さよならCOLOR
車のラジオから懐かしいイントロが流れてきた
「これは泣いたやつだ」
同時にセットで浮かんでくる情景がある。
20年ほどまえ、出向でスタバやホテルとオフィスが欲張りセットになったタワーの一角で、タコ部屋のように押し込められ働いていた時の記憶。
家に帰れるのは週一回、手が空きそうだからと終電で帰ろうものなら次の日、部長から「常識では考えられません」とポップアップ(メッセンジャー的なもの)が飛んでくる。
そんな考え方の会社だった。
信じられないかもしれないが、出向先でネット環境はなく、世界から閉ざされていた。情報はラジオのみ。
当時はそんなところも多かった。
調べ物や絵の資料は、下界にある紀伊國屋に降りていって図鑑なんかを買う。
明け方の4時にタイムカードを切って机の下に寝袋を敷いて眠り、朝の6時に掃除のおじさんがコロコロを床に転がしにやってくる。
アレルギーも止まらない。
机の上では寝不足でイラついた部長がリードプログラマを叱責する声がずっと聞こえていた。
そこまでよくエネルギーが続くわ。と思うがあれは快楽の一種なんだろう。
その時はまだリードプログラマが悪いと思っていた。
なにが正しくて、なにが正しくないのか。もう分からなくなっていた
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