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きょうの一文2

「ほかの語り方でほかのストーリーを語らないでぼくが語るようにストーリーを語るいくつかの理由」
(ジョン・バース「金曜日の本」筑摩書房 1989年 初版第三刷 p.1)

「金曜日の本」は、ぼくが大学生の頃に買って夢中で読み、今も時々ごそごそと出しては読み返すエッセイ本。上の一文は一エッセイの一タイトル文です。バースさんの本を読んでいると、入れ子構造=無限への、憧憬というか、快楽というか、その喜びがありまして、それをバースさんがかき混ぜてみせるものですから、読者はその渦の中へ衝動的に飛び込みたくなります。うずうず。「物語の中の物語の中の物語、ただそうすることのすばらしさのために物語られたもの。」(p.13)彼の憧れの古典作品とはそういった本が対象なのです。
「ついて」について語る作家。ポストだかプレだとか
言われたり無視されたりする作家のこの本には、軽やかながらも、ちゃんと地に足ついた「知的軽蔑」が素描されてあります。

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