私の昭和歌謡83 なみだ船 1963
ゴスペルもジャズシンガーも真似できぬ日本の民謡演歌のこぶし
「歌い出しの8小節で決まる」と作曲の船村徹は言った。
なるほど!
この歌は、こう始まる。
🎵なーーーーーみだぁのーーーおぉぉぉおーーーー
おわりの ひとしーずくーーーーーー🎵
これって、よっぽどの喉と音程の良さ、民謡の節回しができなければ歌えない。この冒頭を歌いこなせた歌手を、私は知らない。
のど自慢の人は、ぜひ真似して歌ってみるといい。
サブちゃんのように歌える歌手は誰一人いないだろう。
私はパバロッティが大好きだ。自分の歌唱力をよーくわかって歌い上げる自信たっぷりの姿が大好きだ。
世界的に有名なオペラ歌手とサブちゃんを比べるのは変かなぁ。
でも、喉を自由自在に使って、程よくひっぱる、伸ばす、切る、コブシをきかせる、この技を自信たっぷりに聞かせる演歌歌手は、それほどいない。
そして、その演歌歌手と同列に並ぶような歌唱力の持ち主は、もう今の日本にはいない。
でも、私はヒットした当時の「なみだ船」のファンだったわけではない。
サブちゃんは、ヒットしてからどんどん上手くなっていった。
演歌はサイクルが長い。ヒットして、聞かれて、歌手も自分の歌にしていく、久しぶりに聞いた歌がグンとレベルアップして驚く、また間があり、数年ぶりに聞くと胸に沁みる、というわけだ。
さて、この歌詞の中にヤン衆かもめというのがある。
🎵どうせ おいらは ヤン衆かもめ🎵という流れだから、あんまりいい意味じゃなさそうだ。
Wikiにはそれらしいことが書いてあるが、さてどうだか。
今のようにポパイかウポポイか忘れたが、アイヌの問題を政治に持ち込んでいる輩が出てきてからは、本物の言葉や歴史は、なかなか一般人には伝わらない。
こう書いてある。漁師たちが使っている言葉で、よそ者とかやんちゃな流れものだということは、この一語で、びーーんと伝わるから不思議だ。
星野哲郎といえば
「アンコ椿は恋の花」の“三日遅れの便り”
「三百六十五歩のマーチ」“幸せは歩いてこないだから歩いてゆくんだよ”
情景や物語をひとつの言葉でぴったりと表現してしまう魔法。
現代の奇異な唐突な言葉選びとは、全くかけ離れた神技があった時代。
私が昭和歌謡の歌詞に惹かれるのは、そこだ。噛めば噛むほどスルメの言葉。
おまけ。
女のヤン衆は、ウミガラスになぞらえてオロロンと呼ばれた。ただ、仕事に耐えられず売春へと走るものも出た。それを七連(ななつら)と呼んだらしい。一回買うのに、身欠きニシン(干しニシン)7連分(約140匹)だったことが由来という。
【参考資料】
【前回の記事】
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