映画『卒業』ラスト考

  1967年制作の「卒業」。言わずと知れた、アメリカンニューシネマ代表作の一つ。サイモン&ガーファンクルの名曲もあまりにも有名ですね。
  ラストで、ベンジャミン(ダスティン・ホフマン)が結婚式中のエレイン(キャサリン・ロス)を教会から連れ去るとき 閂代わりに十字架を扉に差し込んで追っ手を阻みましたね。あれ、凄いシーンだとつくづく思います。他ならぬ十字架を「道具」として、しかも乱暴かつ「インモラル」な行為の道具として、ちょうどいい物があったとばかり使う。「ピューリタンが造った国家」たることがアイデンティティでもあろう、敬虔なクリスチャンが多数いる国の映画で。
  詮ない空想ですが、もしもあの教会がカトリックだったとしたらとフト思います。十字架に磔されたキリストが目に入って 少なくとも躊躇したのでは?と。まあ、プロテスタントたることがあのストーリーの「言うまでもない前提」なのでしょうけど。
  「不倫の中でもとりわけ不倫」と言えそうな不倫、そして教会で結婚式中の花嫁を〜。という「卒業」のような映画があり得たのは 既成秩序への異議申し立ての嵐が世界で吹き荒れた60年代後半だからこそとも言えるのではないでしょうか。