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日本の学力って下がっているの?本当のところどうなの?

このCOVID-19でつくづく思ったのは、私たちに届けられているデータについて。

データからどこが切り取られ、何を意図して私たちに届けられているか。
そしてそれによってどれだけ私たちの考えを左右しているか。

さて、今回の注目記事は、このデータの見方について示唆を与えてくれた記事。

”12月9日
TIMSS 小4「理科楽しい」でも平均点は低下”
※TIMSS:小学4年と中学2年が対象の国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査

今回、3つの新聞(日経・中日・朝日)と同じテーマの記事を見たのですが、面白いことを発見
データの読み方によって訴えるものが違う!

この記事については、
記事の内容からの問いを立てたお話と、データの切り取り方という2つに分けてお伝えしていこうと思う。

今回の記事は、データの切り取り方。

1.データをどのように見るか

この関連記事の見出しを見てみましょう。

その1
小4「理科楽しい」でも平均点は低下
主旨:意欲と学習の成果を結び付けられる教育が大事である
その2
記述問題で正答率低下「言葉の力落ちた」指摘
 主旨:日常生活の言葉の力が落ちている
国語など他教科との連携がますます重要。 教員の専門性が課題。
デジタル導入、環境整備が他国より遅れている。
その3
小中の理科 順位下げる 学習意欲の低下なお課題
日本の国際順位は、全てで国際平均を上回る。前回の調査に引き続き5位以内をキープ
学習意欲を問う調査は、国際平均を下回る傾向
小4理科のみ平均を上回る(ほかは平均以下)

どのデータも学力の低下・課題を指摘しているところは共通。
ただ、意欲については、1と3で、上がっている、下がっているという真逆。
内容を見れば、どちらも間違っていないことが分かりますが。

1は、前回調査との比較
3は、国際比較

何と比べるか? で、受け取るものが違いますね。

2.学力低下って本当?

この記事をさらに深堀しようと見つけたのはこちらの本

学力を育てる

「学力を育てる/清水宏吉」

この本では、学力低下って本当なの?
というデータを出してくれています。

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第1回の検査では、日本が1位
2回からは順位を落としています。

これだけを見ると、学力が低下した!!
と思うわけですが、このテストの参加国数を見ると、日本が順位を落とした時から、シンガポール・韓国・その次からは香港が参加している!

何が言いたいかというと、学力が下がったのではなく、理数が得意な国がこのTIMSに参加したから順位が下がったのではないか? てこと。

もし、シンガポールが初めから参加していたら??? 実は最初から日本はこの順位だったかもしれない。

シンガポールより下の韓国・香港・台湾・日本のアジア勢はそんなに差が開いているわけでもなく、そんなに学力が低いわけではないよ、とも言える。

そして、この本ではこんなことも言っています。

そもそも学力低下論争の発端は、「国立大学の数学・理科の学力低下」という大学教員からの告発にあったわけであるが、この一部の大学生の問題を、小中学生の全般的な学力低下に結びつけて論じる姿勢は乱暴なものといわらるを得ない  (学力を育てる P73)

【学力が低い、学力が下がっている】という前提でデータを見れば、どんなデータもそのように見えてくる。

自分がどんな前提でデータを見ようとしているのか、もしくは見ているのか、メタな視点で確認することがとても大事ですね。

※蛇足ですが…こういう前提に合ったようにデータを見ようとすることを「確証バイアス」というんでしたっけ?(ちょっと違う?)

2.順位・比較の使い方


なんにせよ、ただ、順位を見て勝った負けたなどと言う使い方は大変バカらしいことです。
大事なのは中身。

定期テストでも、順位や平均点との比較を見るだけでは、そこから学ぶことはできません。
ついついそこに一喜一憂しちゃうけど、テストは、今後の課題を明らかにするためのもの。

だからちゃんと中身を吟味することが大事。
今の自分の課題は、基礎ができていないの? 応用が苦手なの?
だとしたら、何をしなければならないのか。
(って数学の先生が教えてくれました)

データを見るとき、正しい気付きを得て、有効な行動を考えることが大事ですね。

結論、行動変容つなげるためにデータはあるのだ。

行動変容が伴わないのならば、それはただのお遊び、考えているふりなのかも。

3.日本の課題は?


では、単なる比較で喜んだり悲しんだりするのではなく、課題を見てみると…日本の課題は、記述、ITだそうです。

それが課題ならば、記述式のテストを増やそう! とかいうのは、あまりにも早計で対症療法的。

私が着目したいのは、このデータで「意欲」を測っていること。

やっぱり「意欲」は学力の伸びにつながっていくということを私たちは感覚的にもわかっている

学力を伸ばすためには、好奇心と意欲を引き出すことがこれからの課題。
(そもそも「学力」をなぜ伸ばす必要があるのか? 何のために? という前提を疑う話はまた別で追究してみようと思う)

「意欲」を扱うことは、根本療法のように思います。

では、その意欲はどのように??
答えはすぐに出ませんが、では、今「意欲」を下げているものって何だったのか?
過去の振り返りが役に立つように思います。

「教育」に関する実践、失敗例はたくさんあるでしょうし、個々の中にもヒントがあるように思います。

みなさんは、学習に対して意欲があったとき、無かったとき、どう違うでしょう?

この話の続きは、
この記事を読んで感じたことの
もう一つ
「学習意欲と学習成果にどのような因果関係があるか?」
「あるのならばどのような意欲を持たせる働きかけができるか」

という問いを立てについて書きますね。

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