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現実

現実的だな、と自分のことを思う。

最初に気づいたのは、気づかされたのは、彼女とデートしているときだった。
輸入雑貨屋に入り、彼女はあれもいいこれもほしいと言っている横で、ぼくは機能的じゃない、のようなことを言った。
「あなたって夢がないのね」
奇妙な形をしたグラスや、模様が違うだけで同じ大きさの皿を否定することが、夢がないのか?と彼女の言葉をうまく呑みこめなかった。

彼女と別離し、かなりの時間が経ってから、ようやくわかった。
自分は現実的なのだ、と。
思えば、現実に追われて歳を重ねてきた。
誰も助けてはくれない、といえば、ひどく悲愴ではあるけれど、他人に頼らないで暮らしていくように習慣づいていると思う。
逆に、ぼくに夢がないとなじった彼女は、ぼくに頼る面があって、それが元で別れた。

ぼくは自分の足で立っているひとが好きだ、と当の本人に言ったこともあった。
年上のその彼女は、自分の食いぶちは自分で確保している、のような反論をしたが、ぼくは言葉を継がなかった。

自分くらい現実的に考えるひとを、きっとぼくは好きにならない、そうも思うからだ。

けれども、生きている以上は、オトナになったからにはと言うべきか、少なからず現実と戦いつづけるしかない。

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