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海の資源を守る 法と科学とシステムな視点


今年は、サンマが高くて小さい…。
不漁だそうですね。
いずれは、サンマが高級魚になるかもしれない。
というお話も、昨今の気候の異常さを思うとリアルに聞こえる

さて、ピックアップ記事(12月1日)

新漁業法、きょう施行
過剰漁獲に海洋環境の変化が加わり、昨年は漁業生産が過去最低に落ち込んだ。これはピークだった1984年の3分の1。政府はノルウェーなどの漁業先進国が取り組む厳格な管理を浸透させ、資源と漁業生産の回復をめざす。
新漁業法では、多くの魚をマグロのようにきめ細かく管理して「魚も漁師の収入も増やす」を狙う。食卓に並ぶほとんどの魚の、生態系や資源量、季節海域ごとの漁獲量など、科学者による水産資源調査を強化。また、国の漁獲可能量制度の対象魚種を増やす。併せて、激変する自然環境への対応や、サンマ・イカなどを乱獲する近隣国・地域との国際的な漁獲量管理も同時に進める必要がある
(朝日新聞 要約)

「魚も漁師の収入も増やす」

漁業と言うと、私は2つの問題が頭をよぎる

一つ目が、海の資源の減少
これは記事に書いてある通り。
⇒ 過剰漁獲に海洋環境が原因と考えられる

2つ目が、漁師のなり手不足
これが、「漁師の収入を増やす」というところにつながっていくのだろうと思います。
この漁師のなり手不足については、システム思考のループ図「問題のすり替わり」で扱ったことがあり、そちらをシェアしておきましょう。

ループ図_漁業 [2]

漁師のなり手不足⇒海外研修生で人材不足を解消⇒日本人の漁師が育たない(学んだ時はもうちょっと深かった気が…自分で作ってみました)


漁師の技術やセンスを身に付けるには、十数年(二十年だったかな?)もかかるので、人材不足を対症療法的に海外研修生に頼ったがために、根本解決がなされず同じ問題が…もしくは当時よりはるかに深刻になった問題として出てきているわけです。

新聞記事でのお話もまた、漁師の収入を増やす=漁師の魅力をアップさせる=人材を集める
という戦略なのでしょうけれど、

さて、これも対処療法のような気がしているのは私だけでしょうか。


さて、今日の新聞記事に戻りましょう。

資源と漁業生産回復の為、厳格な管理を浸透させようとする新漁業法

見つけたのはこちらの本

イワシと気候変動ー漁業の未来を考える 川崎健

この中に、太平洋のマイワシ漁獲量変動から見出された
レジームシフト理論について記述されていました。

レジームシフトとは、

「大気・海洋・海洋生態系から構成される地球表層システムの基本構造(レジーム)が数十年間隔で転換(シフト)すること」(広辞林)

分かりにくいので、こちらの定義も紹介

「大気-海洋-海洋生態系から構成される地球環境の基本構造が、数十年の時間スケールで転換することを定義したもの」
(さかなだまーと)

どういうことかと言うと、
魚さんたちの政権交代みたいなことが約10年間隔くらいであるというのです。
マイワシの捕獲量がグンっと下がる
そういったとき、「獲りすぎたからだ!!」(乱獲)と考えがちですが、
いやいや、そうではありませんよ。
これは、生態系機能や構造の変化。約10年ごとに起こることなんですよ。と。

なので、たった1年2年の変化を
「これは大ごとだ!」と、いちいち騒ぎ立てるのは、逆に生態系を壊してしまう。

起きていることだけに目を向けず、グッと引いてみて全体視する。
世の中は、世界は、私たちが知らない大きな力でシステムが作られてつながっているもの。

「本当にそうなの?」とクリティカルに考え、多角的に見てみるのは大事ですね。

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引用:http://www.jsfo.jp/contents/pdf/77-sp/77-sp-23.pdf


で・す・が、漁獲量の増減はレジームシフトの為でもあるけれど、
やはり、乱獲や気候変動は、そのナチュラルなレジームシフトを乱すと言います。

1,2年の事でさわぐのはナンセンスなことですが、

《資源を枯渇させることなく漁業を継続するには、対象資源の変動法則にのっとってその時々の生産力の範囲で漁獲しなければいけない》
イワシと気候変動ー漁業の未来を考える 川崎健


海の資源を守るためには、海洋学だけでなく、気候学、物理学といった研究と、法学、政策学といった両面から、環境保全に取り組んでいく。
しかも世界全体で。


さぁ、科学の発展と共に壊してきた自然と地球の調和。
人間の存在をネガティブに捉える考えはありますが、

私は、その愚かさも受け止めつつ、人間の知恵を集結させて解決していくことに希望を持ちたい。

(余談:と、書きながらこれまた思い出したのが 東野圭吾の夢幻花。
あの本も確かこんなメッセージがあったような気がする、確か…)

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