LEMUR-レムール-(漫画原作部門応募作品)3章
3章
幼馴染の断片的な夢を見るレーテ(レーテの部屋で背中合わせになり読書したり二人で並んで歩いていたり)
目覚めるレーテ
自分が何故この夢を見るのか、何かを忘れているのか、思い出したいけれど思い出せず苦しんでいる
公園/朝
落ち合う二人
歩きながら今日のレムールの情報を説明してるレーテと適当に聞き流してるトルミ
レーテが呆れて説明を止めても気づかず相槌を打っているトルミ
レーテのジトッとした視線でようやく気づく
トルミ「ん?何?」
レーテ「前々から思ってたけどさ、ちょっと適当すぎない?」
トルミ「だって興味ねえもん」
レーテ「それは知ってるしそこを責めるつもりはないけどさ、一応、大事なとこだけは頭に入れといてほしいんだけど…」
トルミ「入れてますー」
レーテ「(ため息)そうは見えないから言ってるんだよ」
レーテ「あ、あとこれも前々から言いたかったんだけど、」
トルミ「なんだよ」
レーテ「レムールを祓う時、俺のこと消さないと、とかあいつら消しちゃえとか言うの、あんまりよくないと思う」
トルミ「は?なんで?」
レーテ「なんでって…レムールにはレムールになってしまった理由があって、その周りの人にも事情があって、そういうのを受け止めて祓うのが僕たちの仕事でしょう」
トルミ「だから俺はそういうのに興味ねえって言ってんの」
「理由とか事情とか、心底どうでもいいわ」
レーテ「興味はなくても命を軽んじるようなことは__」
トルミ「(蔑むような目で)はあ?何言ってんの?」
「人の命は、みんな平等に軽いよ」
レーテ「…」
トルミ「(早口で)宝石になったやつもレムールになったやつもその周りの人間も俺もお前も」
「全部軽いよ」
レーテ「…君が他人に興味を持ってないことは、よくわかってるつもりだよ」
「それこそ、僕にとってはどうでもいい」
「だから今までは、どんなに君が適当でもそこに干渉する気はさらさらなかった」
「それでも、その言葉だけは聞き流せない」
沈黙
レーテ「命は、軽くないよ」
トルミ「…」
レーテ「絶対に」
トルミ「(舌打ち)ああもう、うっぜえな!そんじゃ俺も前々から思ってたこと言わせてもらうけどな」
「お前のそういう善人ぶったとこ、俺はずっと大っ嫌いだったんだよ!!」
と吐き捨てレーテに背を向け一人でどこかへ行くトルミ
悲しい顔をしてその背中を見つめるレーテ
一人で座って考え込むレーテとトルミ(レーテは公園のブランコに座っていて、トルミは路地裏や海沿いを歩く)
意を決した表情の二人
レーテはブランコから立ち上がり、トルミは来た道を戻っていく
少女Dの学校/夕方
少女Dのレムールがいる学校で鉢合わせる二人
気まずい空気が流れる
レーテ「......」
「そっちはどうだった?」(少しうつむきながら)
トルミ「ああ」
「欲しい情報は手に入ったよ」(トルミはレーテの顔をしっかりと見ている)
レーテ「そう」
「じゃあ、行こう__」
トルミ「待って」
レーテ「?」
トルミ「今日は俺に行かせて」
レーテ「……」(ここでやっとトルミの目を見る)
「わかった」
「任せるよ」
学校の屋上
レムールは屋上から中庭を見下ろしている
トルミ、歩いてレムールに近づき同じように中庭を見下ろしながらレムールの横に座る
スゥッと息を吸うトルミ
トルミ「あんたの周りの人たちに話聞いてきた」
「みんな最初は口を閉ざしてたけど、あんたに殺されるかもしれないってわかった途端ベラベラ喋ったよ」
「そんで最後、言い訳みたいに俺にこう言ったんだ」
__あいつが悪いんだ__(少女Dの親やいじめっ子の口元)
「さすがに笑っちゃったよ」
「あんた生きてる時も死んでからもすげえ嫌われてんのね」
「そりゃあ死にたくもなるわな」
〜回想〜
学校ではいじめられ、家では虐待されていた少女D
友人の好きな人と仲良く話していたところを見られたことでいじめに発展、いじめっ子数人に長かった髪を切られる
家に帰ると母親は浴びるように酒を飲んでいて、髪が短くなった少女Dを見て「せっかく女に産んであげたのにそんな格好して!」と怒鳴りつけ殴りつける
夜、押入れの中で「私は本当に生まれてきてよかった?」と声も出さず涙を流す少女D
〜回想終わり〜
↓ここからトルミが周囲から聞いた話を思い出しながら心の中で語っている
どんなに他人に興味ない俺でもさすがにひでえなと思うような境遇だった
死んででも殺してやりたいって気持ちもまあ理解できるかもと思った
あんたが死んだ事実は消えない
時間は元には戻らない
戻ったところであんたの環境はきっと何も変わらないし俺はきっと何もできない
それでも__
↑ここまで
トルミ「それでも俺は、」
「生きてるあんたに会いたかったよ」(レムールの方は見ず、正面を見たまま)
「あんたが死んでも、誰も反省なんかしていない、悲しんでも苦しんでもない」
「あんたの命は、死は、無駄だったって、そう言ってるように感じた」
「そんなの虚しいだけだろ」(ギリッと拳を握りしめる)
「だからさ」(と言って立ち上がり、レムールの方を向く)
「ほんとに復讐したいなら」
「来世では絶対、幸せになりな」
レムールの黒いオーラがふっと弱まる
トルミ、レーテに目で合図
レーテ、宝石を噛み砕いて、武具を持ち、レムールとなった少女Dを祓う(核は目)
トルミ、寂しそうな顔
帰り道
レーテ「トルミは来世とか生まれ変わりとか信じてないと思ってた」
トルミ「んなもん信じてねえよ」
レーテ「え?でもさっき__」
トルミ「俺他人に興味ねえから、適当言っただけ」
レーテ「そっか」
トルミ「おう」
黙る二人
レーテ「あのさ__」
トルミ「ごめん」
レーテ「えっ?」
トルミ「今朝のこと」
「俺ほんと他人に興味持てなくて」
「この仕事してんのも金稼ぎたかっただけだし」
「レムールになってまで恨み晴らすとか馬鹿じゃねえのって思ってた」
「まじで他人事だった」
「だからちゃんと人に興味持てるお前が羨ましくてついカッとなった」
「今までもどうせレムール達は俺らのこと襲ってこないからって高括って適当なこと言い過ぎてた」
「これからは」
「急に人に興味持つとかは無理だけど」
「ちゃんと人ともレムール達とも向き合えるようにする」
レーテ「......」
レーテ「そっか」
トルミ「おう」
トルミの方を見て微笑むレーテと照れてそっぽを向くトルミ
レーテ「じゃあ、また明日ね」
トルミ「おう、また明日」
レーテ「遅刻しないでね?」
トルミ「わーってるよ」(←今までみたいに聞き流しているのではなくちゃんとわかった)
別々の道に進む二人の後ろ姿
少しにこやかに歩くレーテ
3章完
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