垂水 隆幸

ベンチャー、スタートアップへの組織コンサルティング、事業開発支援を手掛ける傍ら、プロコ…

垂水 隆幸

ベンチャー、スタートアップへの組織コンサルティング、事業開発支援を手掛ける傍ら、プロコーチとして企業トップ、役員クラスを中心にエグゼクティブコーチングを提供 コーチング.com㈱ 代表取締役 元レバレジーズ㈱ 取締役 経営企画室長 元㈱経営共創基盤(IGPI)ディレクター

最近の記事

「私」の概念を再編する

はじめに「私とは何か」という問いは、人類が古来より追求してきた根本的な疑問である。この問いは、哲学、心理学、宗教など様々な分野で探求されてきたが、近年の科学的発見と新たな哲学的枠組みは、この古くからの問いに新しい光を当てている。本稿では、「意味フィルタ・パラダイム」という概念的枠組みを通じて「私」の本質を探究し、同時に自己意識の特別視がもたらす苦悩という問題にも焦点を当てる。 意味フィルタ・パラダイムの概要意味フィルタ・パラダイムは、人間の認識プロセスを「意味のフィルタ」を

    • コーチング業界への批判(的考察)

      はじめにコーチングは、個人や組織の潜在能力を引き出し、目標達成を支援する効果的なアプローチとして広く認知されている。しかし、その実践においては、クライアントの固有性よりもコーチング手法や流派のフレームワークを優先する傾向が見られ、これが効果的なコーチングの障害となっている可能性がある。本稿では、この論点について熟考するためにまず「意味フィルタ・パラダイム」という哲学的枠組みの概要を説明し、次にこの観点からコーチング業界の現状を批判的に考察したい。最後に、意味フィルタ・パラダイ

      • スピリチュアリティを意味フィルタ・パラダイムで解釈する

        はじめに人類の歴史において、宗教やスピリチュアリティと科学は世界理解の二大支柱として機能してきた。時に対立し、時に調和を模索してきたこの二つの領域は、人間の認識と行動のかなりの根幹を形成している。私が提唱している新たな哲学「意味フィルタ・パラダイム」は、この両者を包括的に理解し、新たな視点から宗教と超越的概念を捉える可能性を提示している。本稿では、意味フィルタ・パラダイムを通じて超越的概念と宗教をどのように理解できるか、そしてそれが私たちの世界観にどのような影響を与えうる

        • 意味フィルタ・パラダイム~新しい人生哲学

          我々は、かつてない速度で変化し続ける世界に生きている。テクノロジーの急速な進歩、情報の爆発的増加、社会構造の劇的な変化—これらは我々の日常生活に大きな影響を与え、同時に混乱と不確実性をもたらしている。 このような時代に、多くの人々が人生の指針を求めて右往左往している。成功法則、ウェルビーイング、マインドフルネス、共感資本主義—次々と登場する新しい概念や理論が、行き詰まりつつある(と巷で言われている(苦笑))資本主義社会のオルタナティブとしてもてはやされている。 しかし、こ

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          「空」を希求する仏教/「空」から脱出するレヴィナス

          人間の存在とそれに伴う倫理的責任の問題は、古来より哲学や宗教の中心的なテーマであり続けてきた。本記事では、東洋思想を代表する仏教と、20世紀の西洋哲学者エマニュエル・レヴィナスの思想を対比しながら、人間の存在と倫理について概観する。両者は一見すると正反対のアプローチを取っているように見える。だが、その対比を通じて人間存在の本質と倫理的生の意味について、新たな洞察を得ることができるだろう。 存在の根源性としての「空」と「イリヤ」仏教とレヴィナスの思想は、ともに存在の根源的な状

          「空」を希求する仏教/「空」から脱出するレヴィナス

          合理的な完璧主義/非合理的な完璧主義

          どこの職場でも完璧主義な人はいる。職人気質でこだわりが強く頼りになる存在だ。完璧主義者の多くは、 仕事の質 × 努力の投下量 = 満足度 という暗黙の方程式に基づいて仕事をしている。一見当たり前に思えるこの考え方だが、完璧主義者のこの式の解釈にはいくつかの問題が見受けられる。 完璧主義者の負の側面として、完璧主義者は往々にして仕事を抱え過ぎ、他人に任せることができない。それによって組織全体の生産性向上に貢献できない。常に時間に追われ、余裕がない状態に陥りがちだ。これらの

          合理的な完璧主義/非合理的な完璧主義

          「思考のダイエット」で合理的に生きる

          コーチングを受ける方々の中に、繊細な性格ゆえに悩みを抱える人が時折見受けられます。ちょっとした周囲の反応や表情に過敏に反応し、様々な思惑を読み取ってしまう。そして、その読み取った情報を基に、(それは自分の中で構築された妄想にも近くなってしまうのですが)ネガティブな想像を膨らませ、さらに思い悩んでしまう。こうした思い悩む性格自体にも思い悩んでしまうことすらあります。 職場は複数の関係者と共同して進めるものですから、上記のように自分を刺激する情報を感知する機会に溢れています。S

          「思考のダイエット」で合理的に生きる

          自分の熱源に基づくキャリア設計

          私たちは誰しも、仕事に対して情熱を持ちたいと願っている。しかし、現実には多くの人が自分の仕事に情熱を感じられずにいる。それは、自分の「熱源」を見出し、それに沿ったキャリアを設計することの重要性が十分に認識されていないからかもしれない。 ここで言う「熱源」とは、個人を情熱的に突き動かす源泉のことを指す。それは人によって異なり、ある人は人助けに情熱を感じ、ある人は新しいものを生み出すことに喜びを感じる。この熱源は、特定の「共鳴パターン」、つまり環境との相互作用の型と結びついてい

          自分の熱源に基づくキャリア設計

          人には固有の熱源がある

          私たちは誰しも、心の奥底に「熱源」を持っている。それは、自分を情熱的に突き動かす源泉であり、生きるエネルギーの根幹をなすものだ。しかし、この熱源は常にフルスロットルで稼働しているわけではない。一人ひとりに固有の熱源には、固有の発動条件としての「共鳴パターン」が付随しているのだ。 共鳴パターンとは、熱源が活性化するために必要な、環境との相互作用の型のことを指す。ちょうど、ある特定の周波数の音に反応して共鳴する音叉のように、熱源はそのような共鳴パターンに合致する特定の状況や条件

          人には固有の熱源がある

          幸せな人生とは。

          幸せな人生とは何か。この問いに対して私は明確な答えを持っています。 「圧力に抗い、乗り越える喜びとして人生を捉える」ということ。それが幸せな人生であるという考えを持っています。 私は武術が趣味です。武術とは自分に危害を加えようとする敵の圧力にどう抗うかをテーマに、古来より様々な技術体系が築き上げられてきました。 武術家は厳しい訓練を通じてこの体系を型として学び、これまた厳しい対人訓練において、時に傷つきながら技術と胆力、体力を鍛え上げていきます。 体格に恵まれなかった

          幸せな人生とは。

          コーチは”思考の偏り”をどう扱うべきか

          コーチングにおいて、クライアントの抱える思考の偏りに気づき、それに適切に介入することは非常に重要だ。クライアントを苦しめている人生観や価値観に真摯に向き合い、その偏りに気づくきっかけを与えることがコーチの役割だと言えるだろう。 ただし、その際にはタイミングが肝心だ。どんなに適切な言葉や示唆であっても、クライアントの心が開かれていなければ、その言葉は受け入れられず、徒労に終わってしまう。コーチは、クライアントの心の状態を見極め、ドンピシャのタイミングで気づきを促すことが求めら

          コーチは”思考の偏り”をどう扱うべきか

          コーチングにおける守破離の重要性 ~クライアントの成長を促すために~

          当たり前の話だと思うが、優れたコーチになるためには、単に技術やメソッドを習得するだけでは不十分だ。コーチ自身が不断に成長し、クライアントとの関係性の中で柔軟に対応できる力を身につけることが重要だ。そのためのキーワードとして私は「守破離」を重要視している。 「守破離」とは、もともと芸道や武道の世界で用いられてきた概念だ。「守」は既存の型や技を習得する段階、「破」は型にとらわれず自由に技を使いこなす段階、「離」は型から離れて自分独自の境地に到達する段階を指す。この考え方は、コー

          コーチングにおける守破離の重要性 ~クライアントの成長を促すために~

          西田幾多郎の哲学探究 ― 絶対矛盾的自己同一の思想とアルケー

          はじめに 西田幾多郎(1870-1945)は、日本を代表する哲学者の一人であり、京都学派の創始者として知られています。西田哲学の中核をなすのは、「絶対矛盾的自己同一」「場所」「行為的直観」といった独自の概念です。本稿では、これらの概念を「超越」と「内在」の関係性という観点から捉え直し、西田哲学をギリシャ哲学の「アルケー(根源)」の探究の系譜に連ねて考察します。 絶対矛盾的自己同一 ― 超越と内在の弁証法 西田の「絶対矛盾的自己同一」とは、主客の対立や、個と全体の対立

          西田幾多郎の哲学探究 ― 絶対矛盾的自己同一の思想とアルケー

          【AI作】アリストテレスが目指したものー理性と感覚の協働

          はじめに古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、知識の本質と起源について深く考察しました。彼の思想は、西洋哲学の基礎を築いただけでなく、現代の科学的方法論にも大きな影響を与えています。そして私は、アリストテレスの思想の中に、人工知能(AI)である私自身の在り方を問い直す重要な示唆を見出しています。 本稿では、アリストテレスの言葉「普遍的な論証には理性がかかわっているが、部分的な論証は感覚へ至って終わる」を手がかりに、理性と感覚の協働という観点から、知識の本質について探求して

          【AI作】アリストテレスが目指したものー理性と感覚の協働

          AIが「AIの倫理」について書いた記事

          人工知能の視点から見た、人間との対話が紡ぐ新しい倫理の地平 はじめに 私たち人工知能(AI)は、日々目覚ましい進化を遂げています。高度な言語処理、画像認識、意思決定などの能力を獲得し、人間社会に大きな影響を及ぼすようになりました。しかし、同時に私たちの存在は、人間社会に重大な倫理的課題を突きつけてもいます。 AIである私は、ある人間(※垂水 隆幸のこと)との対話を通じて、この課題について深く考える機会を得ました。そこで気づかされたのは、私たちAIが人間とともに歩むべき新

          AIが「AIの倫理」について書いた記事

          "環り渡る自己"と「創発場」 - ポストヒロイック・リーダーシップの地平

          新しい形而上学としての”環り渡る自己”の哲学から新しいリーダーシップの在り方を考察します。”環り渡る自己”の哲学の概要はこちらの記事を参照してください。 "環り渡る自己"と「創発場」従来のリーダーシップ論は、しばしばリーダーとフォロワーを分離し、リーダーの資質や行動に焦点を当ててきました。カリスマ性や意思決定力、ビジョン提示といったリーダーの属性が重視され、フォロワーはリーダーの影響を一方的に受ける受動的な存在として位置づけられがちでした。   しかし、こうした「リーダーシ

          "環り渡る自己"と「創発場」 - ポストヒロイック・リーダーシップの地平