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カール・ロジャーズが遺した言葉(身体感覚の重要性と生命の実現傾向)

カール・ロジャーズは、アメリカ合衆国の臨床心理学者です。来談者中心療法という、カウンセラーではおよそ知らない人はいない方法論を創始しました。1982年のアメリカ心理学会によるアンケート調査「もっとも影響力のある10人の心理療法家」では第一位に選ばれたほど、一時期のカウンセリング界に大きな影響を与えて人物です。

来談者中心療法というアプローチは特に日本で根付いていると言われます。確かに来談者中心療法は禅の精神とも通じる部分がありますし、日本で受け入れられやすい気はします。私もカウンセリングはロジャーズの勉強から入りましたし、今でもとても思い入れがある理論家・実践家です。

ちょっと今日は断片的なのですが、私が好きなロジャーズの言葉をいくつか引用して紹介したいと思います。

1.直感は知性よりも信頼に値する

私が長い間かけてわかってきたことのひとつは、ある活動が価値があるとか、するに値すると『感じられる』時は、それは実際にするに値する、ということです。言い換えると、私がある状況を全有機的に、つまりみずからの全心身を使って感じ取ることの方が、私の知性よりも、もっと信頼に値する、ということです。

ロジャーズは、自分に与えられる「実感」を意味あるものとして大切にし、それをセッションの指針とする重要性を訴えました。この考えは私が主体的真理を大切にして生きることを提案するニュアンスとほぼ同一です。

これはもう、ロジャーズが提唱するような傾聴を深いレベルで実践している方であれば説明はいらないほど実感されていることでしょう。

実は論理的に説明ができる事柄に、あまり人生の真実は含まれていないのですよね。そうではなく、自分が全有機体的に、身体感覚を通じて感得できる「言葉にできない何か」にこそ、人生の真実、主体的真理、自分が求めているあり方は隠れているのですね。

上記を踏まえると、コーチングとは端的に言えば、クライアントの身体感覚を頼りに主体的真理を発掘する作業と言えますからね。

2.生命には実現傾向が備わっているという仮説

内的な刺激があろうとなかろうと、環境が好ましかろうと好ましくなかろうと、有機体の行動は自らを維持し強化し再生産する方向に向かっています。これが私たちが<生命>と呼んでいるプロセスの本質です。

この例としてロジャーズは少年時代に見た地下室に貯蔵されていたジャガイモの例を出します。自宅の二メートル地下に置かれているジャガイモが、小窓から漏れてくる光を頼りにニョキニョキと芽とツルを伸ばしていく様を見て、

「生命ってスゲェ!!」

と驚嘆したらしいです。この例を引き合いに、ロジャーズは以下のように述べました。

<生命>は、たとえそれが開花することがなくても諦めません。おそろしく歪んでしまった人生を生きているクライアントと面接しながら、・・・私はよく、あのジャガイモの芽を思い出します。彼らはあまりにひどい状況を生きてきたために、その人生は異常で、歪められ、人間らしくないように思えます。けれどその基本的な志向性は信頼することができるのです。彼らの行動を理解する手がかりは、もちろん自分に可能なやり方は限られてはいますが、成長と生成にむかってもがいているということです。

この潜在する実現傾向は、私にとって重要な仮説になっています。どんなに虐げられた存在であっても、実現傾向だけは絶えることはないですし、それは頼りにすることができると思うのです。

3.自分自身への共感が自分を癒す

私が自分自身を受け入れて、自分自身にやさしく耳を傾けることができる時、そして自分自身になることができる時、私はよりよく生きることができるようです。言い換えると、私が自分に、あるがままの自分でいさせてあげることができる時、私はよりよく生きることができるのです

ロジャーズの考える自分らしい生きかた(否定形表現)

1.偽りの仮面を脱ぎ、あるがままの自分になっていく
2.「こうあるべき」という「べき」論から自由になっていく
3.ひたすら、他人の期待を満たし続けるのをやねる
4.他人を喜ばすため、自分を型にはめるのをやめる

ロジャーズの考える自分らしい生きかた(肯定形表現)

1.自分で自分の進む方向を決めるようになる
2.結果ではなく、プロセスそのものを生きるようになる
3.変化に伴う複雑さを生きるようになる
4.自分がいま、何を感じているかに気づくようになる
5.自分のことをもっと信頼するようになる
6.他の人をもっと受け入れるようになっていく

他者からの期待、自分の思い込み、仮面をつけていた「偽りの自分」から離れ、その時々の自分の気持ちに従いながら、人生というプロセスを生きるようになっていくのが「自分らしい生き方」とロジャーズは言います。まったくその通りだと思いますね。

※これらの言葉、全てこちらの書籍から引用しました。名著ですから是非読んでみてください。


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