでも円滑に議論や対話を有意義に進めるための試行錯誤をしてきました。

スマートな会議のために必要な3つのこと

リモートに限らず、円滑な会議のために留意することは、

1.事前の準備
2.プロトコルの明確化
3.やさしさと残りの半分

の3つではないかと考えています。

1.事前の準備

対面での会議が日常的に行われる場合、ついついその場の空気で話を始め、会話の中で議論すべきことを探り会える、いわゆる『阿吽の呼吸』が使えるため、事前の準備を怠りがちです。
しかし、リモートでのミーティングを経験された多くの方が思いの外感じるのは、参加者がめいめいの事前のコンテクストを引きずった状態でミーティングに参加してくる、ということではないでしょうか?
在宅であればさっきまで家事をしていてその流れで、という方もいるでしょうし、全然別の話題のリモートミーティングを直前に終えてアクセスリンクを切り替えたばかりのひともいるでしょう。(そして往々にして何本もそのようなリモートミーティングが連続している)
リモートミーティングとリアルなミーティングの大きな違いは、ミーティングに至るコンテクストを同調させていく時間とインタラクションが極めて少ないことです。
例えば参加者同士がオフィスの通路で出会い、会議室への道すがら話をしながら移動する時間や、会議室に入ったあと全員が揃うまで何の気なしに行う雑談など。
そのため、通常以上に円滑な会議開始のための準備が欠かせません。
何を準備するか?というと、

・アジェンダ
・ゴール
・ムード

です。
アジェンダ(議題)についてはおそらく通常のリアルな会議の際にも事前もしくは会議開始時に提示、共有されている方もいらっしゃると思いますし、非常に基本的なことでありながら、驚くほどアジェンダの明文化と共有がなされず始まる会議は少なくありません。
今日は何について話すのか?それぞれの議題に使えるおおよその時間はどのくらいか?それぞれの議題の優先度は?といったことが事前に明示(つまりは文字として掲示されているということです)されているか否かは、意外なほど会議の質を左右します。
場合によっては、会議の最初に座長が明示するアジェンダを参加者で数秒間程度眺めて、改めて優先度を議論する時間を設けることも物理的距離を超えて参加者の参加意識をシンクロさせていくのに有益かもしれません。

次にゴールです。設定されたアジェンダには必ず何かしらのゴールが必要となります。
何かを決めるという結論が適切なゴールである議題もでしょうし、特に結論は必要としないが時間の許す範囲で発散的に議論して情報共有しておくことがゴールとして妥当である議題もあるでしょう。
重要なことは、『この議題は今日の会議の終了時にどのように扱われているべきか?』について、参加者が同じ意識を持っておくということです。

そして3つめはムードです。リアルに顔を合わせない状態で、いい感じに参加者全員が会議に没頭できる状態をつくり、リラックスしたムードでざっくばらんに活発な議論をしつつも、きちんと設定されたゴールまで議題を持っていくためには、対面以上に雑談や笑いを通して共感できる状態をつくる、一見ムダに思えるコミュニケーションの時間すら予めアジェンダに盛り込んでおくことも重要です。
しばらくぶりのミーティングであれば、会議の最初にお互いの近況を一言二言交わしあうことからゆるやかにスタートするのも有益でしょう。

2.プロトコルの明確化

リモートでの会議の場合、リアル開催に比べて互いの表情や対話の空気のようなものが読み取りづらいです。
(これはいくら映像や音声の解像度が向上してもそうそうは変革しないと思います。VRのような没入型インタフェースが一般的になったり、呼吸や体温のような生理情報までが再現できるようになれば話は変わるかもしれませんが)
それほど、通常顔を突き合わせ、同じ空間で物理情報を介して行っている会議では(特に日本人は)言葉では明示できないハイコンテクストな情報を互いにやりとりしているのです。
ひとしきり議論が盛り上がり、みんなが否定意見を出さずに徐々に発言が減ってきているということは『異論なし』ということだな、となんとなく察して合意とする、ようなことです。
しかしリモートの場合はそのあたりの”空気”のようなものが読み取りづらい。
だからこそ、なおさら『いま話しているのは、どういう状態か』をわざわざはっきりさせる必要があります。
会議文脈で行われる発言は、大きく分けると下記の3つしかありません。

・提案
・議論
・意思決定(判断)

細かい変化形はあっても、あらゆる発言・会話はほぼ全て上記3つのいずれかに分類されます。
言い換えると、これら3つのうち、今はどのモードか?を参加者が互いに明確に意識することが必要になります。
そうしないと、無用に時間を使いすぎて結論に至らなかったり、何について議論しているのかが不明確な状態になる、といったことが起こります。
その結果、会議の生産性はさがり、なんとなく消化不良になりよいムードも生まれません。
リモート会議のときこそ、「今は提案のフェーズ?」「そろそろ意思決定のフェーズだから決めないとね」といった確認をお互いにしながら、会議の現在地点を見失わないよう配慮しあうとよいのではないでしょうか。

3.やさしさと残りの半分

ここまでどちらかというと会議のルールのようなことをつらつらを書きました。
結びとして提案したいのは「やさしさ」です(笑。
なんとかというおくすりの半分はやさしさでできているそうですが、会議の質の半分もやさしさで決まると思います。
互いの状態や表情、考えていることや体調などをリアルに感じづらい環境の中であっても、よいムードをつくり、アジェンダセットとゴールを共有し、互いにプロトコルを尊重しながら、参加者みんなが目指すゴールに向けて限られた時間の中で有意義な道のりを進んでいくためには「やさしさ」が欠かせません。
たとえば『ちょっとお疲れのようですけど体調どうですか?心配です。』とか『久しぶりにお話できて嬉しいです!』のような、対面会議の際には照れくさくて言えないことをあえて言葉にして言ってみると、お互いの存在をいつも以上に大切に感じながらよい対話ができるのではないかと思います。
それを後押ししてくれるのがやさしさの残りの半分であるお互いに対する『敬意』ではないでしょうか。(ぼくの勝手な考えです)
特に日本人はシャイな方が多いので、相手に対するリスペクトをわざわざ言葉にして、口に出して言うことを野暮だとする風潮があるように感じます。
お互いに言葉にせずとも敬意を感じ合うことができる文化的能力は素晴らしいものだと重々わかったうえで、物理空間や身体知の不足を補って余りある信頼空間をつくるために、あえて敬意を具体的に表現することを勝手にオススメしたいと思います。

感染症の沈静化にはまだしばらく時間がかかるようですし、おそらくリモートでのコミュニケーションを主軸とせざるを得ない状態もまだまだ続くでしょう。
でも、昨今の不便な状況を憂いていても楽しくないので、この機会にリモートであれ、リアルな場であれ、これまで以上によい会議を行っていくためのよいトレーニングの機会を得られていると捉えましょう。
対して役に立つナレッジではありませんが、いくらかでもそのトレーニングの一助になると嬉しいです。


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