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距離の壁を消してしまった

 最終体験者は茶太郎さん。最初の体験者、なおさんからのご紹介だった。実はこのテスト、3名で終了予定であった。ただ茶太郎さんのお話を聞いて、これは是非体験してもらわなければならないと思った。
 茶太郎さんは北海道にお住まい。病院に行くのも、車でかなりの距離を走らなければならない。介護保険も当時は打ち切られ、いわゆるリハビリ難民状態であった。自費リハも近所にはなく、冬場は降雪が厳しい地域。回復期病院卒業時に渡されたリハビリメニューを、今も真面目に行われていた。
 何ともまぁ不思議なご縁で、熊本県にある武蔵ヶ丘病院と北海道に住む茶太郎さんとの約2,500㎞を超えたリハビリテストがはじまった。

 私は日本の医療・介護保険制度は、世界の中でも素晴らしいと思っている。ただ地域差はかなりある。更にリハビリに関しては、地域差があまりに激しい。
 珍しく真面目な話をすると、2018年度の医療・介護保険リハビリ市場は約1.5兆円。2040年にはこれが約2.8兆円になると言われている。これ、税金で補填できます?補填するには税金上げるしかない。ただ払えます?私は今は払えない。起業したたばかりだし。でもね、これ何とかしないと、どんどんおかしくなっていくのですよ。地域差なんて今以上に広がる。これを解消する手段は、自助しかないと私は思っている。つまり自分で何とかするしかない。でも現実的に無理。ずっと高額な自費リハビリができるのは富豪。ずっと1人でリハビリできる人は鉄人。私は前から何度か話しているが、対面のリハビリは絶対必要だと思っている。ただ未来永劫高額な費用負担は厳しいと言っている。だからと言って、自分1人で行うのも何か違うと思う。試合がないのに毎日1,000本ノックうけているようなもの。

 茶太郎さんのご希望の中で、このようなものがあった。
「飲みに行ってもいつも椅子。掘りこたつに座って、寄りかかって飲みたい。」
これ、すごく大事なことだと思う。昨日読んだ記事で、こんなことが書かれていた。テクノロジーの発展には欲望は不可欠。リハビリも同じだと思う。私は「亡き愛犬コパンと歩きたい。」これが最初の欲望。
 私はリハビリで、全ての後遺症がなくなるとは言っていない。ただ本人がチャレンジすることは尊重されるべきだと思う。それは絶対に糧になるし、改善につながるのだと思う。だからこそ目標設定はとても重要。それは小さな、小さな欲望でよいのだと思う。決して誰かに決められたり与えられたりするものではなく、自分がもがき勝ち取るための目標。そのことに気づかせてくれた茶太郎さんには感謝しかない。

 茶太郎さんは、自主リハ動画3本からスタートした。今までの試験から導き出された数。正直少ないかと少し不安であった。ただ無理は禁物。茶太郎さんや今回テストを受けて頂いた皆さんは、発症直後の患者様ではない。短距離でなくマラソンを目指す時期に入っているのだ。私はこのマラソン、決して馬鹿にならないと思っている。なぜなら私自身がそうだったから。確かに発症直後は回復力も高く、集中的なリハビリが絶対必要だ。ただその先、ゆっくりじっくりおこなうことで改善することも、私自身はかなり経験した。

 茶太郎さんは黙々とリハビリをおこない、藤井先生とのチャットへいつも明るく報告をしてくれていた。茶太郎さんだけではなく、今回の試験を受けて頂いた方皆さんがとても前向きだった。サポートされている田中先生、藤井先生ももちろんすごいが、それに答える皆さんが何だかとてもカッコよく見えた。

 藤井先生がよく言っていたのが、「無駄に歩く。」歩くことはやはりとても重要。私もそうだが、意識しないと歩数が伸びない。少し遠回りして歩いてみたり、意識することが重要だそうだ。
茶太郎さんは朝早めに買い物に行くなど、積極的に歩数を伸ばしてくれていた。以前テストに参加してくれた方々も同じ。
 リハビリをして歩く。この日々の繰り返しはかなりつらい。そりゃそうです。ダイエットと一緒ですから。皆さんもすぐに結果が出るのならば、ダイエットを苦しいと思わないでしょう?それと一緒。
 ただ本人が気づいてないだけで、日々努力する人は少しずつだが前進するのだ。けれどね、これが本当につらい。そのつらさを藤井先生が、見事に和らげてくれている。そして茶太郎さんは、誠実に答えてくれてた。

 最近良く思うこと。なぜ自分は生き残ったのか。何をするべきなのか。ただ自分には何もできない。そのことがようやく分かってきた。何かを人にするなんておこがましい。
 私は今も戦い続ける人に、教えてもらうことばかり。だからこそ思う。自分なりの方法で、向き合うことから逃げることだけは辞めようと。
茶太郎さんの第1回目のWebリハ。ご本人は感じていない様だったが、2週間前とは明らかに動きが違っていた。もちろんこの短期間で、後遺症が改善したとは言わない。そんな魔法はどこにもないのだ。今まで使わなかった筋肉、組織が鍛えられたのだと思う。つまりご本人の頑張り。戦い続けたご本人の努力の結果。
 私達チームが出来ること。それはその努力の時間を見守り、最短距離にすることだけ。それ以上もそれ以下もない。

 そりゃ私も少なからず経済人。できないようで金計算ぐらいしているし、自分の売上がなければ会社は倒産、路頭に迷う。でもね、その前に脳卒中経験者。そこだけは忘れないようにしたい。もちろん、仕事として成り立たなければ意味がない。継続性のないサービスは利用者にとって、悪だと思う。でも寄り添わなければ意味がない。その狭間で生きられることが、私の強みであり強がりであり、ハッタリであり、生きる道なのだと思う。

 茶太郎さんの1ヵ月のテストが終わった。一番嬉しかった言葉。COPAINのサービスを受け、色々なことにチャレンジできるようになった。
 田中先生の親身な問診やアドバイスもそう。藤井先生のきめ細やかなフォローもアドバイスそう。その手助けをできるのは医療従事者。私には何もできないのだ。ただしその間を取り持つことは、私にしかできないのだと思う。ブローカーと言われることもある。ブローカーで結構、それで助かる人がいるのならば。だってそれが私が生き残った理由だから。
 何度も言うが、私はリハビリで全てがよくなるとは言っていない。結局は自分がどう踏み出すかだ。茶太郎さんもそう。今回テストにご参加いただいた、なおさん、内藤さん、須藤さんもそう。進むべき道は違っても、歯を食いしばり、前を向いている。皆さんとてもカッコイイ。そのフォローが出来ているのかは分からない。でも見守ることが、私は生き残った理由なのだと思う。

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