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【コラム】敢えて言えば名脇役?ブローチの魅力

数年前のことだ。私は地下鉄の中で、ヒジャブを付けたマレー系の女性をずっと見つめていた。

私の住んでいる国ならば、ごく当たり前の光景であり、マレー系の女性を形容する際にとりたてて「ヒジャブを付けた」と表現する必要はないのだが(ほとんどのマレー系女性はヒジャブを付けているので)、ここで敢えて使ったのは、彼女がヒジャブを留めるのに使っているブローチに魅了されたからだった。

彼女は無地で薄いパープルの(ライラック色というべき?)ヒジャブを付けていた。イエローのクリスタルが小さな透明なクリスタルで縁取られているブローチを耳元で留めていて、ヒジャブのパープルが、ブローチの色味によりソフトな色合いに見えた。

ブローチによって、シンプルな色のヒジャブが、全然違うイメージになる。それからというものの、様々なマレー系女性を電車の中で見るのが私の習慣に。そこからブローチに対してものすごく関心が高まったのだ。

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そんな背景で、ブローチに対し巡らせた思いを描いたのが、私が連載をさせていただいているStyleHausさんでの記事「普段の服が一気にスタイリッシュに! オシャレ上級者は【ブローチ】を使ったファッションが得意」である。

私はその中でも、とりわけ60年代~70年代のヴィンテージのブローチに興味を持った。それはたまたま家のそばで行われていた蚤の市で、ヴィンテージのブローチを見つけたことから始まった。なんて素敵なんだろう!その年代のブローチは今にない発想のデザイン。そして使っている素材も今じゃ手に入りにくいシードパールだったり、セルロイドものだったりする。クリスタルも勿論あるけれど、輝きがどこか懐かしい感じがし、それもイイ感じである。

そんなブローチを何でもないセーターに1つつけてみたところ、セーターが、瞬く間に洗練されて見えるから不思議。この間はユニクロで買った、黒のリネンコットンのシャツにシードパールのブローチを付けて会社に行ったら、「そのシャツ、どこで買ったの?」と聞かれ、ブローチの本領発揮といったところか、そのすごさを感じた。

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そんな話を、久しぶりに電話をした母にすると、「そういえばブローチは、洋服を更に美しく見せる、洋服のアクセサリーっていうわね。」と母は話す。洋服のアクセサリー。そう思うとブローチってちょっと「粋な」アクセサリーではないだろうか。

それにしても、ブローチが手持ちの服をどのようにきれいに見せてくれるかを計算して選ぶのはとても難しい。

そこで素人の私が考えたのは、1枚の服を「違うイメージ」で着分けることができるようにすることである。(そうすれば、別の洋服を買う買い物を減らすことができる、という安直な発想。)

1枚の黒いセーターがある。ちょっぴりセクシーさを出す時には、下にシャツを着ないで、セーターをそのまま着る。でもある日は、セーターに白いシャツを合わせ、ブローチはパールの入ったものをつけてみる。ちょっと正統派の着こなし。パールの白は、シャツの白と一緒になることで、黒いセーターの素材を強調し、セーターの良さを生かす形になる。

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色々考えを進めていくと、なんだかブローチって、まるで名脇役の俳優みたいだと思う。

ブローチ自体も魅力的なデザインでなければいけない、でも自分だけが目立ちすぎるのではなく、主体の洋服をきれいにだったり、あるイメージに見せなくてはいけない。でもブローチがなければ、その服のイメージは全然違ったものになる。

そんなアクセサリーであるブローチ、なんだかとっても魅力的なアイテムではないだろうか。だからこそおしゃれのチャレンジし甲斐があるアイテムなのだと思う。










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