草ww破滅部活動日記♯80日目 明日への生き方
時刻は14時半、メンバーたちは部室で残りの時間を考えながら練習をしていた。
〈椿〉ふう…… 中々上手くなったな
〈要〉そうだな、今何時?
〈道久〉いまは…… 14時40分
〈一星〉やばいな、そろそろ行くか?
と、一星は流れる汗をタオルで拭きながらみんなに聞く。
〈椿〉んー そうだな。楽器も持って行かないとな、準備して、体育館に行こう
椿たちは体育館に行く準備をする。各々楽器を持つ。体育館にはすでにドラムはあるので、一星はスティックだけ持っていく。
部室に出る間際、椿はメンバーに話す。
〈椿〉みんな聞いてくれ、今回のこの演奏をするに当たってこのバンド名を考えないと行けない。そこで、おれは考えた。「The sound hertz」だ、どう?
〈一星〉いいバンド名じゃないか、心の音だろ?
〈椿〉そう
〈要〉いいね! これなら伝わりそう!
〈道久〉うん! 素晴らしい名だね!
〈椿〉よし行こうか! The sound hertz!
椿たちは元気よく部室から飛び出した。
体育館では前の軽音部が演奏をしていた。この軽音部の次が椿たちの出番となる。4人は舞台裏に入る。
すると、進行役の田代がいた。
〈田代〉やっときた!? 遅い! あと5分で出番よ。バンド名は?
〈椿〉ごめん! 遅くなった。バンド名はこれ
と、椿は1枚の用紙を渡す。
〈田代〉うん、いいバンド名ね。わかった、じゃあ次はこのバンド名をアナウンスする
そこに軽音部が終わる。
〈田代〉次はあなた達の番ね、準備はいい?
〈椿〉ああ!
軽音部の人から、「頑張ってね」と言われた。
椿たちは場所に着く。ギター&ボーカルは要、キーボードは道久、ドラムは一星、ベースは椿。
真ん中に要、左に道久、奥に一星、右に椿がいる。
目の前は緞帳と呼ばれる舞台と客席区切る舞台幕がある。
もう少しだ、もう少しで舞台幕が挙がり、演奏が始まる。メンバーは緊張をしていて、深呼吸をする。
時間になり、アナウンスが流れる。「お待たせしました。次のアーティストは突如参加した友達想いのバンド、The sound hertz!」。
そして、舞台幕が徐々に挙がった。その瞬間、要は静かにギターを鳴らした。演奏が始まる。
お客さんの中には一般人も混ざっている。2人のスーツを着た男性は真剣に曲を聴く。
その頃、スカイラーは部屋にいた。徐々に心臓の鼓動が早くなる。すると、スカイラーは部屋を飛び出して、場所へ向かった。
体育館のほうでは、要がギターを鳴らしてまずはひとりで演奏をする。
綺麗な音色だ、風のように観客の心の隙間に入っていく。そして、最後にマイクに向かって歌う。
〈要〉きみの声が聴こえてくるよ……
そう、優しい声でゆっくりと歌った。そして、2曲目に入る。
まずはの一星のドラムからから始まり、要のギターから椿のベースが入る。そこからすぐに要がリズム良く歌う。
〈要〉頼みもしないのに朝はやって来る 窓を開けてちょっと深く深呼吸♪ ……
要は囁くように歌う。観客さんはなぜか要の目を見てしまう。凄く優しくて、繊細で、聴いてる人を虜にするような目、そして声だ。あの男らしいさがある要の歌声とは思えない。
そして、道久のキーボードが入る。
そこに体育館の扉が開く。入ってきたのは「スカイラー」だ。どうやら間に合ったようだ。スカイラーはその扉の近くで曲を聴く。
曲を聴いて驚く。今、要が歌っているのはスカイラーが好きと言っていたkenoの「おはよう。」なのだから。その曲を聴いて泣きそうになるスカイラー。
もう、曲も終盤だ。
〈要〉肩を組んで君と手を繋いで恋人だったり友達でいたいから
要は瞳を閉じて歌う、最後瞳を開けて歌う。その瞬間、要は来てくれたスカイラーを見つけた。
ちゃんと伝わるように、話しかけるように、心から歌う。
〈要〉おはようって言ってまた夢をみせて自然なその生き方でいいからさ♪
最後の「自然な生き方でいいかからさ」の言葉でスカイラーは涙を流した。
〈要〉ありがとう
曲が終わり、この空間は拍手という花が多く咲く。
文化祭最終日、素晴らしい一日で終わることが出来た。
スカイラーには言葉は届いたのだろうか──────
成田空港第一ターミナルにて。
〈道久〉元気でねスカイラー
〈一星〉あっちでも頑張れよ!
〈スカイラー〉ありがとう
スカイラーは決心してオーストリアに行くことにした。やっと前へ進むことが出来たのだ。
この日はスカイラーが飛行機に乗るので、メンバー全員で見送りにきた。
〈要〉スカイラー、ありがとうな。
〈スカイラー〉なにが? こっちがありがとうよ
〈要〉いや…… そうじゃなくて…… えーと
〈椿〉まったく、恥ずかしがり屋だな
〈要〉うるせえな! とにかく! ありがとな、スカイラー友達になってくれて
〈スカイラー〉親友でしょ。ありがとう、もう行かないと!
〈椿〉またな! スカイラー!
スカイラーは飛行機に乗る。乗って1時間後に飛び立った。
それを見送る椿たち。
スカイラーは飛行機の中から外を観ながら言う。
〈スカイラー〉ありがとう、大切な場所を作ってくれて
この後、オーストリアで厳しい練習に耐えてビオラ奏者として名を馳せるようになった。
ー 80日目 明日への生き方 ー つづく。