「ライトノベルのブックガイド」のブックガイド

このあいだ行われた文学フリマ東京38やコミティアで頒布されたSFGという同人雑誌で「ライトノベル・クロニクル」というコーナーを担当させてもらいました。

そのときに役に立ってよく参照したもの、あるいは参照したかったな~とおもったものをまとめておきます(順番はてきとう)。

この手の、ジャンル小説をdigるみたいな話は、知識そのものの継承はもちろん大事なのですが、Googleで調べればパっと出てくるように知識が体系化されていない以上、どちらかといえば調べ方というか、どこを探せば目当ての情報が出てきやすいのか共有しておく方が重要におもえます。

そのへんも自分でトライ&エラーをくりかえして勉強すべきという考えも当然ありえます。が、私自身が自分より年齢と経験を重ねている方に知識の面でぜんぜん及ばない悩みは常に抱えていて、なんとか太刀打ちできるようになれないだろうか、みたいなことを考えています。これは永遠の課題でおそらく一生解決しないでしょう。とはいえ、です。

 昔から量を積み重ねている人たちに対して、途中から物量作戦で勝とうとしても無理です。ですが、量を積み重ねるなかで得られる判断力のポイントを学び、そこから再出発して、量を積み重ねていくことはできる。民主的な教育というのはそういうことではないでしょうか。

千葉雅也『センスの哲学』文藝春秋、2024

歌もダンスも未経験だった葛城リーリヤさんが、数多のライバルに追いつき追い越すためには、トップアイドルになるためには、本人の努力もさることながら、有能なプロデューサーによるプロデュースが必要不可欠でしたよね。そういうことです。


このライトノベルがすごい!

『このライトノベルがすごい!』は2005からずっと出ているので、それなりに役立ちます。シリーズ作の取り扱いとか、新作のカバー範囲が、とかいろいろ言いたいことはあるとはいえ、外せません。

基本的に年一の企画ですが、こういう特集号もあります。LOVE特集と銘打って作品紹介をしていておもしろいです。これ1回きりですが...…。


ライトノベル完全読本

このラノより広い年代でこのラノ的なことをやっています。年表が便利です。各出版社へのインタビューなどもおもしろい。vol.3は持ってません。ほしい。


ライトノベル・クロニクル

『若者の読書離れというウソ』の飯田一史の本です。1年ごとにその年を代表するライトノベルを取り上げていて、時代性も細かく拾い上げています。

こちらも読んでおくと通史的な理解が進むはずです。


ライトノベル☆めった斬り!

ひたすら書評が載っていて、読む本のあたりをつけるのに便利です。対談から当時のライトノベル観もうかがえます。

ブックガイドのパートでは、ライトノベルの代表作100タイトル(冊数にすると軽く1000冊を超える)をふたりで選び、大森と三村が分担して紹介した(内訳は、大森担当が43本、三村担当が57本)。
[…]
ガイドの内容も、この種の本にありがちなあたりさわりのない内容紹介は避け、なるべく主観的な判断を下すよう心がけたうえで、文章、キャラクター、世界観、オリジナリティー(作家性)、物語性の五つの尺度から5段階で評価した。ライトノベル度判定は、後掲の「ライトノベル度診断表」に基づいて採点したもの。

はじめに


ライトノベルの新潮流

これは、これからライトノベル史の話をするなら外せません。『めった斬り』が「主観的」であるとすれば、こちらはつとめて客観的にライトノベル史を描こうとしているように見受けられます。
(この記事で紹介している本の多くが『ライトノベルの新潮流』の参考文献にも載っています。そちらもぜひ確認してください)

同じく太田祥暉による、こういう同人誌もあります。現在は入手困難か...…?短評の視座が評者によって若干バラつく部分はあるものの、選定はバランス感覚がよいとおもいます。年代別、索引つきになっているのも便利です。

(追記:電子版が出たようです)

こちらもあわせて読みたい。


今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150!

若者向けブックガイドで、紹介されている本はライトノベルだけにかぎらないけれど、ライトノベルもいくつか紹介されています。どういう文脈に位置づけてライトノベルを語っていけるのか、という点で参考になります。ふだんづかいのブックガイドとしてもかなり有用。


電撃文庫総合目録

むかしの電撃文庫は紙で目録をつくっていました。そのうち、電子で手に入るものがこれです。いつからか、ぱったり出なくなりました。電撃文庫が網羅されていて、資料的価値はデカい気がします。なんで30周年で出してくれなかったんだ...…。
あと、「電撃文庫 目録」とかで検索して情報を拾おうとすると「禁書目録」とバッティングしてめちゃくちゃ検索しにくい。


SFが読みたい!&本格ミステリ・ベスト10

『SFが読みたい!』や『本格ミステリ・ベスト10』などには毎年ライトノベルのコーナーがあり、あるジャンルの視点から定点観測したライトノベルの情報が得られます。
SFマガジンの書評コーナーにもライトノベル新刊の枠があります。

ジャンルを定めたブックガイドのなかに結果的にライトノベルが組み込まれているような本もあります。


このライトノベルが奇書い!

ゲテモノ的なライトノベルがコンパクトにまとまっています。眺めてるだけでにこにこできる名著。


ライトノベル研究序説&ライトノベル・スタディーズ

ブックガイドというよりかは作品読解や市場研究などの本。とはいえ、〈男の娘〉からライトノベル史をとらえる論考なども載っていて、ライトノベルのひとくくりにはできない魅力が実感できます。


ブログ

ライトノベルの感想をたくさん上げてくれているブログも、それなりにあります。夏鎖(Twitter:@natusa_meu)さんのものが充実していて、有名なのではないでしょうか。
以下のサイトにほかのライトノベル感想ブログへのリンクがハブ的にまとまっているので、ほかのブログはそちらからチェックするとよいです。

(これとかも、けっこうおもしろいとおもう)


思い出せる範囲でざっと書き出しました。また思い出したら追記するつもりです。


最後に、SFGもぜひよろしくお願いします。


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