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ROTH BART BARON 「8」 / アルバムレビュー

新たな世界の扉を開く、最新にして最重要作品!
時代と対峙し、自分と対話し、感受性をどこまでも広げて世界へと解き放つロットの新境地!!



三船雅也

ROTH BART BARONロットバルトバロンとは

ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)は、シンガーソングライターの三船雅也みふねまさやを中心とする日本のインディーロックバンド。2023年よりクリエイティブの拠点をドイツ・ベルリンと日本・東京の2拠点として活動している。
 海外ではビッグマウンテン(タイ)、PLAYTIME FESTIVAL(モンゴル)などフェスにも出演、日本では多くの音楽フェスに出演、2023年には二度目となる FUJI ROCK FESTIVAL にも出演した。
 また近年はアルバムツアーに加え、年に1度、特別編成で演奏する単独イベント"BEAR NIGHT”を主催し、シリーズ第4弾は日比谷野外大音楽堂にて開催、後藤正文、佐々木亮介、Safeplane(タイ)も出演し大盛況のうちに幕を閉じた。
 2020年、5th AL『極彩色の祝祭』収録のリード曲「極彩|IGL(S)」はテレビ朝日系「関ジャム∞完全燃Show」番組内にて音楽プロデューサー・蔦谷好位置の年間1位に選出。2021年はポカリスエットCMがきっかけとなったアイナ・ジ・エンドとの2人組アーティストA_oによる「BLUE SOULS」が話題に。2022年は、ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞を受賞した映画「マイスモールランド」の劇伴音楽と主題歌を手掛けた。
 2023年は、最新作『HOWL』東京ツアーファイナル公演を昭和女子大学”人見記念講堂”にて演奏、弦楽カルテットを加えた11人フル編成での公演を成功させ、この秋には6年連続となる8枚目のオリジナルアルバム『8』を発表、北海道札幌モエレ沼公園”ガラスのピラミッド”を含む13公演、全国ツアーを開催する。

(BEAR BASE Inc.資料より)


「8」を聴いた / クールマイン的見聞録

新譜完成のしらせを受け、率直に驚いた。
音楽家の誰しもが行き詰まったコロナ禍において、ROTH BART BARON(以下:ロット)はアクティブに活動を続け、ライブやリリースを重ねていたのは周知の事実。リリースにおいては何と6年連続でアルバムを発表しており、近年では、”コロナ三部作”と言われる『極彩色の色彩(2020)』、『無限のHAKU(2021)』、『HOWL(2022)』という完成度の高いアルバムを立て続けに生み出し、ファンを喜ばせ、勇気を与え続けたのだ。内容はどれも高い完成度を誇り、果てしないクリエイティビティ、モチベーションの維持と並々ならぬ集中力の賜物たまものが、これまでのリリースペースと感じていた。

▼前作『HOWL』のnoteはコチラ

そして昨年末、三船さんが生活の拠点をドイツ・ベルリンに移した事もSNSで知っていた。当然大きく生活の環境も変わった事だろうと容易に想像がつく。
ゆえに!続けてこの短いスパンでフルアルバムをリリースするというニュースには心底驚愕きょうがくしたというわけである。(いや、ホント凄過ぎますって。。)
ロット通算”8”枚目のアルバム。期待に胸ふくらませながら、早速視聴させていただいた。


アルバムオープナーは『Kid and Lost』。三船さんが今作において一番やりたかったことは、世界との接続を再開した2023年に描かれる10編の「ジュブナイル物語」を描き出すことだったという。その意思がダイレクトに反映されたかのような幕開けだ。ファンファーレに背中を押され、ヒロイックな冒険の始まりを感じる。様々な国の音楽要素がミックスされ、寓話ぐうわの世界のようにアトモスフェリックな楽曲だと思った。ファンタジックな雰囲気もあいまって、未成年者のみならず不思議な勇気がいてくるに違いない。

いつも通りの 出鱈目な 世界を 動かしましょう
何度でも あたらしい 扉を 開けてみせましょう

Kid and Lost 歌詞より

続く『BLOW』は先行シングルとして9/22にリリースされ、同日MVも公開されている。この曲はタイのインディーシーンを代表するバンド、Safeplanetとのコラボとなっている。2019年のSafeplanet日本ツアーの際に出会い、以降交流を重ね、この曲をつむいだというストーリーがある。ちなみにこちらのMVはSafeplanetの拠点である、タイ・バンコクのスタジオで撮影されたそうで、監督は両バンドともつながりのある、日本で活躍する映像作家・写真家のdomu氏が担当し、Safeplanetの照明チームなどタイの映像クルーにより撮影されたそうだ。美しいファルセットが交差するこの曲の魅力を、こちらのMVで確認していただきたい。


3曲目『Boy』。イントロから即K.O。個人的に一二いちにあらそうくらい射抜いぬかれた曲。なぜだろう、どこか懐かしい感じもしてくる。この歌が流れている間、ここではないどこか遠い世界に想いをせる。とてつもなくセンチメンタルに、それでも優しくたくましく荒野の旅を続けるのだ。印象的なホーンの切ないメロディが容赦なく胸を締め付けてくる。いやはやロットの曲はどれも映像が浮かぶから凄いんだ。

4曲目は『千の春』。アナログな温かみや、フィールドレコーディングのように生活音的なものも混ざり合う、実験的な音の定位が素晴らしい。幼い頃に夢現ゆめうつつで聴こえてきたオルゴールのように繊細な遠鳴とおなりと、感傷的な歌詞のもろさやはかなさすら愛おしい音響。そう、こんなに悲しいのに不思議と悲観的ではないのだ。

続いて5曲目は『Exist Song』。少年のモラトリアムを表現しているかのような歌詞を緩急のある三船さんのデリケートの歌唱が粒立つぶだてている。成熟していない複雑な心象、悩みや葛藤も緻密に体現しているかのような演奏、耳に残るコーラスも秀逸だ。


アルバムの折り返し、6曲目の『Ring Light』は今作中一番ハッキリとビートの効いた曲。ちょっとブラックなノリのリズム隊と、切り込んで来るエレキギターがカッコイイ。歌詞に登場するリングライトの持ち主は、いつか・どこかで出会った清廉潔白せいれんけっぱくな存在なのか、はたまたピュアさを保った自分の心の一部なのか。”こんなところ早く 逃げ出してしまおう”の「こんなところ」とは?…色々と想像を膨らませている。

そしてアルバムリード曲となる『Closer』。夜のドライブにもピッタリな曲で、ムーディーなイントロは摩天楼まてんろうから見下ろす夜景を勝手にイメージしたりもした。近年リバイバルヒットし、世界的なブームともなった往年のシティポップの雰囲気も持ち合わせた非常にロマンチックな曲。
これからどんどん肌寒い季節になってくる。人恋しくなるシーズンのBGMとしてますます愛されそうだ。ライブ会場では手拍子で曲が彩られる様子を想像してしまう。(皆さんにもライブハウスで生演奏に合わせて手拍子をしていただきたいです!)

続く8曲目は『Krumme Lanke』。ベルリンの南西、グルーネヴァルトの森の端にある自然豊かな湖、”クルンメ・ランケ湖”のことで間違いないだろう。可愛らしい小鳥のさえずりや、穏やかな木々のざわめきを聴きながら森の中の道を歩くと、湖畔に辿り着くらしい。都心近くにありながら緑の木々に囲まれた深い自然を堪能たんのう出来る美しい湖のようで、ここでデジタルデトックスを楽しむ人も多いそうだ。夏は水辺でのピクニックや泳ぎに、冬は湖面が凍りスケートをする人もいるそうで、地元の人から愛される場所のようだ。シーズンを外せば静寂に包まれた幻想的な風景を堪能できるそうだが、ベルリン在住の三船さんも恐らく実際に訪れ、曲の着想を得たのだろう。ドリーミーなアンビエントフォークに包まれ、穏やかな時間が流れる。冒頭から薄く流れている喧騒けんそうは現地のものだろうか?そんな想像も楽しい。

9曲目の『MOON JUMPER』。重厚なシンセと、けたたましいパーカッションが印象的。異国情緒溢れるオープニングから始まり、

地面を 強く 蹴ったんだ
重力から 飛び出すため

MOON JUMPER 歌詞より

と繰り返される歌詞に呼応するように力強いビートでダンサブルに曲は進行していき、月明かりの下で行われた太古のレイヴのようにトランシーにループする。


そして本作のエピローグは『NIN / GEN』で静かに締めくくる。子供の声などのフィールド音やサウンドコラージュを効果的に取り入れつつ、優美ゆうびなピアノの音色を主体としたシネマティックなエンディングに感動を覚えた。アイロニーや憂鬱、不安や微かな希望を柔らかな布で包んだような音像は、静かに微睡まどろみと深い余韻を心に残す。


【8雑感】

時代と対峙し、自分と対話し、感受性をどこまでも広げて世界へと解き放つロットの新境地に触れ、も言われぬ陶酔とうすい感で満たされている。アルバム全体が落ち着いたトーンでかなでられ、過去の作品に比べ、えて余白を楽しむような楽器のアンサンブルも心地良い。新しい挑戦ではあるのだが、これまで積み上げてきたロットにしか出せない世界観も十分に健在である。歌う事でストーリーテリングを続けて来たこの会心の作を、国内のみならず世界中でシェアされていく事を切に願うのであった。


* * *


きたる2023年11月4日土曜日、ROTH BART BARONがバンド編成にてライブを行います。
仙台は全国ツアーの初日!!ロットにとって新しい旅の皮切りとなる仙台公演にぜひお立ち合いいただき、存分にお楽しみください!!!!!

◆詳細は下記【ライブ情報にて】


【作品情報】

アルバムジャケット

アーティスト: ROTH BART BARON

作品名:『 8 』 ACHT / EIGHT / 八

フォーマット:デジタルリリース
発売日:2023年10月18日(水)
▶︎デジタルリンク

フォーマット:ヴァイナル盤(12inch LP)
※DLコード付き 初回限定生産商品
発売日:2023年11月8日(水)
品番:PEJF-91049
販売:SPACE SHOWER MUSIC
価格:¥4,400(税込)

フォーマット:CD +フォトブック(B5変形サイズ・全96ページ)
※ハイレゾ音源DLコード付き
発売日:2023年11月8日(水)
価格:¥4,400(税込)

▼ご予約・ご購入はこちらから▼



【ライブ情報】

ROTH BART BARON TOUR 2023-2024『8』

2023年11月4日(土)
OPEN 17:30 / START 18:00
@仙台darwin
全自由 一般 ¥5,500(税込) / 学生 ¥3,300(税込)
※1ドリンク代別途必要
※大人1名様につき小学生以下1名様同行無料
※学生チケット:入場時に学生証をご提示ください

▼公演詳細



【アーティスト情報】



https://www.instagram.com/rothbartbaron/



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