【稽古日誌】-ひきょう-#7

丁度1カ月の稽古を経て、『ひきょう』初日の幕が開こうとしています。
稽古中に最初から最後まで通して演じたのは、何と1回のみ。同じ場面を繰り返し繰り返し、何を稽古していたんだろうと振り返ると、人と人との関係性を作って行く稽古場だったと感じました。

「そこにいる人を、無理に物語の中の登場人物だと思わなくて良い。そこにいるのは実在の畑中研人で、松本優美だから」この言葉で芝居が劇的に変化しました。雰囲気が明るくなり、不自然なイントネーションが無くなって、逆に自然なニュアンスが聞こえてきたのです。
「実在の人で良い」というのは、一分演劇を崩壊させるような意味合いがあります。舞台で喋っているのは役ではなく本人。「今は登場人物の名前で呼んでるだけなんだよ」ともこさん。「新しい関係性を作る必要は無くて、いつもの自分と相手の関係性のまま喋ってごらん。」
そこには緊張もあるだろうし、思い出もあります。それが自然な関係性で、奥行きのある人間に見せるのだと思います。今まで前後のセリフへの接続のように聞こえていた
A ムクさんが、すごく優しくて……
B そうか。
というセリフが、「自分と相手との関係性で喋って」と言われたとたんに、AとBの間だけでなく、Aとムクが過ごしてきた時をものすごく感じるようになりました。
そんな瞬間がいくつもいくつも生まれて、私は今日の稽古を観ていて本当に心がじんわりとしました。

セリフが決まっている、舞台という非日常的な虚構空間。しかし、COoMOoNOの芝居作りは、虚構空間を成立させるための時間ではありませんでした。丁寧にセリフを掛け合い、雑団をしながら、現実的な関係性を作る時間だったと思います。

12月15日 関場理生

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