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ROTH BART BARON 「HOWL」 / アルバムレビュー

歴史的名盤に触れる。
ROTH BART BARONの最高到達点と新機軸。


ROTH BART BARONロットバルトバロンとは

三船雅也

ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)は、シンガーソングライターの三船雅也を中心とした東京を拠点に活動する日本のインディーロックバンド。最新作は『HOWL』。これまでに4枚のEP、7枚のオリジナルアルバムを発表。1st AL『ロットバルトバロンの氷河期』は US・フィラデルフィアで、2nd AL『ATOM』はカナダ・モントリオールにて制作。ビッグマウンテン(タイ)、PLAYTIME FESTIVAL(モンゴル)など海外の大型フェスにも出演している。また、5th AL『極彩色の祝祭』収録のリード曲「極彩|IGL(S)」は、テレビ朝日系「関ジャム∞完全燃Show」番組内にて音楽プロデューサー・蔦谷好位置の年間1位に選出。2021年はポカリスエットCMがきっかけとなったアイナ・ジ・エンドとの2人組アーティストA_oによる「BLUE SOULS」が話題に。2022年は、現在公開中のベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞を受賞した映画「マイスモールランド」の劇伴音楽と主題歌を手掛けた。また8月7日には日比谷野音大音楽堂にて”夏の祭典”「BEAR NIGHT 3」を成功させ、この秋11月9日に最新作『HOWL』をリリース、10都市12公演全国ツアーを開催。そして3月10日にツアーファイナル公演を昭和女子大学”人見記念講堂”にてフル編成にて開催する。

(ROTH BART BARON 公式ウェブサイトより)


「HOWL」を聴いた/クールマイン的見聞録

結論から言って傑作である。
ひと昔のレビューなら”マストバイ”の文字が各所で踊ったであろう。
ROTH BART BARON(以下:ロット)の最高到達点をつたないながらも届けたい。

オープニングトラックは天才シンガーソングライターと名高い、中村佳穂さんを起用した『月に吠える』で静かな立ち上がりを見せる。
繊細だが芯のある2人の歌声がストリングスと柔和に絡み合い、寓話ぐうわのような世界観に一気に引き込まれる。

輪る廻る世界 振り落とされないように
遠吠えが聞こえたら それは始まりの合図

『月に吠える』歌詞より

三船さんが語るニューノーマルに疲弊した人たちへ送る、決起のうたが狼煙のろしを上げている。

バンド初となるアニメMVも最高なのでぜひご覧いただきたい。


続く『KAZE』はJR東日本のCMソング。アップビートで清涼感いっぱいな楽曲で、外へ飛び出し風の匂いを感じたくなる。爽やかかつとびきりエモーショナル。プレイボタンを押し、1曲目からこの曲の途中まで聴いた段階で、本作においてのロットの充実度の濃さ、完成度の高さを感じずにはいられなかった。激動の世の中、暗い世相を突き抜ける風を感じるひととき。

ディズニープラス「スター」オリジナルドラマシリーズ『すべて忘れてしまうから』のエンディング曲として書き下ろされた3曲目『糸の惑星』。
流れはまた打って変わってグッとテンポを落とし、ミニマルな表情で求心力を発揮している。あえて作られた”隙間”・”余白”に魅せられる個人的ベストトラック。鳴っている音全てが愛おしいぐらい感服してしまう。

4曲目『赤と青』。TBSドラマ『階段下のゴッホ』のエンディング曲として書き下ろされた楽曲。

赤と青 こころを 開いたなら
僕たちの ほんとうを 描き続けてよ

『赤と青』歌詞より

非常に印象的なサビが耳に残る。まるで三船さんとゴッホのクリエーターとしての魂が静かに共鳴しているかのよう。


ここまで来て、まだ作品の中盤に差し掛かったばかりというのだから圧巻の聴き応えである。5曲目はアルバムのタイトルにもなっている『HOWL』は新基軸。これもまた一段とスケールを感じる壮大な曲で、エレクトロとインディフォークが奇跡的な融合を遂げている。アルバムのオープニングを飾った『月に吠える』とのコンパニオンピースを感じざるを得ない世界観が孤高で美しい。

今夜 出かけよう 誰も僕らを知らない場所へ
世界が 美しく なくても かまわないでしょう
僕らが いるなら

『HOWL』歌詞より

折り返し6曲目『ONI』はエレキギターのリフと反復ビートが異彩を放っている。90年代のオルタナのフレーバーも汲み取れるロッキンでパンチのある楽曲だし、続く『Ghost Hunt』も更に複雑な変拍子ビートがビシバシと決まり、並走する印象的なバイオリン含め全体のグルーヴが素晴らしく、8 曲目の『場所たち』は没入感がエグいほど刺さりまくる。(歌詞、全文好きです!)つくづくロットの創り出すオリジナリティに溢れた楽曲たちは他に類を見ない、正にワンアンドオンリーな存在だと思うのであった。


流れは『陽炎』でまだまだ登頂を続けていく。これほど映像を想像させるバンドはいないのではないだろうか。静謐せいひつで優雅なストリングスと鍵盤、ドラムもちょっとトライバルビートのようで民族音楽のような神々しさもある。昂揚こうようしていく歌声は浸透率が高く、聴く人の深い部分へと染み込んでいく。

そしてアルバムも終盤、『MIRAI』も一際感動的な響きを持っていた。つくばみらい市のシティプロモーション曲であり、市民200人と8匹のコーラスを多重録音し、伊奈高校吹奏楽部と共に演奏したらしい。突如飛び込んでくるギターのフレーズも秀逸。正にまばゆい未来へと大団円だいだんえんを迎える開放感なのだが、作品の締めくくりは『髑髏と花(дети)』で筆を置くのだった。この意外性、”してやられた感”に思わず息を呑んだ。静かに幕を閉じていくこの曲が、さながらとても良い映画を観た後のエンドロールのように効いていて、茫然ぼうぜんと曲を見送った。死を耽美たんび的に連想させる歌詞。детиはロシア語で子供だ。直接的な表現を避けているのにも関わらず、途方もなく戦争の悲しさを綴っていた。

たまたま見上げた月が綺麗だった。
残響で狼たちの祝祭が遠くで聴こえてくるようだった。


【HOWL雑感】

端的に言って超大作だった。ロットが織り成す新基軸と、シアトリカルな表現の深さは筆舌ひつぜつに尽くしがたい。つらつらと駄文を連ねて来たが、この音像を前に言語化すること自体に無理があるし、その行為は無意味に近い気さえしてくる。
一刻も早く音に触れ、耳を傾けることを推奨いたします。
そしてこのアルバムリリースを記念したツアーで、2023年2月23日(木・祝)に我が町仙台にもROTH BART BARONがやって来ます!
バンド編成でのHOWLの世界・ロットの現在進行形を体感することも併せて推奨したいのです。



【作品情報】

HOWLジャケット


アーティスト:ROTH BART BARON

作品名:HOWL

リリース:2022年11月9日

販売元:SPACE SHOWER MUSIC

規格品番:PECF-1194

フォーマット:通常盤CD ¥3,300(税込 ) 


【ライブ情報】

ROTH BART BARON『HOWL』Tour 2022-2023
〜バンド編成・仙台公演〜

2023年2月23日(木・祝)
OPEN 17:15 / START 18:00
@仙台darwin

◆TOTAL INFORMATION



【アーティスト情報】

ROTH BART BARON公式ウェブサイト

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ROTH BART BARON Twitter

三船雅也Twitter


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